絶対王者バイエルン、ザンクトパウリに3-1劇的逆転勝利：AT連続弾と歴史的重み

【独占】絶対王者バイエルン、劇的AT逆転勝利の深層：ザンクトパウリ戦に見る戦術の限界と歴史的重み

2025年11月30日

【ミュンヘン共同】サッカー・ブンデスリーガ第12節、バイエルン・ミュンヘンとザンクトパウリの一戦が29日（日本時間30日）、アリアンツ・アレーナで行われ、絶対王者バイエルンが後半アディショナルタイム（AT）の連続ゴールにより、3-1で劇的な逆転勝利を収めた。下位に沈むザンクトパウリは試合開始早々に先制し、一時は波乱の予感を漂わせたが、王者の底力の前に屈し、痛い9連敗を喫した。

このバイエルン 対 ザンクトパウリ戦は、歴史的な因縁と対照的なサポーター文化が交錯する中で行われ、単なるリーグ戦以上の重みを持っていた。

波乱の立ち上がり：下位チームのカウンターが王者を襲う

試合は、下位チームであるザンクトパウリの戦術的アプローチが序盤で成功を収める波乱の幕開けとなった。ザンクトパウリは、守備ブロックを低く設定し、バイエルンのビルドアップのミスを狙うカウンター戦術を基調とした。

そのアプローチが実を結んだのが前半6分。バイエルンのDFコンラート・ライマーが自陣右サイドでボールを失う痛恨のミスを犯すと、ザンクトパウリのFWアンドレアス・ウントンジがこれを逃さず先制ゴールを挙げた。守護神マヌエル・ノイアーもこのミスに激怒する様子が確認され、スタジアムに詰めかけたバイエルンファンからは、試合序盤から苛立ちと落胆の声が上がった。

絶対王者は失点後、ボール支配率を上げ、継続的な圧力をかけた。23分にはカールのシュート、29分にはビショプのシュートがポストを直撃するなど、得点機会を創出するも、ザンクトパウリの粘り強い守備と不運により、なかなか得点に至らない時間が続いた。

しかし、前半終了間際の44分、ラファエル・ゲレイロが同点ゴールを決め、1-1で試合を振り出しに戻した。この同点弾は、バイエルンのボール支配がようやく実を結んだ瞬間であり、ザンクトパウリのカウンター戦術が、90分間を通じて継続的な効果を発揮することの難しさを示唆していた。

後半ATの集中力：ルイス・ディアスとジャクソンが勝負を決する

後半に入ると、バイエルンはオリーセやニコラス・ジャクソンといったフレッシュな戦力を投入し、攻撃のギアを一段階引き上げた。ザンクトパウリは防戦一方となり、守備的なアプローチを維持することが困難になっていった。

下位チームが絶対王者に対して採用する守備的なアプローチは、限定的な時間帯では機能するものの、バイエルンの組織力と個の能力の前では、次第に限界を迎える。

そして、試合は劇的なクライマックスを迎える。同点のまま迎えた後半アディショナルタイム、バイエルンの驚異的な集中力が火を噴いた。90+3分、ヨシュア・キミヒの正確なアシストから、ルイス・ディアスがヘディングシュートを叩き込み、ついに逆転に成功する。

さらにザンクトパウリが同点を目指して前がかりになった隙を突き、90+6分、投入されたばかりのニコラス・ジャクソンがダメ押しとなる追加点を決め、試合は3-1で決着。バイエルンはアーセナル戦での敗戦後の立て直しに成功し、ブンデスリーガでの無敗記録を維持する重要な勝利をもぎ取った。

藤田譲瑠チマの奮闘と歴史的背景

ザンクトパウリのMFとしてフル出場を果たした藤田譲瑠チマは、中盤で懸命に守備を支え、バイエルンの猛攻に対する防波堤として奮闘した。しかし、チームは後半ATの連続失点により、連敗を9に伸ばす厳しい結果となった。

この対戦は、単なる現在の順位差を超えた深い歴史を持つ。特に2002年2月6日、ザンクトパウリが当時のワールドカップ王者であったバイエルンをリーグ戦で撃破した「Weltpokal sieger besieger（ワールドカップ王者に勝った者）」の伝説は今も語り継がれている。また、バイエルンがザンクトパウリの経営危機の際に無償の援助を行ったという複雑な関係性も存在し、両クラブのファンにとって特別な一戦となった。

試合中、アウェイにもかかわらず強い存在感を放ったザンクトパウリの熱狂的なサポーターと、守備のミスに厳しく、勝利に安堵するバイエルンファンの感情の起伏が激しいスタジアムの雰囲気は、この試合の歴史的重みを物語っていた。

バイエルンにとっては、土壇場で勝ち点3を獲得し、リーグ戦の優位性を保つ重要な一戦となった。一方、ザンクトパウリは連敗脱出には至らなかったものの、絶対王者相手に見せた粘り強い戦術と、後半ATまで食い下がった奮闘は、今後のリーグ戦に向けた希望を残したと言えるだろう。