【解説】世界で猛威を振るう「麻疹」の脅威、日本への波及に警戒を ワクチン接種率低下が招く「沈黙の爆発」
ニュース要約: 2026年、世界各地で麻疹(はしか)が再流行し、欧米諸国が「排除国」の認定を失う異常事態となっています。インフルエンザの10倍以上の感染力を持つ麻疹は、ワクチン接種率の低下により「沈黙の爆発」を引き起こしています。日本でも輸入症例のリスクが高まっており、専門家は自身の接種歴の確認と、唯一の防御策である2回のワクチン接種の重要性を強く訴えています。
【解説】世界で猛威を振るう「麻疹」の脅威、日本への波及に警戒を ワクチン接種率低下が招く「沈黙の爆発」
【2026年2月19日 共同・東京】 かつて「絶滅」を目指した感染症が今、再び世界を震撼させている。極めて強い感染力を持つ「麻疹(はしか)」が2025年から2026年にかけて世界各地で猛威を振るい、これまで「排除状態」と認定されていた先進国が相次いでその資格を失うという異常事態に陥っている。
■世界各地で「無麻疹」認証が失われる異常事態
2026年に入り、世界の感染症対策は大きな転換点を迎えている。1月の時点で、イギリス、スペイン、オーストリアなど欧州6カ国が、世界保健機関(WHO)による「麻疹排除国」としての公式認定を失った。さらに、昨年11月にはカナダが、そして今年4月には米国も同様に排除国の地位を失う見通しだ。
米国の状況は深刻である。2025年の年間症例数は2000例を超え、過去30年間で最悪の記録を更新した。2026年もその勢いは衰えず、2月中旬までにすでに700例以上の確診が報告されている。これは例年の平均的な年間症例数の約4倍に相当するスピードだ。
特にメキシコを含む中南米での被害は甚大で、メキシコ国内ではすでに6400例以上の症例と28人の死者が確認された。死亡者の約95%がワクチン未接種であり、北部のチワワ州では12歳から49歳の幅広い年齢層で犠牲者が出ている。
■日本への流入リスクとアジアの現状
日本国内においても、決して対岸の火事ではない。シンガポールでは2月初旬までに13例の感染が報告されており、その中にはワクチン未接種で海外渡航歴のある1歳未満の乳児も含まれている。また、台湾でもベトナムからの輸入症例が確認されるなど、国境を越えた人の移動に伴うウイルス流入のリスクが急増している。
中国でも、大型交通拠点や国境検問所でのスクリーニングを強化する「重点伝染病モニタリング」を開始しており、アジア全体での警戒レベルが引き上げられている。
■「最強の感染力」とワクチンを巡る誤解
麻疹ウイルスの最大の特徴は、その圧倒的な感染力にある。一人の患者から何人に感染させるかを示す「基本再生産数」は12〜18とされ、インフルエンザの約10倍以上に達する。免疫がない人が感染者と同じ空間にいた場合、90%の確率で発症すると言われる。
麻疹は単なる「子供の病気」ではない。高熱や発疹だけでなく、肺炎や脳炎といった重い合併症を引き起こし、最悪の場合は死に至る。さらに近年の研究では、麻疹ウイルスが免疫システムの「記憶」を数ヶ月から数年にわたって消去してしまい、他の病気にかかりやすくさせる性質があることも分かっている。
現在、世界的な流行の背景にあるのが「ワクチン接種率の低下」だ。集団免疫を維持するためには、人口の95%以上が2回のワクチン(MMRワクチンなど)を接種している必要がある。しかし、SNSを通じた誤情報の拡散や副作用への過度な懸念、いわゆる「ワクチン躊躇(ちゅうちょ)」が広がり、多くの国で95%の壁を割り込んでいる。
■「風邪」と見分けがつかない初期症状
専門家は、麻疹の初期症状が風邪やインフルエンザと酷似している点に警鐘を鳴らす。
- 前駆期(1〜4日目): 発熱、咳、鼻水、結膜炎(充血・目やに)が現れる。
- コプリック斑: 発熱から2〜3日後、口内の粘膜に周囲が赤い「白い斑点」が現れる。これが麻疹特有の診断の決め手となる。
- 発疹期: 4日目以降、耳の後ろから顔、全身へと赤い発疹が広がり、体温は40度を超えることもある。
「単なる風邪だと思い込み、公共交通機関を利用して受診することで、さらなる二次感染を引き起こす例が後を絶たない」と医療関係者は指摘する。
■自身の「免疫」を確認し、事前の備えを
1966年以降に生まれた成人は、過去の定期接種の回数が不十分であったり、時間の経過とともに抗体価が低下している可能性がある。特に1981年以降生まれの世代については、流行地域への渡航前に自費での追加接種が推奨されている。
麻疹に特効薬は存在しない。ワクチン接種のみが唯一かつ最大の防衛手段である。2回の接種で約97%の保護効果が得られ、その効果は生涯続くとされている。
世界的なパンデミックの教訓を経てなお、私たちは再び麻疹という「予測可能な危機」に直面している。自身の接種歴を確認し、必要であれば追加接種を行うことが、自分自身だけでなく社会全体の命を守ることに繋がる。
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