スポーツカー市場が「未来」と「伝統」で二極化:EV化加速と高騰するクラシックカー資産
ニュース要約: 2026年以降のスポーツカー市場は、EV・HVによる電動化が成長を牽引。トヨタGRや新型Zなど注目モデルの投入が続く一方、内燃機関の希少車は富裕層の「走る資産」として価格が高騰し、市場は未来と伝統の二極化が進む。メーカーは規制対応とドライビングの楽しさの両立が課題。
2026年以降のスポーツカー市場:電動化と伝統の二極化、投資対象としての価値高騰
(東京発 2025年11月24日 共同通信)
自動車業界が歴史的な変革期を迎える中、スポーツカー市場はその最前線で「未来」と「伝統」の二極化が進んでいる。2026年以降、市場はハイブリッド車(HV)と電気自動車(EV)による電動化が牽引する一方、内燃機関を搭載した希少なヴィンテージスポーツカーは富裕層の投資対象として価格が高騰し、「走る資産」としての地位を確立しつつある。
第1章:電動化が加速する新生スポーツカー
2026年以降のスポーツカー市場の成長を支えるのは、HVとEVの多様な電動化モデルだ。市場調査によると、高級・スポーツカーセグメントにおけるEV/ハイブリッド車の年平均成長率(CAGR)は2032年にかけ6.6%から6.8%と高い伸びが見込まれている。
特に日本メーカーは、この電動化の波に独自の戦略で対応する。トヨタは、長年培ってきたハイブリッド技術の強みを活かしつつ、次世代のEV専用プラットフォームを搭載した航続距離1,000km超のモデルを市場に投入する計画だ。新型スープラについても、ハイブリッド化やプラグインハイブリッド(PHEV)化の可能性が高まっており、GRブランドを中心に多様なスポーツカーラインナップを展開する構えだ。
海外の高級メーカーも同様の動きを見せる。イタリアのフェラーリは、2030年までにEV比率を20%に高め、HVやPHEVと併用する「両輪戦略」を明確に打ち出している。電動化は単なるパワーソースの変更に留まらず、トヨタが採用する大型鋳造技術「ギガキャスト」のような革新的な製造技術と結びつき、軽量化と高剛性化を両立した次世代デザインのスポーツカーを生み出している。
しかし、市場はEV一辺倒ではなく、HVの需要も依然として根強い。燃費性能と価格のバランスに優れたHEVは、EVへの完全移行が不確実な現状において、重要な役割を果たし続けると見られている。
第2章:新型モデルの投入と「定義」の変化
2026年は、国産メーカーから注目すべき新型スポーツカーが多数投入される見込みだ。トヨタは、かつての名車「MR2」を「GR」ブランドとしてフルモデルチェンジで復活させるほか、「GR86」の刷新、そして東京オートサロンで公開された「GR GT3 Concept」の市販化が予定されている。日産も「フェアレディZ」の2026年モデルを発表済みであり、スポーツカーファンの期待は高まっている。
一方で、スポーツカーの「定義」自体が変化しつつある。排ガス規制や自動ブレーキなどの先進安全装備の搭載義務化により、従来の趣味性の高い純粋なスポーツカーの開発はコスト面で難しくなっている。その結果、市場は実用性重視のミニバンやSUVに傾倒し、スポーツカーは「規制適合コストに耐えられる一部メーカーしか残れない状況」にある。
しかし、最新の運転支援技術は、ドライビング体験をより安全かつ高性能なものに変えている。モータースポーツの知見をフィードバックした高性能制御システムは、車両の挙動を緻密に制御し、ドライバーは安心して高いパフォーマンスを引き出すことが可能だ。スポーツカーは、安全性を確保しつつ、その魅力を最大限に享受できる乗り物へと進化している。
第3章:クラシックカー市場の異変と「走る資産」
未来のスポーツカーが電動化へ向かう一方、過去のスポーツカーは今、投資対象として前例のない高騰を見せている。希少モデルや歴史的価値の高いヴィンテージスポーツカーは、富裕層の資産分散ニーズやコレクター市場の拡大を背景に、価格が持続的に上昇している。
特に、日本の名車であるトヨタ「2000GT」は8,000万円から1億円、日産「スカイラインGT-R(ハコスカ)」も1,000万円以上の高値で取引されるなど、国産旧車の価値も急上昇している。海外では数十億円で落札される例も珍しくなく、「走る資産」としての地位は盤石だ。
この高騰の要因の一つに、製造後25年以上経過した車両の輸入が解禁される「25年ルール」があり、特定の国産旧車に対する海外からの需要が拍車をかけている。投資ファンドの参入も増え、希少性や個性的なデザインを持つヴィンテージスポーツカーの価値上昇トレンドは今後も継続すると予測されている。
第4章:若者回帰を促すエントリーモデル戦略
市場全体が高級化・電動化に向かう中、若者にも手の届くエントリーモデルの存在は、スポーツカー文化の維持に不可欠だ。トヨタ「GR86」やマツダ「ロードスター」などは、FR駆動の楽しさやMT車の設定を維持しつつ、比較的安価な価格帯で提供され、若年層の支持を集めている。
メーカーは、SNSを活用した「楽しそう」「かっこいい」といったイメージ訴求や、イベントを通じたコミュニティ形成を積極的に展開。これにより、若年層の車離れが進む中でも、「走りの楽しさ」や「所有する喜び」といったスポーツカーの根源的な魅力を再訴求し、新たなファン層の獲得に成功している。
スポーツカー市場は、電動化による技術革新と、クラシックカーの資産価値化という、相反する潮流の中で多様な進化を遂げている。メーカーは、未来の環境規制に対応しつつ、スポーツカーが持つべき本質的な魅力、すなわちドライビングの楽しさをいかに次世代に継承していくかという、難しい舵取りを迫られている。