米感謝祭に「消費の二律背反」:記録的人出も売上成長は鈍化、EC化が変容させる年末商戦
ニュース要約: 米国では感謝祭を迎え、翌日のブラックフライデーから年末商戦が本格化。今年は旅行者が過去最高を更新する一方で、インフレと消費者の慎重姿勢から売上成長率は鈍化予測。Eコマースの浸透により商戦は早期化し、テイクアウト需要など伝統的な祝い方にも変化が見られる。
米感謝祭、消費に二律背反の影 記録的な人出も売上成長は鈍化 Eコマースが消費行動を変容
本日27日、家族団欒の祝日 翌日からはブラックフライデー商戦本格化
【ワシントン、東京】本日11月27日(木)、米国は伝統的な祝日である感謝祭(サンクスギビングデー)を迎えた。家族や友人が一堂に会し、ローストターキーを囲むこの祝日は、翌日のブラックフライデーから本格化する年末商戦の幕開けを告げる。今年の商戦は、人出が過去最高を更新する見通しである一方で、消費者の慎重姿勢を反映し、売上成長率の鈍化が予測されており、米国の消費動向に二律背反の影が差している。
伸び悩む売上成長率、賢明化する消費者
全米小売業協会(NRF)の予測によると、感謝祭からサイバーマンデーまでの5日間の来客数は1億8690万人に達し、前年比で増加、過去最高を更新する見通しだ。しかし、11~12月期の小売売上高(実店舗とオンラインの合計)の伸びは、前年同期の4.8%増から鈍化し、3.7~4.2%増に留まると見込まれている。
この成長鈍化の背景には、インフレによる物価高騰と、関税の影響による値下げ品の減少が指摘されている。NRFは「消費者の心理面は弱いが、米国の家計の基礎的条件は依然として強固だ」と分析する。消費者は物価高のなかで、少しでも賢く購入したいという意識を強めており、これがブラックフライデーのような大規模セールイベントへの関心を高めている。
小売各社は販売を確定させるため、プロモーションを早期化させている。米アマゾン・ドット・コムは11月17日に、ウォルマートも14日に販売促進策を開始するなど、伝統的な「感謝祭翌日」の開始時期が崩れつつある。特にEコマースの浸透は著しく、経済産業省の統計でも、日本の物販系分野のEC化率は約10%に達し、セーターなどの冬物衣料やストーブなどの暖房器具といった「冬支度の買い物」がこの時期に集中する傾向にある。ブラックフライデーは、家計防衛のための計画的な前倒し消費の象徴的な場となっている。
記録的な大移動と空港の混乱リスク
家族団欒のため、米国ではこの期間に記録的な大移動が発生している。米自動車協会(AAA)によると、感謝祭期間中の旅行動向は、旅行者総数が8,180万人に達する見込みであり、過去15年間で最多の記録的な混雑となっている。このうち約9割にあたる7,300万人が自家用車を利用するが、国内線を利用する航空便の利用者も約600万人に上り、パンデミック前の水準を完全に超えた。
しかし、政府機関のシャットダウン解除直後という異例の状況下で、航空管制官や運輸保安庁(TSA)職員のキャパシティ不足が懸念されており、ニューヨークやシカゴなどの主要空港を中心にフライトの遅延や欠航が多発するリスクが指摘されている。道路渋滞も火曜日から水曜日の午後にかけ深刻化しており、移動時間の増加率は地域によっては100%を超える状況だ。飲酒運転による交通事故リスクも依然として高い水準にあり、安全面への警戒が呼びかけられている。
多様化する食卓の伝統とテイクアウトの拡大
感謝祭の食卓の主役は、依然としてローストターキー(七面鳥の丸焼き)とパンプキンパイだが、コロナ禍を経た社会変化に伴い、その祝い方には多様性が生まれている。従来の大人数での集まりが減少する中で、レストランやスーパーマーケットは小規模家族に対応したメニュー展開を進めている。
例えば、高級レストランでは1/4羽のローストターキーコースを提供するなど、少人数での利用を促進。また、家庭での調理負担を軽減するため、テイクアウトや持ち帰り用ターキーディナーの提供が一般化した。ロウリーズ・ザ・プライムリブやチャート・ハウス・ワイキキなどの著名なレストランも、店内およびテイクアウトの両方で特別メニューを提供し、利便性を高めている。一部の家庭では、大きなターキーの代わりにハムや鶏むね肉を使った代替料理を選ぶ傾向も見られ、伝統的な食文化が現代のライフスタイルに合わせて柔軟に変化していることが伺える。
日本の「勤労感謝の日」との文化的差異
文化的な視点から見ると、米国の感謝祭は、17世紀の植民者とネイティブアメリカンの収穫感謝の行事に由来する「五穀豊穣と家族の団欒を祝う」大規模な祝祭である。多くのビジネスや公共サービスが休業し、社会的イベントが多いのが特徴だ。
これに対し、日本の11月23日の「勤労感謝の日」は、古代からの収穫祭である新嘗祭を起源とするものの、戦後は「労働と生産に感謝する」世俗的な祝日として位置づけられており、祝う対象や社会的な休日の規模に大きな違いがある。米国の感謝祭は、記録的な人出とEC化の進展、そして消費の慎重化という矛盾を抱えながら、伝統と現代の変化が交錯する極めて重要な一日となっている。