【テコンドー変革】2028年五輪へ向けた強化戦略:AI採点導入と武道精神の再評価
ニュース要約: 2028年ロサンゼルス五輪を見据え、テコンドー界は変革期を迎えている。若手選手の台頭と道場連携を軸とした強化戦略が進む一方、競技の公平性を高めるAI自動採点システムが本格導入された。また、健康増進や精神修養の側面が再評価され、生涯スポーツとしての裾野も拡大している。
【深層】「テコンドー」飛躍の時:2028年五輪への強化戦略と広がる裾野
—AI採点技術導入、健康・精神修養での再評価—
(2025年11月29日 日本国際テコンドー協会・強化戦略取材班)
2025年のテコンドー界は、次期ロサンゼルス五輪(2028年)を見据えた若手選手の台頭と、競技を超えた社会的な価値の再評価が同時に進む、変革の年となった。全日本選手権での競技力の安定に加え、テコンドーが持つ健康増進や精神修養の側面が改めて注目され、老若男女にわたる裾野の広がりを見せている。さらに、競技の公平性を担保するための最新技術、すなわち自動採点システムの導入も本格化し、競技環境の近代化が喫緊の課題となっている。
若手躍進と五輪への強化戦略
2025年2月に国立代々木競技場第二体育館で開催された第36回全日本テコンドー選手権大会では、西東京や神奈川、千葉といった強豪道場が団体戦を制し、成人層の競技力の安定が確認された。特に、若手の成長は著しく、7月に開催された全日本ジュニアテコンドー選手権大会では、立川道場の田中陽琉選手がMVPを獲得するなど、次世代を担う選手層の厚さが顕著となった。
国際舞台においても、希望の光が見えている。アジアカデット選手権では、大新田桜選手(中津支部)がジュニア女子−49kgで3位に入賞し、国際的なメダル獲得の可能性を示唆。また、ベテラン層では金子周平選手が世界選手権の団体トゥルで金メダルを獲得するなど、国際経験豊富な選手の活躍が続いている。
これを受け、日本代表の強化戦略は、若手の国際経験の積み重ねと、道場間の連携強化に重点が置かれている。強化指定選手制度の見直しや、全国的なジュニア強化合宿の定期開催を通じて、強豪道場の育成ノウハウを全国へ普及させる体制が急務となっている。ロサンゼルス五輪に向け、トゥル(型)とマッソギ(組手)の両面で国際基準の技術・戦術を導入し、日本独自の強みを確立することが求められる。
AIと3Dセンシングが変える競技の公平性
テコンドー競技が抱える長年の課題の一つが、判定における主観性の排除であった。しかし、近年、3Dセンシング技術とAIを組み合わせた最新の自動採点システムが実用化され、この問題に一石を投じている。
このシステムは、選手の動作を高速でスキャンし、関節の位置や技の正確さをAIが解析することで、難度点や技の成功度を自動で判定する。特に、複雑な足技が求められるテコンドーにおいて、従来の審判間の判定格差を抑制し、競技の公正性を大きく改善する効果が期待されている。技術導入の初期段階では、採点規則の曖昧な部分の明確化や、システムの精度向上といった運用面の課題も残るものの、競技の透明性を高める上で不可欠な革新として、今後の普及が注視されている。
武道精神の再評価と社会への浸透
競技スポーツとしての側面が注目されがちなテコンドーだが、近年、日本国内では武道としての価値が再評価されている。特に、現代社会におけるストレス解消や健康維持の手段として、その多面的な効果が注目を集めている。
テコンドーは、足技・手技・跳躍・回転を組み合わせた全身運動であり、基礎代謝の向上や柔軟性、俊敏性の獲得に優れている。また、「礼儀」「忍耐」「克己」といった武道精神を根幹としており、自己管理能力や精神的な強さを養う精神修養の場としても機能している。冬場の運動不足解消やダイエットを目的に、老若男女が道場を訪れるケースが増加しており、「生涯スポーツ」としての認知度が高まっている。
さらに、障がい者スポーツとしてのパラテコンドーの進展も目覚ましい。2020年東京パラリンピックで正式種目となり、日本でも阿渡健太選手らが国際舞台で挑戦を続けている。2025年には東京でデフリンピックも開催され、テコンドーはその普及と障がい者理解の啓発に大きな役割を果たしている。
競技力の向上、技術革新、そして社会貢献という三位一体で、日本のテコンドー界は新たなフェーズに突入した。2028年の大舞台に向けた強化戦略の成否は、国内の道場連携と、武道としての深い価値を社会に浸透させられるかにかかっている。