【国宝】興収173億円超えで邦画実写歴代1位!吉沢亮と李相日監督の「総合芸術」勝利
ニュース要約: 映画『国宝』が興行収入173億円を突破し、邦画実写歴代1位の記録を樹立した。主演の吉沢亮が吹き替えなしで歌舞伎の道を体現し、李相日監督のリアリズムと構想が結実。伝統芸能を題材としながら、若年層を含む幅広い観客の心を捉えた「総合芸術」の勝利として、日本映画史に新たな金字塔を打ち立てた。
【深層分析】「国宝」が邦画実写の金字塔を塗り替えた日:吉沢亮と李相日監督が灯した伝統芸能の炎
2025年11月25日(月) 文化部:田中 悠
映画『国宝』が、日本映画史に新たな金字塔を打ち立てた。2025年6月6日の公開以来、驚異的なペースで観客動員を続け、11月24日までの公開172日間で興行収入173億7739万4500円を突破。22年間にわたり破られることのなかった2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(173億5000万円)の記録を抜き去り、邦画実写歴代1位の座に躍り出た。観客動員数も1231万人を超え、国宝 興行収入の歴史的快挙は、単なるヒット作の誕生ではなく、日本の伝統芸能である歌舞伎を主題としながら、現代の観客、特に若年層の心を深く捉えた「総合芸術」としての勝利を意味する。
吉沢亮が全身で体現した「芸の道」への覚悟
今回の映画 国宝の成功を語る上で、主演を務めた吉沢亮氏の存在は欠かせない。彼が演じたのは、仁俠の家に生まれながら歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に半生を捧げる主人公・喜久雄の50年にわたる一代記である。
特筆すべきは、吉沢氏をはじめ、横浜流星氏ら主要キャストが吹き替えなしで本格的な歌舞伎シーンに挑んだ点だ。吉沢氏は役作りのため、1年以上にわたり踊りの稽古を重ね、撮影クランクイン後もその身体性を維持し続けたという。「やるしかないという覚悟と意地で挑んだ」と語る彼の言葉通り、スクリーンに映し出される喜久雄の姿は、単なる演技の域を超え、役者自身の魂が歌舞伎の身体性と一体化したかのようなリアリティを持つ。
この圧倒的な熱量が、観客に深い感動と共感を呼び起こし、公開から約6ヶ月が経過してもなお国宝 興行収入を伸ばし続けるロングランヒットの最大の要因となった。吉沢亮氏が体現した歌舞伎役者としての献身的な姿勢は、観客に「芸術に人生を賭ける」という普遍的なテーマを強烈に訴えかけた。
李相日監督の徹底したリアリズムと構想
この壮大な物語を牽引したのは、名匠・李相日監督だ。監督は『悪人』(2010年)の制作後から歌舞伎を題材とした映画化を構想しており、今回の国宝 監督作品は長年の想いが結実した形となった。
李監督は、吉田修一氏の原作小説の膨大な情報量を、最大3時間という上映時間の制約の中で「ダイジェストになることを避ける」ことに腐心したという。脚本作りには数年を費やし、歌舞伎役者の「生と死」がビジュアルの中でどう共存できるかという本質的なテーマを追求した。その結果、歌舞伎初心者でもその「華」と物語の普遍性を存分に味わえる作品設計が実現した。
李監督のフィルモグラフィーにおいても、本作は過去のヒット作『悪人』の4倍近い興収を記録しており、その手腕が改めて高く評価されている。監督は、喜久雄役に吉沢亮氏の存在が「絶対だった」と語るように、キャスティングの段階から俳優の持つポテンシャルを最大限に引き出すことを念頭に置いていた。徹底した準備期間と、撮影中も稽古を継続させるリアリズムの追求が、作品の揺るぎないクオリティを保証した。
伝統芸能への関心と若年層への浸透
国宝 映画の特筆すべき点は、その客層の広がりにある。公開当初はシニア層が中心だったが、口コミが広がるにつれて、歌舞伎に馴染みのなかった10代、20代の若年層(Z世代)が映画館に足を運ぶ現象が顕著となった。
これは、単なる主演俳優の人気だけでは説明できない。スマートフォンでの動画視聴が主流の時代において、3時間という長尺の作品が、世代を超えて支持された背景には、吉沢亮氏と横浜流星氏が「生々しいまでの熱量で歌舞伎役者の半生を演じる姿」が、現代を生きる人々の自己実現や人生への献身といった普遍的なテーマと深く共鳴したからに他ならない。本作は、伝統芸能の紹介に留まらず、人生をかけた芸術の持つ力、そして日本の伝統文化の奥深さを再認識させる社会的な役割を果たしている。
また、本作は第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にも選出され、2026年には北米公開も決定している。李相日監督と吉沢亮氏が作り上げた映画 国宝が、今後国際的な舞台でどのような評価を得るのか、日本映画界の新たな可能性として大きな期待が寄せられている。(了)