【深層分析】久保建英に試練：混迷ソシエダの低迷構造とUCL突破を握る冬季補強の行方

【深層】混迷のソシエダ、久保建英の試練と冬季補強の行方 — ラ・リーガ9位の現状とUCL突破への道

2025年11月30日

2025-26シーズンのラ・リーガは中盤戦に差し掛かり、欧州の舞台で戦うレアル・ソシエダは、厳しい現実と向き合っている。直近の試合ではビルバオを3-2で破るなど、勝点を積み重ねる動きは見られるものの、13試合消化時点で9位（一部報道では14位）という順位は、昨季の11位から更なる飛躍を目指すクラブにとって満足のいくものではない。特に、チームの攻撃を牽引するはずの日本代表MF久保建英（24）が、コンディション維持に深刻な課題を抱え、その起用法を巡ってチーム内に微妙な変化が生じている。

I. 負傷明けの久保建英、試される「絶対的エース」の地位

レアル・ソシエダにとって最大の懸案事項は、久保建英のコンディションだ。9月の日本代表戦で負傷した左足首の影響が長引き、11月のビルバオ戦で公式戦4試合ぶりの復帰を果たしたものの、依然として万全の状態には遠い。今季ここまでの出場は9試合で1得点にとどまっており、久保自身も「完全にコンディションを取り戻したら、ゴールもアシストも決める。年末までに素晴らしい年にならなかったら批判してください」と完全復活を誓うが、その道のりは険しい。

さらに、久保の不在期間中にポルトガル人FWゲデスが台頭したことが、チーム内の序列に影響を与えている。セルヒオ・フランシスコ監督は、久保抜きでゲデスを積極的に起用し、ゲデスはセビージャ戦以降スタメンを外れることなく2ゴールを挙げるなど、監督の戦術に順応し成果を上げている。この結果、久保は現在、最初に投入される交代選手の立場に甘んじることが多くなっており、ソシエダにおける「絶対的エース」としての地位は試練に立たされている。

II. 戦術の迷走と中盤のクオリティー低下

ソシエダの低迷は、特定の選手のコンディション問題だけでなく、チーム構造の不安定性にも起因している。フランシスコ監督は今季開幕以来、既に27選手を起用し、同じスタメンを2試合連続で使用したことが一度もないという異例の采配を続けている。4-4-2、4-3-3、4-2-3-1など複数のフォーメーションを使い分けることで、チームの戦術的統一性が欠如し、不安定な戦いぶりに繋がっている。

特に深刻なのは、昨シーズンまでチームを支えたディフェンダーのル・ノルマンと、中盤の要であったメリーノの退団による影響だ。メリーノが担っていた中盤のクリエイティブな役割を埋められず、前線への効果的なボール供給が不安定になっている。アシストランキング上位に位置するゴメス・セルジオの活躍は光るものの、チーム全体の市場価値が久保建英の3,000万ユーロを筆頭に高水準にあるにもかかわらず、戦術的な一貫性が欠けていることが、ソシエダが中位から抜け出せない主因となっている。

III. UCLの不透明な行方と冬季補強の緊急性

ソシエダは今季、新フォーマットとなったUEFAチャンピオンズリーグ（UCL）のリーグフェーズに参加している。36クラブが8試合を戦うこの新方式において、上位8チームが直接ラウンド16に進出、9位から24位がノックアウトプレーオフに回る。現状、ソシエダのUCL突破の行方は不透明であり、決勝トーナメント進出を果たすためには、ラ・リーガでの安定した戦いぶりを取り戻し、チームの勢いを欧州の舞台に繋げることが不可欠だ。

この不安定な状況を打開するため、ソシエダは冬季移籍市場での補強が急務となっている。既にチャレタ・ツァルやゲデスといった新戦力が加わっているが、中盤のクオリティー低下を補うための即戦力獲得が求められている。チームにはまだ背番号12と25の2枠が空いており、監督の戦術にフィットし、中盤の厚みを増す選手の補強が実現するかどうかが、ソシエダの今季の命運を握る。

12月は過密日程が予想される。久保建英の完全復活と、ゲデスの継続的な活躍のバランスを図りながら、同時に中盤の底上げを実現できるか。フランシスコ監督の手腕と、クラブの経営判断が、ソシエダを上位進出へ導くための試金石となるだろう。チームが本来の力を発揮すれば、欧州カップ戦への冬の進出は十分に射程圏内にある。今後のソシエダの動向から目が離せない。