王将社長射殺事件、12年目の初公判:工藤会幹部が無罪主張、260億円の闇を追う
ニュース要約: 2013年の王将社長射殺事件は12年を経て初公判を迎え、工藤会系幹部・田中幸雄被告(59)が無罪を主張した。検察はタバコのDNAなど間接証拠で立証を図るが、審理は難航が予想される。事件の根底には、大東社長が解消を目指した約260億円の不適切取引があり、裁判の行方は日本の暴力団対策の試金石として注目される。
【深層追及】王将社長射殺事件、12年目の初公判:工藤会系幹部・田中幸雄被告の無罪主張と260億円の闇
(京都発、2025年11月26日 共同通信)
2013年12月に京都市山科区で発生した「餃子の王将 社長」大東隆行氏(当時72)射殺事件は、発生から約12年を経て、26日に京都地方裁判所で初公判を迎え、本格的な審理が開始された。殺人などの罪に問われているのは、特定危険指定暴力団工藤会傘下組織の幹部、田中幸雄被告(59)である。
長期にわたり未解決であった本事件は、企業の不透明な金銭取引に暴力団組織が深く関与した疑いが持たれており、日本の暴力団対策史上、極めて重要な位置づけにある。しかし、初公判では、検察側が間接証拠のみで立証に挑む一方、田中幸雄被告側は一貫して無罪を主張し、事件の全容解明は依然として難航が予想される。
異例の「裁判員裁判除外」決定
26日午後1時半、厳重な警備が敷かれた京都地裁で田中幸雄被告の初公判が開廷した。事件の重大性から裁判員裁判が想定されていたが、田中被告が工藤会系の組幹部である点、および組織的な報復の可能性を考慮し、最高裁は裁判員の安全確保を理由に、裁判官のみによる審理(裁判員裁判除外)を決定した。これは、暴力団幹部が関わる重大事件の審理において、司法の公正性と市民参加の原則が、組織犯罪の脅威によって揺さぶられている現状を象徴している。
検察側は冒頭陳述で、事件現場付近で採取されたタバコの吸い殻のDNA型が田中幸雄 工藤会幹部である被告と一致したことなど、複数の間接証拠を提示し、被告が実行犯であると断定した。さらに、犯行に使用された拳銃が25口径であり、プロの犯行であることを強調。組織的な関与があったことを示唆した。
これに対し、弁護側は徹底抗戦の構えを見せている。弁護側は、事件発生時刻に被告は京都ではなく、拠点である福岡にいた可能性が高いと主張し、「アリバイ」を最大の争点とする戦略をとった。また、検察側の間接証拠についても「立証に値しない」と強く否定し、無罪を訴えた。
動機は260億円の不適切取引
今回の王将社長射殺事件の根底には、大東氏が社長として断ち切ろうとしていた、王将フードサービスと特定の企業グループとの間で繰り返された約260億円にも上る不適切な金銭取引の存在がある。
大東隆行氏は、赤字経営からの再建を果たし、王将を外食産業の雄へと押し上げた立役者であったが、同時に、この不透明な取引を解消すべく、毅然とした態度で臨んでいた。捜査当局は、この取引によって利権を失うことを恐れた相手側が、特定危険指定暴力団である工藤会に大東氏の殺害を依頼した、組織的な犯行であると推認している。
工藤会の組織的関与は、本事件の判決を左右する最大の焦点となる。田中幸雄被告が単独で行動したのか、それとも組織的な指示、特に工藤会トップからの指示があったのかによって、事件の性質と量刑は大きく変わってくるためだ。
暴力団対策の試金石となる司法判断
今回の裁判は、2021年に福岡地裁が工藤会総裁の野村悟被告に対し、トップによる指示を間接証拠の積み重ねで認定し、死刑判決を言い渡した司法判断と並行して進められている。警察OBからは「間接証拠のみでは無罪判決もあり得る」との慎重な見解も示されており、検察側が田中幸雄被告の関与と組織的背景をどこまで立証できるかが鍵となる。
この王将社長射殺事件は、企業が反社会的勢力と結託した際の深刻なリスクを浮き彫りにした事例として、社会に大きな衝撃を与えた。王将フードサービスは事件後、第三者委員会を設置し、反社リスク管理とコンプライアンス体制の強化を徹底している。
判決は2026年10月に言い渡される予定だ。裁判官のみによる異例の審理において、司法が暴力団の組織的な圧力に屈することなく、真実をどこまで解明できるのか、その行方は日本の暴力団対策における新たな試金石として注目を集めている。