ガソリン暫定税率、ついに廃止決定へ:消費者負担軽減と1.5兆円の財源問題
ニュース要約: 参議院本会議で、半世紀続いたガソリン暫定税率の廃止法が成立。2025年末で廃止され、ガソリン価格は1リットルあたり約25.1円安くなる見込みだ。これにより家計負担は軽減されるが、道路整備などに充てられてきた年間1.5兆円の財源確保が喫緊の課題となる。
半世紀の重荷、ついに終止符へ:ガソリン暫定税率廃止が決定 - 消費者負担軽減と1.5兆円の財源課題
(2025年11月28日 日本経済新聞/共同通信社)
長年にわたり日本の税制の歪みとして指摘されてきたガソリン暫定税率が、ついに歴史的な転換点を迎えようとしている。2025年11月28日、参議院本会議において、ガソリン暫定税率廃止を盛り込んだ関連法が全会一致で可決・成立した。これにより、約半世紀続いた「暫定」措置は終焉を迎え、消費者の家計負担は大きく軽減される見通しだ。一方で、廃止に伴う年間約1.5兆円の税収減という財政的課題は、今後の道路整備やインフラ投資のあり方に深刻な影を落としている。
第一章:「暫定」が常態化した半世紀の歴史
現在、私たちが支払うガソリン税は、1リットルあたり53.8円で構成されている。このうち、本来の税率である本則税率は28.7円に過ぎず、残りの25.1円が「暫定税率」として上乗せされてきた部分だ。この「ガソリン暫定税率とは」何かといえば、1974年のオイルショック後のエネルギー価格高騰への対処と、高度経済成長期における道路整備の財源確保を目的に「2年間の臨時措置」として導入された経緯を持つ。
しかし、財政状況の厳しさからこの措置は幾度も延長され、「当分の間税率」と名称を変えながら実質的な恒久増税として機能し続けてきた。2009年に道路特定財源制度が廃止され、ガソリン税が一般財源化されてからも、この暫定税率分は「特例税率」として維持されてきたのである。
また、2010年には、ガソリンの全国平均小売価格が3ヶ月連続で1リットル160円を超えた場合に暫定税率課税を一時停止する「トリガー条項」が導入された。だが、2011年の東日本大震災以降、財源確保を理由にこの条項は凍結されたままとなっており、高止まりする燃料価格に対する消費者の不満は高まっていた。
第二章:廃止決定のインパクトと家計への恩恵
今回の法案成立により、ガソリン 暫定税率は2025年12月31日をもって廃止されることが確定した。これにより、2026年1月1日からは店頭でのガソリン価格が1リットルあたり約25.1円安くなる見込みだ。
政府の試算では、このガソリン暫定税率廃止によって、一般家庭一世帯あたり年間約12,000円の負担軽減効果が見込まれている。長引く物価高騰に苦しむ消費者にとって、燃料費の節約は生活コストの削減に直結する大きなメリットとなる。
また、トラックやバスなどの物流業界に影響の大きい軽油の暫定税率(17.1円/L)も、2026年4月1日に廃止される予定であり、輸送コストの低下を通じた経済全体への波及効果も期待される。
この歴史的な廃止決定は、与野党間の激しい攻防の末に実現した。当初、恒久的な代替財源なき減税に慎重姿勢を示していた与党に対し、野党が結束して早期廃止を強く求めた結果、自民、立憲民主、維新、国民、公明、共産の6党による実務者協議で年内廃止の「画期的な合意」が成立した経緯がある。
第三章:財源喪失とインフラ整備の将来
ガソリン暫定税率の廃止は、消費者にとって朗報である一方で、財政面では極めて深刻な課題を残す。廃止により、ガソリン税で年間約1兆円、軽油引取税で約5,000億円、合計で約1.5兆円もの税収が失われる見通しだ。
この失われた税収は、かつて道路特定財源として日本の道路整備を支えてきた基盤であり、インフラ投資の予算確保が喫緊の課題となっている。特に地方自治体の財政への影響は大きく、道路や橋梁の維持管理、老朽化対策への投資が滞る懸念が指摘されている。
政府・与党は現在、この1.5兆円の減収を補うための安定財源の確保策について検討を進めており、法人税の租税特別措置の見直しや、高所得者層への負担増などが議論されている。政府は来年末(2026年末)を目処に代替財源に関する結論を得る方針だが、財源確保策が不十分なままインフラ整備が停滞すれば、将来的な経済活動の妨げとなりかねない。
ガソリン 暫定税率とは、単なる税金の上乗せではなく、日本のインフラ整備の歴史そのものであった。今回の廃止は、消費者負担の軽減という長年の懸案を解消する一方で、恒久的な財源のあり方という、より根深い問題に直面することを意味している。政府は、減税メリットと公共サービス維持という相反する要求をいかに両立させるか、難しい舵取りを迫られている。