【深層分析】マンU、ウェストハム戦ドローで露呈した決定力不足と構造的課題
ニュース要約: プレミアリーグ第14節、マンチェスター・ユナイテッドはウェストハムと1-1で引き分けた。高いボール支配率を誇りながらも、ダロトの先制点後に追加点を奪えず、終盤に追いつかれる痛恨のドロー。ヌーノ監督体制は、深刻な決定力不足と、支配率を勝利に結びつけられない構造的課題を改めて露呈した。
【プレミアリーグ深層分析】「勝ち切れない」マンチェスター・ユナイテッド、ウェストハム戦1-1ドローで露呈した決定力不足と構造的課題
オールド・トラフォードの重苦しい空気、勝ち点3を逃した名門の現在地
2025年12月4日、イングランド・プレミアリーグ第14節、フットボールの聖地オールド・トラフォードで行われたマンチェスターユナイテッド(マンU)対ウェストハム・ユナイテッドの一戦は、ホームのマンUが先制しながらも追いつかれ、1-1の引き分けという結果に終わった。勝ち点3が至上命題であった名門クラブは、優位なボール支配率を誇りながらもフィニッシュの精度に欠き、終盤の失点により痛恨のドローを喫した。この結果は、ヌーノ・エスピーリト・サント監督体制が抱える根深い課題を改めて浮き彫りにしたと言える。
試合経過:ダロトの先制も、わずかな隙を突かれる
試合は前半、両チームともに慎重な立ち上がりを見せ、決定機は散発的でスコアレスで折り返した。しかし、後半に入るとマンチェスターユナイテッドがギアを上げ、58分に試合が動く。DFディオゴ・ダロトが攻撃参加からゴールを決め、ホームチームが待望の先制点を奪った。
この先制で試合の主導権を握ったかに見えたマンUだったが、その後が続かない。ボール支配率は65%を記録し、シュート数も9本(枠内2本)とウェストハムを圧倒しながらも、追加点を奪うことができない。そして、この決定力不足が終盤に響く。
試合終了間際の83分、ウェストハムは右コーナーキックからチャンスを作り、スングトゥ・マガサに同点ゴールを許してしまう。守備を固めてカウンターを狙うアウェイチームの粘り強い戦術の前に、マンUは勝ち越し点を奪うことができず、そのまま1-1のドローでタイムアップを迎えた。
ヌーノ体制のジレンマ:支配率と決定力不足の乖離
この試合結果は、ヌーノ監督の戦術采配と、チームの決定力不足という二つの側面から分析されるべきだろう。
監督は、ルーク・ショー、ヌセア・マズラウィらを先発させ、ルーク・ショーに代えてリサンドロ・マルティネスを投入する程度の微調整にとどまり、大きなフォーメーション変更は行わなかった。攻撃的なボール支配を徹底する方針は明確だったが、シュート数が9本という数字は、ボール支配率の高さに見合っているとは言い難い。
特に、攻撃陣の連動性とフィニッシュの精度が低調であった点が指摘される。ブルーノ・フェルナンデスからの創造的なパスはあったものの、ラスムス・ホイルンドをはじめとする前線が決定的なチャンスをものにできず、枠内シュートがわずか2本に留まった事実は深刻だ。
また、プレシーズンで期待されたプレス戦術の連動性も、本試合では十分に機能せず、ウェストハムの素早いカウンターや、トマーシュ・ソウチェク、ジャロッド・ボーウェンといったスター選手を中心とした攻撃的なプレーに脅威を感じ続けた。特に、ソウチェクの空中戦の強さやボーウェンの決定力は、マンU守備陣にとって常に重圧となった。
ウェストハムの戦術的勝利とファンからの厳しい評価
一方のウェストハムは、守備を固めつつカウンターを徹底するという現実的な戦術が功を奏した。彼らはモハメド・クドゥスのドリブルや、左サイドからの速いグラウンダーのクロスを効果的に使い、少ないチャンスを確実に得点に結びつける集中力を見せつけた。
マンU 対 ウェストハムという伝統的に競り合う試合が多いカードにおいて、今回もウェストハムは戦術的な規律を守り、勝ち点1を獲得した。これは彼らにとって大きな成果と言える。
マンチェスターユナイテッドのファンからは、この「勝ち切れない」試合展開に対して厳しい声が上がっている。直近の対戦成績ではマンUが優位に立っているとはいえ、プレミアリーグのトップ争いに加わるためには、こうした接戦を確実にモノにする決定力と、試合終盤まで集中力を維持する守備の安定性が不可欠である。
ヌーノ監督は、いかにしてこの決定力不足を解消し、ボール支配を真の勝利に結びつけることができるのか。名門復活への道のりは険しく、今後のリーグ戦で試されることになるだろう。クラブの威信回復に向け、次節以降のパフォーマンスが注目される。