ONE 173 激動の結末:野杁は涙、若松・与座は栄光を掴む
ニュース要約: ONE 173東京大会で日本のトップファイターが激闘。メインの野杁正明はスーパーボンに敗れ王座統一を逃したが、若松佑弥は圧巻のTKOで初防衛に成功。さらに、与座優貴がムエタイ絶対王者のスーパーレックを破る歴史的快挙を達成し、日本の格闘技界に歓喜をもたらした。
格闘技の殿堂「ONE 173」激動の結末:野杁は涙、若松と与座は栄光を掴む
2025年11月17日
【東京発】アジア最大の格闘技団体ONEチャンピオンシップは11月16日、東京・有明アリーナで「ONE 173」を開催し、日本を代表するトップファイターたちが世界の強豪を相手に激戦を繰り広げた。特に注目されたフェザー級キックボクシング世界王座統一戦では、暫定王者の野杁正明選手(Team Vasileus)が正規王者スーパーボン選手(タイ)に挑むも、判定で涙を飲んだ。一方で、若松佑弥選手(TRIBE TOKYO MMA)は圧巻のTKOで初防衛を飾り、与座優貴選手はムエタイの絶対王者スーパーレック選手を破る歴史的快挙を達成。日本の格闘技界にとって、歓喜と悔しさが交錯する一日となった。
悲願達成ならず:野杁正明、スーパーボンの牙城崩せず
メインイベントを飾った野杁正明とスーパーボンの王座統一戦は、世界最高峰のキックボクシングの技術が凝縮された5ラウンドとなった。
今年3月に暫定王座を獲得し、キャリアの集大成として正規王者との統一戦に臨んだ野杁選手は、持ち前の前進とボディ、顔面へのパンチで接近戦を仕掛けた。しかし、スーパーボン選手は冷静だった。破壊的な左右のミドルキックと鋭い膝蹴りを的確に野杁選手の体へ打ち込み、距離を支配。野杁選手がロープ際に追い込む場面も見られたものの、スーパーボン選手は巧みなクリンチで反撃の芽を摘み、ペースを渡さなかった。
終盤、野杁コールが響き渡る中、両者フラフラになりながらも壮絶な打ち合いを見せたが、試合巧者スーパーボンが一枚上手だった。結果は判定3-0でスーパーボンの勝利。野杁選手は世界王座統一の夢を目前で阻まれた形だ。彼のキャリアを特徴づけてきた「前進して破壊する」戦術は、この日のスーパーボンの鉄壁のディフェンスと攻撃の前に、わずかに届かなかった。しかし、ONEフェザー級のトップ戦線で戦い続ける野杁選手の再起と更なる成長に、ファンは期待せずにはいられない。
日本の誇り:若松佑弥、圧巻の初防衛
野杁選手の敗北が会場に重い空気をもたらす中、日本のエースが躍動し、流れを引き戻した。ONEフライ級MMA世界タイトルマッチに出場した若松佑弥選手だ。ストロー級王者ジョシュア・パシオ選手を挑戦者に迎えたこの一戦で、若松選手は王者の貫禄を見せつけた。
試合は2ラウンド開始直後、若松選手が右ストレートでパシオ選手をキャンバスに沈める。追撃の頭部への強烈なヒザ蹴り連打でレフェリーストップを呼び込み、わずか54秒でTKO勝利。悲願の世界王座獲得から、初の防衛戦を見事にクリアした。その圧倒的な破壊力とスピードは、フライ級MMAのトップランカーとしての地位を確固たるものにしたと言えるだろう。
歴史を塗り替えた与座優貴の快挙
今大会最大のサプライズは、バンタム級キックボクシングの世界王座挑戦者決定戦で起こった。与座優貴選手は、ムエタイ界の絶対王者として知られるスーパーレック・キアトモー9選手と対戦。事前予想では不利と見られていた与座選手だったが、王者の猛攻を凌ぎ、冷静沈着なゲームメイクを展開。
結果、3人のジャッジ全員が与座選手を支持する3-0の判定勝利を収めた。ムエタイのレジェンドを文句なしで破ったこの勝利は、与座選手を一気に世界トップレベルへと押し上げ、バンタム級のタイトル挑戦への道を大きく開いた。与座選手は試合後、タイトルマッチへの強い意欲を示しており、日本の格闘技ファンは新たなスター誕生の予感に沸いている。
世界最高峰の舞台で試される日本の実力
ONEチャンピオンシップは、キックボクシング、ムエタイ、MMAの垣根を越え、真の世界最高峰を目指す格闘技のプラットフォームだ。今回のONE 173は、日本人選手たちがその厳しくも魅力的な舞台で、世界のトップと対峙し、明確な結果を残した大会となった。
野杁選手の敗北は痛恨だが、それは彼が「世界王者の壁」に挑み、その距離を測れたことを意味する。若松選手と与座選手の勝利は、日本の格闘技が世界で通用するレベルにあることを証明した。今回の経験を糧に、彼らが再び世界の頂点を目指す姿は、我々日本人にとって大きな感動と希望を与えてくれるに違いない。