【バスケ日本代表】富永啓生の進化が鍵：ホーバス戦術を支える世界標準の3P

日本バスケの未来を担う「火付け役」：富永啓生の現在地と代表戦術への影響

【東京 2025年11月27日 共同通信】

日本のバスケットボール界において、今最も注目を集める選手の一人、富永啓生（24＝レバンガ北海道）が、そのキャリアの新たな局面を迎えている。2025-26シーズン、Bリーグのトップスコアラー級の活躍を見せる富永は、バスケ 日本代表にとっても、トム・ホーバスHCが掲げる「アグレッシブなオフェンス」の生命線だ。NBA Gリーグでの挑戦を経て日本へ戻り、さらに磨きをかけた世界標準の3ポイントシュートは、次期国際予選に向けた日本代表の最大の武器として期待されている。

Gリーグ経験が導いたBリーグでの進化

富永のキャリアパスは、長らく日本のトップリーグを経由しなかった点で異色だ。アメリカのNCAAディビジョン1で活躍した後、2024年にはNBAへの扉を叩き、Gリーグ（インディアナ・マッドアンツなど）で実戦経験を積んだ。このタフな環境での経験が、帰国後の富永を大きく成長させた。

現在所属するレバンガ北海道では、単なるシューターの枠を超えた存在感を発揮している。島根戦で見せたキャリアハイの30得点（7本の3P成功を含む）は、彼の進化の象徴だ。富永自身も「ドライブの面やプレーメイキングの面は去年から成長できた部分」と語る通り、Gリーグで培ったアグレッシブさが、Bリーグの舞台で結実している。

このBリーグでの確かな成長こそが、富永啓生を再び国際舞台の中心へと押し上げている原動力となっている。

代表戦術の要：和製カリーの脅威

富永がバスケ 日本代表の中で果たす役割は極めて明確であり、かつ重要だ。それは「世界に誇る日本最強の3Pシューター」として、アウトサイドから高確率で得点を奪い、相手ディフェンスを広げることである。

FIBAアジアカップ2025では、富永は平均20得点というエース級の成績を残し、特に3ポイントシュート成功率で47.8%という驚異的な数字を叩き出した。この成功率は、国際大会において相手チームが最も警戒すべきデータの一つである。

トム・ホーバスHCは富永に対し、「空いていれば打て」という明確な指示を与えている。これは、富永の射程距離がディープスリー（3Pラインよりさらに遠方）にまで及ぶため、相手ディフェンダーが通常の3Pラインよりも遥かに外側でマークせざるを得なくなるからだ。

富永のシュートが好調であれば、相手のマークが外に集中し、インサイドの渡邊雄太や河村勇輝らのドライブのスペースが劇的に拡大する。富永自身が「2～3人を引きつける力がある」と認識している通り、彼の存在は単なる得点源ではなく、チーム全体の攻撃展開を活性化させる戦術的な起爆剤となっている。2023年W杯のカーボベルデ戦で3P成功率75%を記録し、勝利に貢献した実績は、この戦術的影響力の高さを如実に物語っている。

パリ五輪の教訓と次なる挑戦

しかし、富永の代表キャリアには、課題も残されている。パリ五輪では、NBAプレーヤーの八村塁が加わった戦術変更の影響もあり、富永の平均出場時間はわずか2分38秒と、登録メンバー中最短に留まった。これは、富永が国際レベルの激しいディフェンスの中で、ボールを持たない状態から効率的にフリーになるための「チームの動き」や、「1対1でディフェンスを剥がす力」が、さらに求められていることを示唆している。

現在、Bリーグでドライブやプレーメイキング能力の向上に取り組む富永啓生は、この課題克服に真っ向から挑んでいる。

2027年FIBAバスケットボールワールドカップアジア予選Window1が迫る中、富永は「絶対に負けられない、すごく大事な試合になる。選ばれたからには日本のバスケットボールのレベルアップにおいても、すごく大切な試合になる」と強い決意を表明している。

「和製ステフィン・カリー」と称される稀代のシューターが、単なるスペシャリストから総合的な攻撃力を備えた選手へと進化を遂げられるか。その成長こそが、バスケ 日本代表が国際舞台でさらに勝ち進むための鍵となる。2025年11月現在、日本バスケの未来は、富永の右肩に大きくかかっていると言えるだろう。