レアル・マドリード アロンソ体制の試練：負傷者続出、年末激戦を乗り切る「構造化」とは

レアル・マドリード、アロンソ新体制下の「構造化」と試練 ―― 負傷者続出の中で勝ち点32、年末の激戦を乗り越えられるか

【マドリード発：2025年11月27日 共同通信】

スペインのサッカー界を牽引する名門レアル・マドリードは、2025-26シーズン、ラ・リーガで首位を堅持し、UEFAチャンピオンズリーグ（CL）でも決勝トーナメント進出を決めるなど、順調な滑り出しを見せている。しかし、その内情は決して磐石ではない。シャビ・アロンソ新監督が掲げる新たな戦術哲学と、11月に襲った守備の主軸の負傷者続出という大きな試練に直面しており、年末から年明けにかけての重要日程を前に、チームの真価が問われている。

シャビ・アロンソ監督が追求する「効率」と柔軟性

カルロ・アンチェロッティ前監督からバトンを引き継いだシャビ・アロンソ監督は、今季、チームに「コントロール、構造化、効率」を重視する新たな戦術を植え付けている。従来のスター選手の個人能力に依存するスタイルから脱却し、より組織的で緻密なサッカーへの転換を図っている。

ラ・リーガでは13試合を終えて勝ち点32で首位に立つ（10勝2分1敗）。特に本拠地サンティアゴ・ベルナベウでは6戦全勝、20得点3失点という圧倒的な強さを誇る。しかし、アロンソ監督の戦術構築は、シーズン途中の深刻な負傷者によって大きな障害に直面している。11月、ディフェンスラインの要であるアントニオ・リュディガー、ダヴィド・アラバ、エデル・ミリトンといった主力センターバック陣に加え、守備的MFのオーレリアン・チュアメニまでもが軒並み戦線を離脱した。

これに対しアロンソ監督は、従来の4-3-3や4-2-3-1に加え、対エルチェ戦では3-4-1-2という異例の布陣を採用するなど、戦術的な柔軟性を見せている。若手DFのディーン・フイセンやアルバロ・カレラスらを起用せざるを得ない状況下で、指揮官は「戦術規律」と「チームの結束力」を維持することで、短期的な成績の乱高下を最小限に抑えようとしている。クラブ上層部もこの状況を「建設中（アンダー・コンストラクション）の正常な波」と捉え、アロンソ監督の長期的なビジョンと判断を全面的に支持している。

熾烈な国内競争とCLでの課題

Real Madridが最大の目標とするラ・リーガでは、最大のライバルであるバルセロナが勝ち点31で肉薄しており、三つ巴の激しいタイトルレースを展開している。12月には強豪との対戦が控えており、首位を維持するためには、負傷者による戦力ダウンを乗り越え、アウェイでの安定感を高める必要がある。

一方、CLでは、グループステージを首位通過したものの、パフォーマンスには波が見られた。総得点12と攻撃力は健在で、リーグ戦と合わせて**Kylian Mbappé（エムバペ）**が全公式戦で22ゴールを挙げるなど、攻撃陣の破壊力は欧州随一だ。しかし、5試合で5失点、クリーンシートが少ないという守備の脆弱性が指摘されている。特にリヴァプールに0-1で敗れた試合では、攻撃効率（xGが0.45）の低さが懸念材料として浮上した。

ラウンド16のドローでは、バルセロナ、リヴァプール、アトレティコ・マドリードといった強豪との対戦の可能性が残されており、アロンソ監督は「守備組織の改善と、攻撃の持続性が鍵になる」と語っている。経験豊富なベテランと、ジュード・ベリンガムやエドゥアルド・カマヴィンガといった若手核選手のパフォーマンスが、ノックアウトステージでの躍進を左右することになるだろう。

移籍市場の動向と来夏の編成課題

1月の移籍市場は、レアル・マドリードにとって比較的静かなものになりそうだ。獲得ターゲットとして注目されていたコモのプレーメーカー、ニコ・パスについては、移籍金10万ユーロのバイバック条項を保有しているものの、クラブは来夏までのコモでの成長を優先する方針を固めた。

むしろ焦点は、来夏を見据えたチームの最適化にある。右サイドの攻撃的ポジションには、ロドリゴ、アルダ・ギュレル、そして来夏加入予定のニコ・パスが集中しており、タレント過多の状態にある。この編成上の課題を解決するため、今季出場機会が限られているブライム・ディアスが、クラブが利益を得られる売却候補として最も有力視されている。

アロンソ監督は短期的な結果と、長期的なチーム構造の構築という二つの課題を同時に背負っている。主力不在の状況でいかに勝ち点を積み上げ、12月の激戦を乗り越えるか。そして、来夏に向けたチーム編成をどう見据えるか。Real Madridの「新時代」は、今まさに試練の時を迎えている。（了）