アトレティコ7連勝の裏側—シメオネ戦術の深層と若手育成戦略

シメオネ戦術の深層：若手起用と疲労管理が導く連勝街道—「アトレティコ 対 オビエド」が示す成長の試金石

2025年11月30日（マドリード発）

スペイン・ラ・リーガでは、アトレティコ・マドリードが再び強さを見せつけている。11月29日に行われたリーグ第14節、ホームのリヤド・エア・メトロポリターノで行われたレアル・オビエド戦は、結果こそ2-0の勝利に終わったものの、ディエゴ・シメオネ監督の戦術的な柔軟性と、若手選手の積極的な登用という二つの側面が浮き彫りになった一戦となった。

この勝利により、アトレティコは公式戦7連勝、リーグ戦5連勝を達成し、首位争いに食い込むラ・リーガ3位に浮上した。しかし、試合内容はスコア以上の厳しさを伴っていた。

粘るオビエドの組織力とシメオネの「戦術転換」

直近のアトレティコ 対 オビエド戦は、強豪アトレティコが二部リーグ出身のオビエドの粘り強い守備組織に苦しめられる展開となった。アトレティコは前半にアレクサンダー・セルロートの2ゴールでリードを奪ったものの、オビエドは4-4-2の堅固な守備ブロックと、45%というボール支配率を記録する積極的なボール保持で対抗。特にセットプレーでは6本のコーナーキックを獲得し、アトレティコゴールを脅かす場面が散見された。

シメオネ監督は、この格下相手の試合を単なる勝利で終わらせず、今後の過密日程を見据えた「疲労管理」と「若手育成」の場として活用した。

特筆すべきはハーフタイムの采配だ。前半で既に2-0のリードを奪い、パフォーマンスが光っていたバエナをあえて下げ、ジュリアーノを投入。さらに後半、オビエドが勢いを取り戻し始めた63分には、グリーズマンとセルロートという攻撃の主軸を下げ、パブロ・バリオスとリア・アバレを投入した。

これは、主力選手の疲労を軽減しつつ、若手選手にラ・リーガでの貴重な出場機会を与えるという、シメオネ流の戦略的判断の表れである。リードを守りながらも、若手にプレッシャーのかかる状況で実戦経験を積ませることで、チーム全体の底上げを図る狙いがあったと見られる。

国王杯での成功体験が示す若手の系譜

シメオネ監督が若手選手を重要な場面で起用する姿勢は、過去のアトレティコ 対 オビエド戦の歴史からも読み取れる。

特に記憶に新しいのは、2022-23シーズンの国王杯（コパ・デル・レイ）ラウンド16での対戦だ。この試合もアトレティコが2-0で勝利を収めたが、得点はいずれも当時若手として注目されていた選手によってもたらされた。一人は現在スペイン代表にも定着したマルコス・ジョレンテ、そしてもう一人が、今や中盤の重要なピースとなったパブロ・バリオスである。

バリオスは、このオビエド戦でユースから昇格したばかりながら追加点を挙げ、その後の成長の足がかりを築いた。オビエド戦は、アトレティコの若手にとって、トップチームでの存在感を示すための重要な「登竜門」として機能してきたと言える。

今回のラ・リーガ戦で投入されたバリオス、ジュリアーノ、そしてスパーリといった若手も、かつてのジョレンテやバリオスのように、この機会を通じてチーム内での地位を確立していくことが期待される。シメオネ監督は、目の前の勝利だけでなく、将来を見据えた戦力整備を怠らない。

組織力への対応力が試金石に

この度のアトレティコ 対 オビエド戦の勝利は、アトレティコが連勝を継続し、リーガ優勝争いに踏みとどまる上で極めて重要だ。しかし、オビエドが見せた粘り強い守備組織とセットプレーの脅威は、強豪アトレティコにとって、今後のチャンピオンズリーグや、レアル・マドリード、バルセロナといったライバルとの直接対決に向けた課題も提示している。

シメオネ監督の柔軟な戦術転換と、若手への信頼がチームの勢いを支えていることは確かだ。しかし、より堅固な組織を持つ上位チームに対し、前半での決定力向上と、試合を通しての集中力維持が、シーズン後半戦の鍵となるだろう。

アトレティコ・マドリードは、ベテランの経験と若手の勢いを巧みに融合させながら、厳しいタイトルレースを戦い抜くための基盤を固めつつある。