維新の地・山口:ふぐ解禁で賑わう冬、知事選で問われる人口・経済対策
ニュース要約: 明治維新の「胎動の地」山口県は、トラフグ解禁で冬季観光が活況を呈している。しかし、来年2月の知事選を控え、深刻な人口減少と地域経済の活性化が喫緊の課題だ。豊かな歴史と食を基盤に、未来への挑戦を続ける山口県の現状を追う。
維新の胎動と食の王様:山口県、歴史と未来への挑戦
【山口】 歴史の重厚な足跡と、豊かな自然の恵みが共存する山口県は、2025年11月現在、年末年始の観光シーズンを控え、活況を呈している。特に明治維新160周年という歴史的節目を迎え、吉田松陰ゆかりの地を巡る歴史観光が注目される一方、来年2月には山口県知事選が予定されており、深刻な人口減少対策と地域経済の活性化という難題に、県政がどう向き合うかが問われている。
冬季の華、「ふぐ解禁の地」下関
山口県の冬季観光の最大の目玉は、下関市が誇る「ふぐ」文化である。下関は、明治21年(1888年)に初代内閣総理大臣の伊藤博文が食したことをきっかけに、全国に先駆けてふぐ食が解禁されたふぐ解禁の地として知られる。
現在、下関市には日本で唯一のふぐ専門卸売市場である南風泊市場(はえどまりしじょう)があり、ふぐの王様と称されるトラフグをはじめ、全国から集まる多様なふぐの取扱量で世界一を誇る。ふぐは秋の彼岸から春の彼岸までが旬とされ、特に冬季は最も美味しくなる時期だ。2025年9月にはふぐ延縄船出航式が行われ、本格的な漁が始まっている。
下関を訪れる観光客は、南風泊市場から直接仕入れられた鮮度抜群の下関ふぐを、旅館や料亭で堪能できる。山口県では縁起を担ぎ「ふく」と呼ぶのが一般的であり、「幸ふく」を呼び込む食体験として国内外からの注目度が高い。来年2月11日(火・祝)には、南風泊市場で「下関ふくの日まつり」が開催され、ふく鍋やふく刺しなどが販売される予定だ。
歴史を体感する維新160周年の胎動
山口県は、日本の近代化を導いた明治維新の精神的基盤が築かれた場所である。吉田松陰が指導した松下村塾(萩市)は、「維新の胎動の地」として、今なおその思想を伝えている。
2025年は、長州藩の若者たちが英国へ密航した「長州ファイブ」の密航160周年という節目にもあたる。萩博物館などでは、彼らの足跡を追う特別展や、歴史の舞台を巡る体験型のカードラリーが展開されており、現代の技術を用いたVR体験も導入され、若者にも親しみやすい学びの場が提供されている。
また、晩秋の山口県は紅葉と歴史探訪を組み合わせた観光ルートが人気だ。山口県内の紅葉は11月下旬までが見頃を迎え、特に山口市の瑠璃光寺五重塔周辺では、五重塔と紅葉の美しい共演が見られる。さらに、秋吉台ではススキやチガヤが黄金色に染まる草紅葉が広がり、ジオガイドとともに巡るウォーキングツアーが開催されるなど、歴史と自然の両面から山口県の魅力を深く味わうことができる。
知事選の争点:未来を左右する経済と人口対策
豊かな歴史と食を擁する山口県だが、県が直面する最も喫緊の課題は、深刻な人口減少対策と、それを食い止めるための地域経済の活性化である。
来年2月に向けて本格化する山口県知事選では、立候補を表明する複数の候補者が、この二つの課題を最重要政策に掲げている。特に、若者の県内定着を促すため、県内に就職する学生や若者への就職支度金の創設、若者起業支援補助金制度の整備などが具体策として提案されている。
また、地域産業の基盤維持のため、最低賃金の時給1500円実現を目指すとともに、賃上げを実施する中小零細企業への財政支援の拡充が主要な争点となっている。地方経済を支える中小企業の負担軽減策として、国に対しインボイス制度の廃止を求める方針も示されるなど、現場に即した経済対策の実現可能性が問われている。
さらに、教育環境の充実も未来への投資として重視されており、小中高校での30人以下学級の実現や、教職員の働き方改革が公約に盛り込まれている。
山口県は、維新の志士たちが未来を切り拓いた「胎動の地」の精神を受け継ぎ、豊かな食と歴史を基盤としつつ、新たな政策によって持続可能な地域社会の実現を目指す、重要な岐路に立っている。