【いい肉の日2025】物価高騰下の二極化戦略：黒毛和牛「半額」か、大衆肉「増量」か

2025年「いい肉の日」戦線、物価高騰下で二極化戦略が鮮明に—黒毛和牛「半額」か、大衆肉「増量」か

【東京・大阪発】 11月29日の「いい肉の日」（11＝いい、29＝にく）を前に、全国の飲食業界、小売業界、そして通販サイトで大規模な特別キャンペーンが展開されている。特に今年の「いい肉の日 イベント」は、長期化する物価高騰と消費者の節約志向を背景に、単なる割引に留まらない、より戦略的な「二極化」の様相を呈している。企業側は、高級和牛の破格的な割引で「贅沢需要」を喚起する一方、大衆メニューの大幅なボリューム増量で「コスパ重視層」の確実な取り込みを図る戦略が鮮明だ。

高級志向の「半額」攻勢、和牛の価値再訴求

高級路線を牽引するのは、大手焼肉チェーンの「牛角」だ。同社は11月25日から12月10日の約2週間にわたり、目玉企画として「黒毛和牛カルビ」を何皿でも半額（通常価格より約484円引き）で提供する。さらに「黒毛和牛上赤身くらした」や「黒毛和牛ゲタカルビ」といった高級部位も特別価格で提供し、消費者が普段手を出しにくい「質」をこの機会に手頃な価格で体験できるように促している。

小売業界でも同様の動きが見られる。そごう横浜店では29日限定で、柿安の国内産黒毛和牛や三重県産松阪牛の小間切れなどを、数量限定ながらお買い得価格で販売。特別な日の食卓を彩る「ハレの日需要」を意識した、上質な肉の提供に注力している。

これらの戦略は、物価高騰により外食や高級食材の購入頻度が減少している消費者に対し、「今だけは贅沢を」という心理的フックをかける狙いがある。

大衆路線の「増量」戦略、コスパ極限追求

一方、消費者の日常的な「安く、たくさん食べたい」というニーズに直接応えているのが、大衆飲食チェーンの「ボリューム増量」戦略だ。

「伝説のすた丼屋」は11月27日から29日の3日間、「いい肉祭り」として対象メニュー15品以上の肉を50％増量する大盤振る舞いを実施。特に「すたみな油そば」では、並盛と同一価格で麺を2玉まで、肉を100％増量するという極限のコストパフォーマンスを追求している。

「ペッパーランチ」も28日から30日の3日間限定で、「ビーフペッパーライス」または「ワイルドジューシーステーキ」の肉を29％増量する。これは、価格を据え置いたまま、消費者にとっての「お得感」を最大化する、物価高時代における新たな標準的な対抗策として浸透しつつある。

また、「焼肉ときわ亭」が28日から30日に開催する「"超"イイニクの日 ブラックビーフフライデー」では、通常299円の「大盤振舞！牛すじ焼き」をわずか29円（税込32円）で提供。これは、多くの消費者に来店を促すための「究極の集客施策」として注目されている。

地域経済と非日常体験を繋ぐイベント

「いい肉の日」は、地域経済の活性化にも寄与している。三井アウトレットパーク滋賀では、近江牛やなにわ黒牛といった地域ブランド肉に加え、熊本直送の馬肉などが出揃うイベントを開催。新鮮な肉の販売に加え、クラフトビールや抽選会を組み合わせることで、商業施設全体の賑わいを創出している。

沖縄市コザでも、市役所前広場で先着290名にステーキをプレゼントする企画や、ワンパウンドステーキ早食い大会を開催。地域発祥のステーキ文化をPRし、観光客と地元住民双方に訴求している。

ホテル業界もこの波に乗る。「ホテルニューオータニ大阪」では、対象レストランにて「特別な一皿」をプレゼント。非日常的な空間で上質な肉を堪能する機会を提供し、客単価の高い層の誘致を図っている。

消費者への提言：賢い選択が求められる「いい肉の日」

今年の「いい肉の日」は、量販店、飲食チェーン、ホテル、通販（JAタウンなど）に至るまで、多様な選択肢が提供されているのが特徴だ。

しかし、多くのキャンペーンは期間限定かつ数量限定であり、特に29日当日は激しい混雑が予想される。牛角のように専用ページ画面の提示が必要な場合や、ホテルニューオータニ大阪のように事前予約特典がある場合もあり、各店舗・イベントの公式情報を事前に確認し、計画的に行動することが、最もお得に「いい肉」を堪能するための鍵となりそうだ。

（了）