星野リゾート 2026年戦略:歴史的資源活用と高級ブランド強化で拓く日本の観光立国
ニュース要約: 星野リゾートは、2026年に向けた戦略を発表。旧奈良監獄を再生する「星のや奈良監獄」の開業をはじめ、都市型OMO、温泉旅館「界」の展開を加速させる。富裕層向けブランドの強化に加え、「スキーヤー・スノーボーダーファースト」戦略で冬の国内需要も深掘りし、地域の歴史や文化を観光価値に変えることで、観光立国の未来図を描く。
星野リゾートが描く観光立国の未来図:2026年戦略と深まる地域連携
【東京】 国内外の観光需要が回復期を迎える中、ホテル運営大手である星野リゾートの多角的な事業戦略が注目を集めている。同社は、2026年に向けた大規模な新規開業計画を推進するとともに、高級リゾートから都市観光、そして冬のスキー・温泉ニーズまで、広範な市場を取り込むブランド戦略を強化している。この動きは、単なる施設拡張に留まらず、地域の歴史や文化資源を観光価値に変えるという、日本の観光産業における新たなモデルを提示している。
観光資源の活用と都市再生:2026年新規開業の衝撃
星野リゾートの2026年戦略において、最も目を引くのは、その展開地域の多様性だ。特に、重要文化財をホテルとして再生する取り組みは、歴史的資源の活用という点で画期的である。2026年4月に開館予定の星のや奈良監獄は、明治時代に建設された旧奈良監獄の赤レンガ建築を保存活用する、ラグジュアリーホテルとしての挑戦だ。これは、歴史的建造物の維持と観光体験の融合という、持続可能な地域活性化の新たな形を示している。
また、都市部では、横浜市において「OMO」ブランドの2施設が相次ぎ誕生する。高層階からのベイエリアの眺望を売りにするOMO5横浜馬車道、そして関内駅前の複合開発の中核を担うOMO7横浜は、都市再生プロジェクトと連携し、横浜の文化体験を深く掘り下げる役割を担う。さらに、温泉ブランド「界」は、界 草津(群馬県)をはじめ、全国的な温泉地への進出を加速させており、温泉街の街歩きと上質な滞在を両立させる設計を通じて、地方観光の魅力を再定義しようとしている。
富裕層を捉える「星のや」「界」のブランド力強化
インバウンド回復期を見据え、同社は高級リゾートセグメントにおける競争力強化を図っている。最上位ブランドの「星のや」は、宿泊施設そのものが旅の目的地となる「非日常への没入体験」を提供し、高所得層や経営層といった特定のターゲット層に深く刺さる戦略を継続している。
一方で、「界」ブランドは、地域固有の文化や食材を活かした会席料理と温泉体験を組み合わせ、一泊二食付きを中心としたサービス設計で、日本の伝統的な上質さを求める顧客層を捉えている。星野リゾートのブランドポートフォリオ戦略は、「旅の目的や価値観」に基づき市場を細分化することで、高価格帯でありながら高い顧客満足度と利益率を両立させる独自のビジネスモデルを確立している。これは、グローバルなホテルチェーンとの競争において、「日本らしさ」と「新しい旅のスタイル」を武器とする、強力な差別化要因となっている。
冬の国内需要を支える「スキーヤー・スノーボーダーファースト」
国内のレジャー需要、特に冬シーズンの集客においても、星野リゾートは戦略的な展開を見せている。北海道の星野リゾート トマムや、福島県の磐梯山温泉ホテルといった主要施設では、2025-2026年シーズンに向けた予約が本格化している。
これらの施設では、「スキーヤー・スノーボーダーファースト」を掲げ、ゲレンデ直結のアクセス、チェックアウト時間の延長、WAXバーの設置など、滑走を楽しむ顧客に特化したサービスを充実させている。同時に、良質なパウダースノーの提供に加え、ノンスキーヤー向けの「アイスヴィレッジ」(トマム)や、キッズレッスン「雪ッズ70」といった家族向けのアクティビティを豊富に用意することで、滑らない層や家族連れも取り込む複合的な集客を実現している。温泉と雪のアクティビティを組み合わせることで、冬の旅行需要を多角的に掘り起こす戦略は、地方の観光経済を支える重要な柱となっている。
星野リゾートのこうした一連の戦略は、単なる宿泊施設の提供に留まらず、各地域の歴史、文化、自然といった潜在的な魅力を引き出し、現代的な体験として再構築する試みである。コロナ禍を経て変化した旅行者のニーズに応え、日本の観光立国としての地位を確固たるものにする上で、同社の動向は今後も注視されるべきだろう。