J終盤戦の熱狂を支える「味の素スタジアム」:FC東京の歴史と進化する多目的拠点
ニュース要約: 味の素スタジアム(味スタ)は、Jリーグ終盤戦を迎え、FC東京の最終戦『Big Thank You Day』の舞台となる。単なる競技場ではなく、音楽ライブ(BE:FIRST)や展示会など多目的に活用され、「何でもできるスタジアム」として進化。地域住民向けのウォーキングコース開放や震災時の避難所機能も担う、東京西部の重要な交流・防災拠点としての現在地を追う。
味の素スタジアムの「現在地」— J終盤戦の熱狂と多目的拠点としての進化
2025年11月16日、日本のサッカー界はシーズン終盤特有の熱気に包まれています。本日、FC東京は天皇杯準決勝を国立競技場で戦いますが、彼らの真のホームであり、数々のドラマが生まれてきた「味の素スタジアム」(以下、味スタ)は、Jリーグの最終局面に向けて、クラブとサポーターの絆を深める舞台を用意しています。
単なる競技場に留まらず、東京西部の文化・交流拠点として確固たる地位を築いた味スタ。その歴史と現在、そして未来への多角的な取り組みを追います。
飛田給に刻まれた「青赤」の物語
FC東京にとって、味スタは単なる試合会場以上の意味を持ちます。松橋力蔵監督率いるチームは、リーグ終盤を迎え、12月6日にはアルビレックス新潟との最終戦をホームで迎えます。この最終戦は、一年間の感謝を伝える『Big Thank You Day』として企画され、飛田給駅からスタジアムまでの道が『青赤ストリート』として歩行者天国になるなど、地域全体を巻き込んだ祭典となる予定です。
しかし、このスタジアムには、歓喜だけでなく、時には苦渋の歴史も刻まれています。特に、宿敵川崎フロンターレとの「多摩川クラシコ」では、これまでホームチームでありながらリーグ戦、カップ戦を通じて10勝9分18敗と負け越しており、味スタのピッチ上で繰り広げられるライバルとの死闘は、常にサポーターの心に深く刺さる物語を提供してきました。
味スタの歴史を辿ると、その土地がかつて在日米軍から返還された「関東村」の跡地であったという背景も、東京という都市の変遷を象徴しています。戦後の歴史を背負ったこの地に、約4万8千人を収容する多目的スタジアムが誕生したことは、地域の新たなアイデンティティ形成に大きく寄与したと言えるでしょう。
スポーツを超えた「何でもできるスタジアム」へ
味スタは、日本における多目的スタジアムの先駆けの一つとして、常に進化を続けてきました。近年掲げているのが、「何でもできるスタジアム」というキャッチフレーズです。
サッカーやラグビーといったスポーツイベントはもちろんのこと、約7,000平方メートルの「ブレンディ広場」や「アジパンダ広場」を活用した展示会、ドッグショー、さらにはウェディングや大規模な音楽ライブまで、その用途は多岐にわたります。2026年5月には、人気アーティストBE:FIRSTの初の単独スタジアムライブが予定されており、既にチケット争奪戦が予想されるなど、エンターテインメントの聖地としても注目を集めています。
また、特筆すべきは地域社会との連携です。スタジアムコンコースの一部を夜間や雨天でも利用可能な無料ウォーキングコースとして地域住民に開放し、健康増進に貢献しています。さらに、2011年の東日本大震災時には避難所として被災者を受け入れるなど、有事の際の社会的な役割も果たしてきました。スタジアムは単なる興行施設ではなく、地域に根差した「防災・交流拠点」としての機能も担っているのです。
アクセスの課題と持続可能な運営
味スタの最大の利便性は、京王線飛田給駅から徒歩5分というアクセス性の高さです。大規模イベント時には特急が臨時停車し、調布駅などからの臨時バスも運行されるなど、公共交通機関の体制は充実しています。
しかし、来場者の増加に伴い、交通アクセスに関する課題も顕在化しています。スタジアムは原則として駐車場が利用できず、特にイベント終了後の周辺道路は激しい渋滞が発生しがちです。このため、運営側は車での来場を強く抑制し、公共交通機関の利用を徹底して推奨しています。この交通問題への対応は、今後も大規模なイベントを継続的に開催していく上で、避けて通れないテーマとなるでしょう。
年末年始の大型ライブの情報はまだ出ていないものの、12月6日のFC東京最終戦をはじめ、味スタは今年も多くの人々の歓声と感動の舞台となります。地域と共に歩み、多様なニーズに応えることで、味の素スタジアムはこれからも東京のエンターテインメントとスポーツの歴史を刻み続けていくに違いありません。(了)
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