上田綺世の「光」と名門フェイエノールトの「影」：公式戦4連敗の深層と冬の補強戦略

【欧州蹴球分析】得点王・上田綺世の「光」と名門フェイエノールトの「影」：公式戦4連敗の深層と冬の補強戦略

2025年12月1日　ロッテルダム発

オランダ・エールディヴィジの名門フェイエノールトは、2025-26シーズン中盤戦を迎えるにあたり、極めて異例な状況に直面している。絶対的エースである日本代表FW上田綺世が得点ランキング首位を独走し、欧州の注目を集める驚異的な活躍を見せる一方で、チームは公式戦4連敗、UEFAヨーロッパリーグ（EL）敗退濃厚という深刻な低迷期にある。個人の傑出したパフォーマンスと、チームの危機的状況というコントラストが、この歴史あるクラブの現在地を色濃く映し出している。

優勝戦線で広がるPSVとの勝点差

フェイエノールトは現在、エールディヴィジで2位に位置しているものの、11月末時点で首位PSVとの勝点差はすでに「6差」に拡大しており、優勝戦線において厳しい立場に立たされている。

特に直近の成績不振は深刻で、公式戦4連敗を記録。エールディヴィジ第13節ではNECナイメヘンにアウェイで2-4と敗北を喫した。この試合では、FW上田綺世とDF渡辺剛の両日本人選手がフル出場したが、チームとしての守備の脆さが露呈。渡辺についても、複数の失点場面で背後を狙われるなどディフェンスライン全体の課題が指摘されている。

ヨーロッパ戦線でも状況は打開できていない。ELリーグフェーズ第5節では、ホームでセルティックに1-3の完敗を喫し、通算成績は1勝4敗。勝ち点3で36チーム中30位に沈んでおり、決勝トーナメント進出は絶望的だ。中盤の司令塔ルチアーノ・ヴァレンテが「フェイエノールトに相応しくない状況だ」と語るように、チームは結束力の強化を急務としている。ロビン・ファン・ペルシ監督体制下で、いかにこの負のスパイラルを断ち切るかが最大の焦点となる。

孤軍奮闘する上田綺世――2カ月連続MVPの輝き

チームの低迷とは裏腹に、日本代表FW上田綺世の個人成績は目覚ましい。今シーズン、上田は公式戦19試合で14ゴールを記録。特にリーグ戦では13試合で13ゴールを挙げ、オランダリーグの得点ランキングで堂々の首位を独走している。

その活躍は個人表彰にも反映されており、上田は9月に続き10月もクラブ月間最優秀選手に選出され、2カ月連続受賞という快挙を成し遂げた。10月にはヘラクレス戦でハットトリックを達成。さらに11月30日の第14節テルスター戦でも先制ゴールを決め、公式戦2試合連続ゴールを記録するなど、その決定力はオランダ国内に留まらず、欧州ビッグクラブからの注目を高めている。

上田自身も「今はあまりよくない状況ですけど、ここからまた巻き返していけるように頑張ります」とサポーターに向けてメッセージを送っており、エースとしてチームを牽引する覚悟を示している。

チーム再建の鍵を握る冬季移籍市場と佐野航大への関心

フェイエノールトがシーズン後半に向けて巻き返しを図る上で、来年1月の冬季移籍市場での補強戦略が極めて重要となる。特に、主力MFクインテン・ティンバーの契約満了に伴う退団が確実視されており、中盤の戦力補強は喫緊の課題だ。

そこで現地メディアの関心を集めているのが、NECナイメヘン所属の日本代表MF佐野航大である。佐野は「ブンデスリーガ時代の遠藤航に匹敵するほどのボール奪取能力」を持つと評価されており、ティンバーの後釜候補として具体的に名前が挙がっている。

ナイメヘン側は佐野の移籍金として約40億円を要求する可能性も報じられており、獲得には多額の投資が必要となる見込みだ。しかし、PSVとの勝点差を縮めるためには、守備的MFの安定化は不可欠であり、フェイエノールトが佐野獲得に動くかどうかが、冬の移籍市場の最大の注目点となる。

得点王上田の爆発的な得点力という光を擁しつつも、守備と中盤の不安定さという影を抱えるフェイエノールト。ファン・ペルシ監督は、この正念場を乗り越え、名門としての地位を回復できるか。日本人選手の活躍とクラブの戦略が交錯する中で、フェイエノールトの真価が今、問われている。