くふうカンパニー、AI戦略「AX」で生活領域DXを加速 26年9月期 V字回復へ
ニュース要約: くふうカンパニーは2025年9月期にのれん減損などで大幅な純損失を計上したが、構造改革に手応えを得ており、2026年9月期には増収増益のV字回復を目指す。成長の核は、AIを基軸とした「AX戦略」による生活領域DXの加速だ。同社は「Shufoo!」「トクバイ」などでAIを活用し、リテールメディア市場における独自の顧客接点構築を推進する。
くふうカンパニー、次期V字回復へ AI戦略「AX」で生活領域DXを加速
2025年9月期は大幅赤字も構造改革に手応え、リテールメディア市場で独自の顧客接点を構築
デジタルチラシサービス「Shufoo!」などを展開するくふうカンパニーホールディングス(以下、くふうカンパニー)が2025年9月期決算で大幅な純損失を計上した。売上高は141.1億円(前年比9.2%減)、営業利益は5.22億円(同17.3%減)と減収減益に沈んだものの、親会社株主に帰属する当期純損失は23.47億円の大幅赤字に転落した。のれんの減損処理などが響いた形だが、同社は次期2026年9月期に向けて売上高170億円(同20.5%増)、営業利益10億円(同91.3%増)とV字回復を見込んでおり、デジタル領域における生活領域DX推進の加速に強い意欲を示している。
減収減益の裏側で進む収益構造の改革
2025年9月期の業績は一見厳しい数字が並ぶ。特に最終損益が大幅赤字となった点は、投資家にとって懸念材料となり得る。しかし、同社は次期に向けて積極的な増収増益計画を打ち出しており、これは主要事業の収益性改善と、新たな成長エンジンへの投資が結実し始めていることの裏返しと評価できる。
財務面では、のれんの減少に伴い総資産が縮小し、自己資本比率も56.8%から48.5%へ低下した。流動性は確保されているものの、持続的成長のためには、次期計画通りの収益回復と財務基盤の強化が急務となる。
くふうカンパニーの成長戦略の核を担うのは、AIを基軸とした独自の取り組み、通称「AX戦略」だ。同社はこれを単なる業務効率化(AI Transformation)に留めず、ユーザー体験の向上(AI eXperience)と両輪で推進している。
独自AI戦略「AX」が牽引する顧客体験の進化
くふうカンパニーは、グループサービス全体でAIの組み込みを加速させており、その成果は既に市場に投入されている。
例えば、買い物支援サービス「トクバイ」では、AIによる高度な画像解析を活用した「AI チラシ比較リスト」を提供。過去のチラシ掲載価格を瞬時に比較可能にし、ユーザーの「かしこい買い物」をサポートする。さらに、OpenAIのAPIを利用した「トクバイ AI プランナー」や、家計簿サービス「Zaim」の「買いものレシピ AI」は、購買履歴に基づいたレシピ提案を行うことで、ユーザーの購買行動に深く入り込んでいる。
また、小売店舗向けの商圏分析ツール「くふうマーケットリサーチ」では、AI画像解析により競合店舗の価格設定タイミングを分析可能にし、データに基づいた販促戦略を支援。これは激化するリテールメディア市場において、小売事業者のDX推進を後押しする強力なツールとなっている。
グループシナジーと多様な顧客接点戦略
くふうカンパニーが、競合他社との差別化を図る上で重視しているのが、複数のメディア・サービスを統合することによるグループシナジーの最大化だ。「Shufoo!」「トクバイ」「ヨムーノ」などが単独で存在するのではなく、データ連携や相互送客により、ユーザーのライフスタイル全体をシームレスにサポートする環境を整備している。
特に注目すべきは、徹底した**ユーザー体験(UX)**へのこだわりと、顧客接点の多様化である。デジタルチラシだけでなく、旧くらしにくふう社との統合で強化された動画制作能力を活用したマーケティング、さらには非対面・非接触に対応したサービス設計により、コロナ禍以降の生活者の行動変容に柔軟に対応してきた。
また、大手企業だけでなく、小規模事業者向けのリモート営業体制を強化することで、広範囲な顧客層の開拓を目指しており、これが次期の高成長を支える柱の一つになると見られる。データに基づいた販促戦略の実現は、広告主である小売企業に対しても、感覚ではなく効果的な施策展開を可能にし、くふうカンパニーのプラットフォーム価値を高めている。
展望:成長への確信と課題
2026年9月期に向けた大幅な目標設定は、くふうカンパニーがAX戦略と構造改革の成果に強い確信を持っていることの表れだ。AIを活用したサービス深化と、複数のサービス連携によるグループシナジーが市場に浸透すれば、計画通りの増収増益達成は視野に入る。
しかし、足元の自己資本比率の低下や、競争の激しいデジタルマーケティング市場における持続的な優位性の確保は引き続き重要な課題である。くふうカンパニーは、生活者と小売事業者の双方にとって不可欠なインフラとなるべく、AIを駆使した生活領域DXの旗手として、その真価が問われるステージに立っている。
(2025年11月30日 日本経済新聞 経済部)