鈴木農水大臣「食料自給率100%」へ大転換:米政策と国際貿易の難題
ニュース要約: 鈴木農水大臣は、食料自給率100%を目指し、価格維持型の減産から生産拡大型の米政策へと大胆に転換する。積極財政で「財務の壁」を突破する構えだが、植物工場への依存批判や、国際貿易における保護主義との整合性、漁業補助金、政治資金の透明性など、多岐にわたる課題に直面している。
鈴木農水大臣、食料自給率100%へ舵:米政策転換と国際貿易交渉の課題
2030年45%目標の実現性:積極財政で「財務の壁」を突破か
高市内閣の農政を担う鈴木農水大臣(鈴木憲和氏)は、2025年11月現在、日本の食料安全保障の根幹に関わる大胆な政策転換を推進している。特に、カロリーベース食料自給率を現在の約38%から2030年度までに45%へ引き上げ、将来的には100%を目指すという目標は、戦後の農政における最大の構造改革となる可能性を秘めている。
この目標達成の鍵となるのが、「作るだけ作って余ったら輸出」という柔軟な米政策への転換だ。これまでの価格維持を目的とした減産政策から脱却し、生産拡大を促す方針を打ち出した。鈴木農水大臣は、小麦や飼料用トウモロコシなどの輸入依存品をコメやコメ油で代替する「輸入代替戦略」を具体策として掲げ、国内生産基盤の強化を急ぐ。
しかし、その道のりは平坦ではない。政府が推進する「植物工場」を自給率向上の柱とする構想に対し、農業経済学者の鈴木宣弘氏らは「現場の実態を反映していない」と強く批判している。大規模な施設農業への過度な依存は、中山間地域の生産基盤維持という喫緊の課題を見過ごす危険性がある。
こうした批判や、従来の農水省の財政構造に対する懸念を払拭するため、鈴木農水大臣は「財務の壁を乗り越えよう。全責任は私が負う」と発言し、農業分野への積極的な財政投入姿勢を明確にしている。この発言は、単なる政策目標ではなく、農業保護を巡る与野党間の予算議論に大きな影響を与えるものと見られている。
国際交渉の狭間で問われる整合性:保護主義とのバランス
鈴木農水大臣の掲げる「食料自給率向上策」は、国内農業の活性化を促す一方で、国際貿易交渉における日本の立ち位置を複雑化させている。
輸入代替が進み、米国、カナダ、ブラジルなどからの穀物輸入量が減少した場合、これらの主要貿易国との関係に影響を及ぼすことは避けられない。日本はTPPや日EU EPAといった自由貿易協定の枠組み内で、市場開放と自由化を推進してきた経緯がある。国内の生産拡大を急ぐ政策は、保護主義的傾向と見なされかねず、既存の国際協定との整合性が問われることになる。
鈴木農水大臣は、この点について「市場メカニズムを尊重した施策」と強調し、過度な保護ではなく、需給調整と生産拡大のバランスを追求する姿勢を示す。同時に、国内で余剰となった米をアジア、中東、アフリカなどへ積極的に輸出することで、国際的な食料安全保障への貢献をアピールし、貿易摩擦の回避を図る方針だ。
漁業補助金と政治資金:構造改革と透明性の課題
鈴木農水大臣が直面する課題は、食料自給率の議論に留まらない。水産分野では、小型スルメイカ釣り漁業をはじめとする漁業補助金カット案に対し、漁業関係者からの強い反発が続いている。大臣は財政構造改革の必要性を強調しつつも、現場の不満を和らげるための追加配分や調整に追われており、政策の実行力と現場支援のバランスが問われている。
また、「政治とカネ」を巡る問題も重くのしかかる。自民党全体で政治資金疑惑が燻る中、鈴木農水大臣自身は現時点で直接的な「裏金疑惑」の対象ではないものの、野党からは政治資金の透明性確保と説明責任を問う声が絶えない。農水省の構造改革を進めるためには、大臣自身の政治的信頼性が不可欠であり、今後の国会審議では、政策のみならず、政治資金規正法改正への対応についても厳しい追及が予想される。
2025年11月現在、鈴木農水大臣が進める農政改革は、生産者、消費者、そして国際社会の注目を集めている。大臣が公言した「財務の壁を乗り越える」という積極財政の方針が、日本の食料安全保障を抜本的に強化し、国際的な貿易バランスを維持できるか。その実行力が、今後の日本農業の未来を決定づけることとなる。