Suica・PASMOが決済市場を再編へ:「teppay」導入で上限30万円、生活決済の主役へ
ニュース要約: 交通系ICカードのSuica・PASMOは、2026年秋から新コード決済「teppay」を導入し、生活決済の主役を目指す。最大の焦点は、決済上限が2万円から30万円に大幅拡大されること。これにより高額決済やEC利用が可能となり、既存のコード決済サービスと直接対決することで、日本のキャッシュレス市場の勢力図を塗り替える。
交通系ICカード、生活決済の主役に躍進へ:Suica・PASMO、2026年「teppay」導入でコード決済市場を再編
2025年冬、モバイルSuica優位の現状に風穴 決済上限30万円への拡大で競争激化
2025年11月28日
首都圏を中心に日本の生活インフラとして確固たる地位を築く交通系ICカード、SuicaとPASMOが、次世代のモバイル決済市場の覇権を巡り、大規模な戦略転換を図っている。特にスマートフォンの普及に伴い、モバイルSuicaとモバイルPASMOの利便性競争は激化。2026年秋から順次導入が予定されている新コード決済サービス「teppay(テッペイ)」は、両カードの機能を交通機関利用の枠組みから解放し、日本のキャッシュレス市場の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。
モバイルSuicaの先行とポイント還元力の差
現在の市場において、モバイルSuicaは利用者数でPASMOを大きくリードしている。月間ユーザー数はSuicaが500万~700万に達するのに対し、PASMOは100万~200万にとどまる。この差は、JR東日本の広範なネットワークと、戦略的なポイント還元策に起因する。
Suicaは、ポイントサービスをJRE POINTに一元化することで顧客の囲い込みに成功しており、乗車ポイントは2.0%と非常に高還元だ。合計で3.5%に達するケースもあり、日常的な利用者に強いインセンティブを提供している。また、モバイルSuicaはグリーン車や新幹線の予約など、付加価値の高いサービスへの連携も容易であり、利便性で優位に立っている。
一方、パスモ陣営は、複数の交通事業者が個別にポイントサービスを提供しており、還元率の一元化や利便性の面でモバイルSuicaに一歩譲る状況にある。しかしながら、私鉄や地下鉄を中心とするPASMOは、私鉄単独の定期券購入には不可欠であり、沿線住民にとっての重要性は揺るがない。
「teppay」導入で決済上限を大幅に引き上げ
この現在の均衡を大きく変えるのが、2026年秋にモバイルSuicaに先行導入され、2027年春にはモバイルPASMOにも展開される「teppay」である。
従来の交通系ICカードが抱える最大の課題は、電子マネーの残高上限が2万円に設定されている点であった。この制約のため、高額決済やオンラインショッピングでの利用が限定的であったが、「teppay」の導入により、この上限は最大30万円にまで大幅に拡大される見込みだ。
これにより、SuicaとPASMOは、交通系ICカードの枠を超え、生活全体の決済基盤へと進化を遂げる。ユーザーは既存のアプリ内でコード決済が可能となり、新たなアプリのダウンロードや複雑な登録手続きは不要となる。さらに、ユーザー同士で残高を送付できる機能も加わり、利便性は飛躍的に向上する。
地方・ECサイトへの進出と相互連携強化
「teppay」導入のもう一つの大きな目的は、決済領域の拡大である。JR東日本と私鉄連合は、駅構内の商業施設(アトレ、グランスタ、Echika、Esolaなど)での囲い込みを強化しつつ、地方の店舗やECサイトへの対応を本格化させる。オンライン決済が可能になることで、ネットショッピング市場における存在感を高める。
また、東日本エリアでSuicaとPASMOを併用するユーザーが多い実態を踏まえ、両者のシームレスな連携強化も進む。共通プラットフォームの採用に加え、アプリ間での残高送受信を可能とすることで、相互利用の利便性を高め、経済合理性を追求する。
さらに、各地域・自治体との連携を深め、地域独自の割引やキャッシュレス還元事業に対応することで、地域密着型の決済利用を促進し、手数料収入の増加を狙う。
データ活用と今後の展望
モバイルSuicaとモバイルPASMOが生活決済基盤へと進化することで得られる、乗降データと決済データの組み合わせは、新たな収益源の創出に直結する。両社はデータ活用を通じた広告収益など、単なる決済手段に留まらないプラットフォーム化を急いでいる。
「teppay」の登場は、交通系ICカードが、PayPayや楽天ペイなどの既存コード決済サービスと直接対決する時代が到来したことを意味する。高い信頼性と、鉄道利用で培った広範な利用網を持つSuicaとパスモが、コード決済機能の追加により、日本のキャッシュレス市場の勢力図を大きく塗り替えることが期待される。(1179文字)