国税庁、2025年税制DXを加速:年末調整簡素化、富裕層調査にAI本格導入へ
ニュース要約: 国税庁は2025年、税制DXを加速し公平性を追求する。納税手続きではe-Tax主流化や年末調整の簡素化(控除見直し、申告書統合)が進む。特に注目されるのは、富裕層の相続税調査へのAI本格導入による監視強化だ。また、インボイス制度では2026年10月から経過措置が50%控除に縮小され、免税事業者への影響が懸念される。
国税庁、税制DXと富裕層調査で「公平性」追求へ:2025年、年末調整・インボイスの変更点とAI活用の最前線
2025年(令和7年)を迎え、日本の税務行政はデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させるとともに、公平性の確保に向けた取り組みを一段と強化している。納税手続きの簡素化と利便性向上を掲げる国税庁は、年末調整や確定申告における電子化を推奨する一方、富裕層の資産把握にはAIを本格導入し、課税逃れへの監視を強めている。
1. 納税手続きのデジタル化加速:e-Tax主流化へ
国税庁は、納税者が自宅から24時間いつでも申告できるe-Taxの利用を強く推奨している。2025年2月17日から始まる2024年分確定申告期間に向け、利用環境の整備が進められている。
特に注目すべきは、マイナンバーカードを利用した手続きの徹底だ。利便性向上策として、スマートフォン単体で申告書の作成・送信が可能となる「スマホ用電子証明書」の導入が進む。一方で、税務署で発行される「ID・パスワード方式」は、2025年9月25日をもって新規発行が停止される見込みであり、事実上、マイナンバーカード方式が今後の電子申告の主流となる。e-Taxの利用は、青色申告特別控除の65万円適用要件にもなっており、中小事業者にとってDX対応は不可避の課題となっている。
2. 令和7年分 年末調整の簡素化と控除見直し
企業や従業員が年末にかけて対応する年末調整の手続きも、令和7年分に向けて大幅な見直しが図られている。
最大の変更点は、基礎控除および給与所得控除の金額引き上げと、申告書様式の統合である。特に基礎控除は、合計所得金額に応じて58万円から95万円の範囲で控除されるようになり、従来の「年収の壁」問題の緩和を目指した税制改正の一環として実施される。
事務負担軽減のため、複数の申告書に分かれていた「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」などが、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」に統合される。これにより、従業員の提出書類の削減と、企業の確認作業の効率化が期待される。また、特定の親族を扶養する場合に追加で控除が受けられる特定親族特別控除が新設されており、企業側には従業員への正確な情報提供が求められる。
3. インボイス制度、2026年10月からの「50%控除」が焦点に
2023年10月に施行されたインボイス制度は、施行から1年半以上が経過し、運用は安定しつつあるものの、免税事業者に対する影響は依然として大きい。
現在適用されている経過措置は、2026年9月までは免税事業者からの仕入れについて80%の控除が認められているが、2026年10月1日からは控除率が50%へと縮小される。この経過措置の縮小は、課税事業者にとって免税事業者との取引における税務負担が増すことを意味する。
国税庁は、制度の目的を「益税の解消」と明確に位置付けている。2026年秋以降、取引先である課税事業者からの価格交渉や取引の見直し圧力が強まることが予想され、免税事業者には制度対応、あるいは課税事業者への転換の判断が再度迫られることになる。
4. 富裕層への税務調査にAIを本格導入
税制の公平性を担保するため、国税庁は高額所得者や資産家、いわゆる富裕層に対する監視体制を抜本的に強化している。
特に注目されるのが、2025年7月から相続税の税務調査にAI(人工知能)が本格導入された点だ。AIは、過去の申告データや不動産、有価証券の情報を統合し、申告漏れリスクを数値化する。これにより、調査官は効率的に高リスク案件を選別できるようになり、人手不足の中での調査効率化が図られている。
富裕層の資産は国際化しているため、国税庁は海外資産や複雑なスキームを利用した節税対策に対しても厳しく注視している。AIの導入は、これまで見逃されがちだった相続財産が基礎控除額をわずかに超える層にも調査の対象を広げる可能性を秘めており、資産家層にとっては、より厳密な税務コンプライアンスの順守が求められる状況となっている。
国税庁のこれらの取り組みは、納税者の利便性向上と、税負担の公平性の実現という二律背背反する目標を、DXと法改正によって達成しようとする強い意志の表れと言える。納税者および事業者は、最新の税制情報とデジタル化の波に迅速に対応することが、今後ますます重要となる。