ギニアビサウ:「麻薬国家」からの脱却へ 11月選挙は民主化の試金石、経済再建の行方
ニュース要約: 西アフリカのギニアビサウは、政情不安定と国際的な麻薬密輸の中継地化により国家機能が弱体化している。民主回復の試金石となった11月選挙後も、安定化には懸念が残る。経済を支えるカシューナッツ産業の脆弱性を克服し、国際支援を活かすため、司法の独立と反汚職措置の徹底が急務だ。
政情不安と麻薬の影に揺れる「ギニアビサウ」:民主化の試金石となった11月選挙、経済再建の道筋は
【ビサウ発:2025年11月27日 共同通信】
西アフリカの小国ギニアビサウは、独立以来、軍事クーデターと政治的混乱が繰り返されてきた「政情不安定」な国家として知られている。特に近年は、南米からのコカイン密輸の国際的な中継地、通称「麻薬国家」としての側面が深刻化し、国家機能の弱体化と地域全体の治安悪化を招いている。2025年11月23日に実施された大統領および国民議会議員選挙は、この悪循環から脱却し、民主主義を回復させるための重要な試金石とされたが、その後の政治的安定性には依然として懸念が残る。
繰り返されるクーデターと麻薬の浸透
ギニアビサウは過去40年間で5度のクーデターを経験し、2023年12月にも銃撃事件を伴う混乱が発生するなど、政治的対立の根深さは解消されていない。2025年5月にセネガル大統領が訪問し政治改革の必要性が議論されたものの、根本的な制度の脆弱性は残ったままだ。
この脆弱な政治構造に付け込んでいるのが、国際的な麻薬密輸組織である。同国はヨーロッパ市場へ向かうコカインの主要な中継地、いわゆる「西アフリカ回廊」の中核を担う。麻薬組織は、腐敗した政府関係者や軍部と癒着し、国家の司法制度や法執行機関を骨抜きにしてきた。2022年2月のクーデター未遂事件も、麻薬組織の関与が強く疑われており、治安と政治が不可分な悪循環に陥っている現状を示している。
麻薬密輸は汚職や秩序崩壊を招き、ギニアビサウを国際犯罪の温床へと変貌させた。国連薬物犯罪事務所(UNODC)や米国麻薬取締局(DEA)による支援・捜査活動は継続されているものの、汚職の蔓延が司法の独立を阻害し、加害者の多くが裁かれないという人権上の問題も深刻化している。司法制度は資金不足で政治的影響を受けやすく、国民の司法へのアクセスは困難な状態が続く。
経済の柱「カシューナッツ産業」の脆弱性
政治的な不安定さは、同国の経済発展を著しく停滞させている。ギニアビサウの国家経済は、国内総生産(GDP)の過半を占める農業、特に輸出収入の半分以上を占める「カシューナッツ産業」に極度に依存している。人口の約75%がこの産業に直接的・間接的に関わるが、その生産構造には大きな課題がある。
同国のカシューナッツはほとんどが未加工のまま輸出されており、付加価値が極めて低い。「国際競争力強化」のためには、現地での加工率向上と技術移転が急務とされている。政府や国際機関は、新しい品種の導入や品質改善、最低買い付け価格の順守などを通じて、農家の所得向上と生産の安定化を図っている。
しかし、不安定な政情と治安の悪化は、国際的な投資や支援の円滑な実施を妨げる主要な要因となっている。また、国際市況に左右されやすいカシューナッツ価格の変動リスクも、経済の安定性を脅かしており、産業構造の多様化が求められている。
国際支援の行方と改革への期待
ギニアビサウの不安定化は、隣国セネガルやギニアを含む西アフリカ地域全体の安全保障と経済協力に悪影響を及ぼすため、国際社会は関与を強めている。
2025年6月には、民主主義の逸脱を理由に支援を中断していたEUとの対話が10年以上ぶりに再開され、民主主義の回復と政治的安定のための「国際支援」が本格的に動き出した。世界銀行も財政ガバナンス強化と公共サービス改善を目的に900万ドル(約13億5千万円)の支援を実施している。
しかし、これらの支援が実を結ぶには、11月の選挙結果を尊重し、根本的な制度改革を加速させることが不可欠だ。特に、麻薬組織の影響力を排除し、真の「政情安定」を実現するためには、司法制度の独立と反汚職措置の徹底が鍵となる。
ギニアビサウが、麻薬とクーデターの負の連鎖を断ち切り、持続可能な発展を遂げるためには、国際社会による継続的な支援に加え、国内における透明な統治と市民参加の強化が待たれる。西アフリカの脆弱な中心地における民主化の道のりは、依然として険しい。