【2026年戦略】ブルガリ、超薄型「オクト」と体験型ホテルでラグジュアリーの未来を拓く
ニュース要約: ブルガリは「オクト フィニッシモ」で超薄型時計の世界記録を更新し続ける一方、「ブルガリ ホテル 東京」の成功で体験型ラグジュアリーを強化。Z世代に訴求するため森星氏を起用し、技術、体験、文化的価値の三位一体で2026年に向けた多角化戦略を加速させている。
ブルガリ、極限の「薄さ」と「体験」でブランド価値を再定義:2026年に向けた多角展開戦略
イタリアを代表するハイジュエラー、**ブルガリ(BVLGARI)**は、2025年後半に入り、伝統的な宝飾部門に加え、時計、ホテル部門においても革新的な展開を加速させている。特に、技術の極限を追求した時計コレクション「オクト フィニッシモ」の進化と、日本を拠点とする高級宿泊施設「ブルガリ ホテル 東京」の国際的な高評価は、同社が単なるラグジュアリーブランドの枠を超え、「文化資産型」の複合企業体へと変貌を遂げていることを示唆している。
技術の極致:「オクト フィニッシモ」が拓く超薄型の新時代
ブルガリの時計部門における象徴的存在である「オクト フィニッシモ」コレクションは、2014年の発表以来、「超薄型」の分野で世界記録を塗り替え続けてきた。2025年現在、このコレクションはわずか11年で10個もの世界最薄記録を樹立しており、最新モデル「オクト フィニッシモ ウルトラ」では、驚異的な厚さ1.80mmを達成している。
これは、歯車や複雑機構を同一平面上に配置するという、従来の時計設計の常識を覆す技術革新の賜物だ。チタンやタングステンカーバイドといった先進素材の採用に加え、自社製ムーブメントBVL199SKは、薄型ながら192時間という長時間のパワーリザーブを誇る。
市場の関心はすでに2026年へと向いており、時計評論家や愛好家の間では、厚さ1.5mm未満のムーブメント、あるいは自動巻きトゥールビヨンや永久カレンダーといった複雑機構を搭載したモデルのさらなる薄型化が期待されている。ブルガリは「オクト フィニッシモ」を通じて、伝統的なスイス時計技術とイタリアンデザインの融合を極め、高級時計市場における新たなスタンダードを確立しつつある。
日本が牽引する「体験型」ラグジュアリー戦略
ブルガリは、製品販売に留まらず、ブランドの世界観を体現する「体験」の提供を強化している。その中心にあるのが、2023年4月に開業した「ブルガリ ホテル 東京」だ。
同ホテルは2025年の世界のベストホテルランキングで15位に選出され、ミシュランガイドホテルセレクションでも2年連続で最高評価の3ミシュランキーを獲得するなど、開業から短期間で国際的な地位を確立した。特に、ホテル内のスパがフォーブス・トラベルガイドで最高評価の5つ星を獲得したことは、宿泊客に対し、最高級のホスピタリティとウェルネス体験を提供できている証左と言える。
さらに、2025年6月にはブルガリ 銀座タワー内に「ブルガリ 東京 銀座 バー&ドルチ」が新設され、アフタヌーンティーやバー体験を通じて、都心におけるラグジュアリーな社交空間を拡充した。ブルガリは今後、マイアミやモルディブなど、世界のリゾート地での新規ホテル展開も計画しており、都市型とリゾート型の双方でブランドの体験価値を高める戦略を進めている。
Z世代に訴求する「文化資産」とホリデーの輝き
ジュエリー部門では、ホリデーシーズンに向けた最新コレクション「ファイヤーワークス クリスタル」が市場で高い評価を得ている。特に、アイコンである「セルペンティ フォーエバー」のバッグや「ディーヴァ ドリーム」の新作ピアスは、18Kゴールドとダイヤモンド、カラーストーンの組み合わせが、個性を重視する現代の顧客層に響いている。
一方で、ブルガリは若年層、特にZ世代への訴求戦略を根本的に見直している。2025年11月には、起業家としても活動しZ世代に強い影響力を持つ森星氏を新たなブランドアンバサダーに起用。森氏が推進するサステナブルやダイバーシティといった価値観をブランドに取り入れ、「文化資産型」マーケティングを強化している。これは、Z世代が「何を買うか」よりも「なぜそのブランドを選ぶか」を重視する傾向に対応したものだ。
過去には、SNSでのプロモーション手法が一部で「ブルガリショック」と呼ばれる炎上騒動を招いた経緯もあり、ブランドイメージの維持と、若年層とのエンゲージメント強化のバランスが喫緊の課題となっている。今後は、厳選されたアンバサダーやクリエイターとの提携を通じて、ブランドの希少性と特別感を維持しつつ、デジタルプラットフォーム上での訴求力を高めていく必要があろう。
ブルガリは、極限の技術革新、洗練された体験提供、そして現代的価値観との融合という三位一体の戦略により、グローバルなラグジュアリー市場での地位を確固たるものにしようとしている。その多角的な挑戦は、2026年に向けてさらに加速していく見通しだ。