高市首相が踏み込んだ「存立危機事態」:台湾有事と日本の安全保障の重大な岐路
ニュース要約: 高市早苗首相は、台湾有事が日本の安全保障にとって「存立危機事態」に該当する可能性を国会で明言し、従来の曖昧戦略から転換を図った。これは、日米同盟の下で集団的自衛権を行使し、米軍と協働する可能性を示唆するものだ。政府は抑止力強化のため、小林防衛相を中心に周辺国との連携を急ぐ一方、中国の反発を受け発言の修正も行った。今後、日本は外交的慎重さと危機管理体制の抜本的強化が求められる。
台湾有事、日本の「存立危機事態」へ:高市首相発言が問う安全保障の岐路
緊迫化する台湾海峡、首相が踏み込んだ「存立危機事態」認定
2025年11月30日
東アジアの安全保障環境がかつてない緊迫度を増す中、日本政府の台湾有事に対する姿勢が明確化されつつある。特に、高市早苗首相が今月、国会答弁で「台湾有事とは、日本の安全保障にとって『存立危機事態』に該当する可能性がある」と明言したことは、従来の「戦略的あいまい性」を転換させ、国内外に大きな波紋を広げている。
「台湾有事」とは、中国が主張する「一つの中国」原則に基づき、台湾への武力侵攻を含む軍事行動を起こす事態を指す。地政学的に日本の南西諸島と密接に関わる台湾の安定は、日本のシーレーン(海上交通路)や防衛ラインに直結しており、「台湾有事は日本有事」との認識は専門家の間で定着している。
高市首相は11月7日の衆議院予算委員会で、中国が台湾に武力行使し、これに対し米国が台湾海峡に軍を派兵した場合、日本が集団的自衛権を発動し、米軍と協働する可能性を示唆した。これは、2015年に成立した安全保障関連法に基づく「存立危機事態」の枠組み内で、日本の存立が脅かされる場合に武力行使を伴う防衛行動が可能となることを改めて確認したものだ。
歴代政権との違い:明確化された協力の意思
歴代政権は、中国との関係を考慮し、台湾有事における具体的な対応について明確な言及を避けてきた。しかし、高市首相は議員時代から台湾の頼清徳総統ら民進党幹部との緊密な関係を築いており、首相就任後も台湾との外交的・政治的関係強化を継続している。
この度の発言は、日本の防衛政策における台湾有事対応の「明確化」を図るものであり、日米同盟の抑止力を高める狙いがある。
一方で、高市首相は11月26日の党首討論において、「今後は特定のケースを想定したことを国会で明言することは慎む」と発言を修正し、政府としては「従来の政府の立場と変わらない」との見解を改めて示した。これは、国際的な緊張を高めすぎないよう、明確な立場表明と外交的慎重さのバランスを取る、日本政府の「絶妙な立場」を維持しようとする意図の表れとみられる。
日米同盟と周辺国連携:小林防衛相が担う多国間協力
台湾有事の現実味が増す中、日本が果たすべき役割は日米同盟の枠組みを超えて拡大している。
小林鷹之防衛大臣は、台湾有事に備え、日米同盟の強化と並行し、周辺国との連携を積極的に進める重要性を繰り返し強調している。特にオーストラリア、インド、ASEAN諸国との安全保障協力の強化は急務であり、共同訓練や情報共有の枠組みの拡充が図られている。
小林防衛相が提唱する多角的連携は、中国の海洋進出に対抗し、インド太平洋地域の安定を維持するための不可欠な戦略である。台湾海峡の安定は、半導体産業をはじめとする重要なサプライチェーンの維持にも直結しており、経済安全保障の観点からも、周辺国との協力は日本の国益を大きく左右する。
中国の反発と外交的課題、危機管理体制の整備急務
高市首相による高市早苗 台湾有事関連の発言に対し、中国は即座に「内政干渉だ」として激しく反発した。中国は日本産水産物の禁輸措置や、自国民に対し日本への渡航自粛を促すなど、経済的・外交的な対抗措置を講じる動きを見せている。
日本政府は、安全保障上の理由から「台湾は中国の一部」という中国の主張に完全には同意せず、対話の余地を残す外交戦略を維持している。しかし、緊張緩和のためには、高圧的な態度を示す中国に対し、毅然とした態度で外交的対話を継続することが求められる。
また、国内では、党首討論でも議論されたように、インテリジェンス体制の強化、具体的には「スパイ防止法」制定に向けた議論が喫緊の課題となっている。高市首相は年内にも法案策定の検討を開始する方針を示しており、有事に備えた危機管理体制の抜本的な強化が急がれている。
台湾有事の脅威が現実化する中、日本は日米同盟を基軸としつつ、周辺国との連携を深め、外交努力を通じて地域の安定化に貢献するという、極めて困難な役割を担っている。高市政権の安全保障政策は、日本の未来を左右する重要な試金石となるだろう。
(共同通信社、日本経済新聞など各社報道を基に構成)