ガソリン暫定税率が終焉へ:半世紀の歴史に幕、家計負担年1.2万円減の衝撃
ニュース要約: 政府は物価高騰対策として、長年の懸案だったガソリン暫定税率の廃止を決定した。2025年12月末をもって1Lあたり27.6円の実質減税となり、標準的な家庭で年間1.2万円の負担軽減が見込まれる。物流コスト削減に繋がる一方、道路特定財源の代替策確保が今後の課題となる。
ガソリン暫定税率、半世紀の歴史に幕:廃止決定で家計負担年1.2万円軽減へ
2025年11月28日 日本経済新聞
長年にわたり日本の燃料価格に影響を与えてきたガソリン暫定税率が、ついに終焉を迎える。政府・与野党は、物価高騰対策および税制の抜本改革の一環として、暫定税率廃止を正式に決定した。ガソリンについては2025年12月31日をもって、1リットルあたり25.1円の上乗せ課税が撤廃される。軽油についても2026年4月1日の廃止が予定されており、これにより、標準的な家庭で年間約12,000円の負担軽減が見込まれる。この大規模な税制転換は、国民生活、物流業界、そして日本の道路特定財源のあり方に広範な影響を及ぼすことになる。
1リットルあたり約27.6円の減税効果
今回廃止されるガソリン 暫定税率は、1974年のオイルショック後に「道路整備財源の確保」を目的に導入された特例措置でありながら、約半世紀にわたり延長され続けてきた経緯がある。「暫定」の名に反するこの恒久的な増税措置は、家計や企業経営を長らく圧迫してきた。
廃止によって期待される価格低下幅は極めて大きい。暫定税率分である25.1円/Lが直接的に削減されるほか、この税率分にも課されていた消費税(約2.5円)も同時に解消されるため、消費者にとっては実質的に約27.6円/Lの負担軽減となる。
この減税効果は、高止まりする物価に対する強力な支援策として期待されている。特に、全国規模で年間1.0兆円に上るとされる減税効果は、消費者の購買力を下支えし、経済全体に波及する可能性が高い。
物流コスト削減とトリガー条項の終焉
ガソリン暫定税率廃止は、一般家庭だけでなく、経済活動の根幹を支える物流・運送業界にも大きな恩恵をもたらす。燃料価格の高騰は、長らく中小運送業者の経営を圧迫し、結果として物価の上昇を招いていた。軽油の暫定税率も翌春に廃止されることで、輸送コストが大幅に抑制され、最終的な物価抑制効果につながることが期待される。
また、今回の廃止は、ガソリン価格が一定水準を超えた場合に暫定税率の課税を停止する「トリガー条項」の役割にも影響を与える。原油価格の変動に伴い、2025年8月から発動されていたトリガー条項は、一時的な減税措置として機能していたが、暫定税率廃止によって、この複雑な自動調整メカニズム自体が実質的に不要となる。
道路財源の確保、政府の「つなぎ補助金」の行方
しかし、長年の懸案であった財源問題は残る。暫定税率は、これまで道路整備や維持管理に使われる道路特定財源の重要な柱だった。廃止により、この財源が失われるため、今後のインフラ整備計画に影響が出かねないという懸念がある。
政府はこれに対し、当面の代替策として、石油元売り各社に対する「つなぎ補助金」を段階的に支給することで、暫定税率廃止分の穴埋めを図る方針だ。さらに、将来的にはこの財源を一般財源化し、他の税収で代替する方向で調整を進めている。
地方自治体からは、道路特定財源が減少することによる地方交付税への影響や、地域インフラへの投資不足を危惧する声も上がっており、政府は代替財源の安定性確保が喫緊の課題となる。
政策転換の意義と今後の税制改革
今回の暫定税率廃止は、単なる減税策ではなく、半世紀にわたり形骸化していた税制を是正する歴史的な政策転換である。与野党間の合意形成により実現したこの改革は、国民の生活負担軽減という喫緊の課題に応えるものだ。
しかし、エネルギー政策は今後、地球温暖化対策やカーボンニュートラルへの移行という新たな課題に直面する。政府は、化石燃料への依存度を下げるためのカーボンプライシング(炭素価格付け)や環境負荷に応じた新税制の導入についても議論を深めていく必要がある。
2025年12月31日のガソリン暫定税率廃止は、日本の税制とエネルギー政策の大きな転換点として、今後もその影響と代替財源の動向が注視される。(記者:田中 剛)