資生堂、株価低迷と520億円巨額赤字予想：中国リスク脱却へ構造改革の実行力

資生堂 株価 低迷の深層：巨額赤字予想が示す「中国リスク」からの脱却戦略

化粧品大手、資生堂（4911）が今、歴史的な試練の局面に立たされている。2025年11月28日現在の資生堂 株価は2,213円と低迷し、年初来安値圏での「下降持ち合い」が続く。市場の懸念は、最大の成長エンジンであった中国市場の回復遅延に起因しており、同社は2025年12月期に520億円という巨額の当期利益赤字を予想するなど、収益性の著しい悪化に直面している。

資生堂は、この危機を打破すべく、中国市場への依存度を低減し、グローバル市場での成長加速を目指す抜本的な構造改革「アクションプラン 2025-2026」を推進している。株価の回復は、この戦略の迅速かつ確実な実行にかかっている。

I. 業績悪化の深刻度：赤字転落と株価の脆弱性

現在の資生堂 株価は、市場の厳しい評価を反映している。前日比で小幅な下落（-0.25%）に留まっているものの、株価はサポートラインである2,149円に近く、数日以内にこの水準を下抜けした場合、さらなる下落圧力がかかる可能性が専門家から指摘されている。

業績面では、2025年12月期の通期予想が非常に厳しい。アナリストコンセンサスでは、当期利益がマイナス52,000百万円、1株当たり利益（EPS）も-130.15円と、大幅な赤字が避けられない見通しだ。売上高は9,650億円と一定の規模を保つものの、純利益率および営業利益率がマイナスに転じており、収益性の根幹が揺らいでいる状態にある。

市場のアナリストは、現状を鑑み「中立」評価を維持しているが、平均目標株価は2,603円前後であり、現在の水準から約17.75%の上昇余地を見込んでいる。これは、現在の株価が業績の悪化を織り込み済みであり、今後の回復戦略への期待がわずかに残っていることを示唆している。しかし、株主資本利益率（ROE）がマイナス1.73%と資本効率が低下している現状、投資家は依然として慎重な姿勢を崩していない。

II. 中国市場の再構築：現地化とKOL戦略の転換

業績低迷の主因は、中国市場、特に高価格帯ブランドの販売回復の遅延にある。これに対し、資生堂は従来のグローバル戦略を見直し、中国市場における**「現地化戦略」**を加速させている。

具体的には、マーケティングチームの一部を上海に移転し、現地の消費者が求める価値観やトレンドを迅速に把握できる体制を構築。また、中国国際輸入博覧会（CIIE）では、中国パートナー企業との共同ブランド発表や50点以上の新商品投入を行うなど、現地企業との協業によるイノベーションを今後の成長の柱に据えた。

さらに、若年層（Z世代）の攻略に向けたデジタル戦略も見直されている。従来の短期的なメガKOL（インフルエンサー）に依存する手法から転換し、ブランドの世界観を深く理解し、長期的に共創できるKOLとのパートナーシップを強化。都市や年齢層別にきめ細やかな発信を行うことで、中国の多様な消費者層への浸透を図る。

III. 「脱中国依存」を掲げたグローバル展開の強化

資生堂の新たな中期戦略「アクションプラン 2025-2026」は、中国市場の不透明感を背景に、リスク分散と成長機会の多角化を明確に打ち出している。戦略の核心は「脱中国依存」であり、日本、欧米、アジアパシフィック市場での成長加速に大規模な経営資源を投入する。

2025年から2026年にかけて、主要8ブランドに累計300億円を投じるマーケティング投資を計画。

1. 国内市場: さらなるプレゼンス向上を目指し、国内の消費者ニーズに合わせたブランド価値訴求を強化。
2. 欧米市場: グローバル統一マーケティングを推進し、ブランド認知度と収益力の向上を図る。
3. アジアパシフィック市場: 中東やインドなど、成長著しい新興市場への展開を加速させ、売上構成比の拡大を狙う。

資生堂は、組織体制も中国事業とトラベルリテール事業の再編を行い、成長とコスト効率化の両面でシナジー創出を目指す。2025年12月期第1四半期決算からは、報告セグメントも変更され、新たな体制での経営成果が問われることになる。

結論：問われる構造改革の実行力

現在の資生堂 株価は、中国市場の回復遅延という「足元の不安」と、グローバルな成長加速という「将来への期待」が複雑に交錯した結果である。

2025年12月期の赤字予想は、資生堂が構造的な変革を迫られていることを示している。今後の株価回復は、中国市場での現地化戦略が奏功し、収益性の改善につながるか、そして、300億円を投じるグローバル戦略が、計画通り日本・欧米・アジアパシフィック市場での売上構成比拡大と利益貢献を実現できるかに左右される。市場は、世界的なビューティーカンパニーとしての資生堂の真価が問われる、この重要な局面に注目し続けるだろう。（1,189文字）