賃貸不動産経営管理士試験が「過去最高難度」に：合格率2割台突入と2025年の真価

【深層】「難化」続く賃貸不動産経営管理士試験 2025年度の動向と国家資格の重み

2025年11月17日

賃貸住宅の管理・運営における専門家として、その地位を急速に高めている「賃貸不動産経営管理士」。2020年の国家資格化以降、試験の難易度は年々上昇しており、専門性を担保する資格としてその評価は高まる一方です。

特に2025年11月16日に実施された令和7年度試験では、多くの受験者から「過去最高に難しかった」との声が上がり、資格取得のハードルはさらに高まっています。この資格が持つ真価と、不動産業界における役割の変遷を追います。

激化する資格試験の現実：合格率は2割台へ

賃貸不動産経営管理士試験は、国家資格化に伴い問題数が40問から50問に増加し、「賃貸住宅管理業法」などの重要項目が追加されたことで、学習負担が大幅に増しました。

その結果は合格率に如実に現れています。令和元年度には36.8%あった合格率は、直近の令和6年度（2024年度）には24.1%と、史上最低を記録しました。これは受験者10人のうち7人以上が不合格となる計算であり、もはや「比較的簡単な資格」とは呼べないレベルに達しています。

2025年度試験についても、SNSなどの受験者アンケートでは約8割が「難化」と回答している状況です。特に、個数問題や民法の応用的な出題が受験生を悩ませた模様です。現在の合格ラインは50問中35点前後で推移しており、約7割の正答率が求められます。今後、合格率が30%台に回復することは難しいと見られており、試験運営側が資格の価値を高めるために、難易度を意図的に引き上げている可能性も指摘されています。

しかし、この難化傾向は、資格の専門性が高まり、業界内で必要とされる知識レベルが向上していることの裏返しとも言えます。必要な勉強時間は宅地建物取引士（宅建士）よりも少ない100〜200時間程度とされていますが、合格には公式テキストに基づいた体系的な知識習得が不可欠です。

法改正が後押しする「管理のプロ」の地位向上

賃貸不動産経営管理士の役割が拡大している背景には、賃貸住宅管理業法による管理の適正化があります。管理業務の質の向上は、オーナーの資産価値維持や入居者の保護に直結するため、国が専門知識を求める動きが強まっています。

直近の制度動向として最も注目すべきは、業務管理者の要件に関する動きです。現在、業務管理者は宅建士または賃貸不動産経営管理士の実質的なダブルライセンスとなっていますが、業界団体からは「業務管理者を賃貸不動産経営管理士のみに一本化すべき」との要望が強く出ています。これは、専門分野の明確化を図り、賃貸管理士の社会的認知度とプロフェッショナルとしての地位を確立するための重要な動きです。

さらに、2025年には、終身建物賃貸借の認可手続きの簡素化や、入居者死亡後の残置物処理を居住支援法人が担うことができるようになるなど、現場の負担軽減と適正化を目的とした法改正が施行されています。複雑化する法制度に対応し、適切な管理を行う上で、賃貸不動産経営管理士の存在はますます不可欠になりつつあります。2024年9月からは事務所ごとの設置義務も明確化されており、資格者の活躍フィールドは大きく広がっています。

専門性を深めるキャリアパスと年収アップの可能性

資格取得は、不動産業界における明確なキャリアアップの道筋を示します。賃貸不動産経営管理士は、単なる業務代行者ではなく、オーナーの収益を最大化し、入居率を高めるための戦略を立案するプロフェッショナルです。

資格取得後は、管理職（エリアマネージャー、支店長）への昇進が現実的になるほか、業務領域を拡張し、不動産の仕入れ、売買、資産運用コンサルティングなど、より専門性の高い分野へのキャリアチェンジも可能です。実績と経験を積めば、独立・起業という選択肢も開かれます。

特に、年収アップを目指す上で有効なのは、ダブルライセンス戦略です。マンション管理士や管理業務主任者などの関連資格を併せ持つことで、専門知識の幅を広げ、顧客やオーナーからの信頼獲得に繋がります。また、国際資格であるCPM（米国不動産経営管理士）を取得すれば、大規模プロジェクトのリーダーシップを発揮し、経営層への昇進チャンスも広がるでしょう。

難化傾向にある試験を乗り越えて資格を取得することは、賃貸住宅の需要が増し、管理の質が問われる現代において、将来的なキャリアアップや収入増加に直結する非常に魅力的な投資と言えます。賃貸管理のプロフェッショナルとして、この資格が持つ社会的価値は今後も高まり続けるに違いありません。