松嶋菜々子、9年半ぶり主演「おコメの女」— 国税局“ザッコク”の異色ヒロインが食と税の闇を斬る

松嶋菜々子、9年半ぶり連ドラ主演で挑む「おコメの女」が問う日本の正義と食の未来—国税局資料調査課の異色ヒロイン、米田正子とは

2025年12月3日

異色の社会派エンタメ、新春を飾る

女優の松嶋菜々子氏（52）が、2026年1月8日よりテレビ朝日系で放送される連続ドラマ「おコメの女－国税局資料調査課・雑国室－」で、9年半ぶりに同局の木曜ドラマ枠の主演を務めることが決定し、大きな話題を呼んでいる。初回は6分拡大版での放送となる。

本作は、日本の食文化の根幹である「米」と、税の公平性を追求する「国税局」という異色のテーマを組み合わせた社会派・痛快エンタメドラマだ。松嶋氏が演じる主人公は、東京国税局の資料調査課（リョウチョウ）に新設された「複雑国税事案処理室」（通称・ザッコク）を率いる米田正子（よねだ・せいこ）。彼女の使命は、法の網をくぐり抜ける悪徳脱税者を徹底的に成敗することであり、その活躍が新春の日本社会に一石を投じると期待されている。

マルサを凌駕する「ザッコク」の使命

物語の舞台となる東京国税局の資料調査課は、その圧倒的な情報収集能力と調査スキルから、強制捜査権を持つ国税局査察部（通称・マルサ）を凌ぐとも言われる精鋭部署だ。このリョウチョウの中に設けられたドラマオリジナルの部署「ザッコク」は、手を出せない厄介な事案、すなわち複雑化・国際化する脱税スキームを専門に扱う「最後の砦」として機能する。

松嶋氏演じる米田正子は、このザッコクを創設し、個性豊かなメンバーを招集。彼女の行動原理は明確で、「正しく集めて、正しく使う」という税務官としての揺るぎない正義感に基づいている。年間数億円規模の隠し所得を見つけ出すというリョウチョウの世界で、正子がどのような手法で巨大な不正に立ち向かうのかが、本ドラマの最大の焦点となる。

「米」が象徴する日本の食文化と正義

「おコメの女」というタイトル、そして主人公が「三度のメシより米が好き」という設定は、単なる職務ドラマの枠を超え、日本の根幹的な問題に切り込む社会派ドラマとしての側面を強く示唆している。

米田正子は、職場に特注のキッチンと釜を持ち込み、自ら米を炊き上げるほどの無類の米好きだ。この描写は、彼女の個性としてだけでなく、「米」＝日本の食文化と農業への深いリスペクトを象徴している。

現代の日本社会は、少子高齢化や後継者不足、食料自給率の低下など、農業や食文化の未来に関わる多くの課題に直面している。ドラマは、税務調査を通じて、農業法人や食品生産に関わる経済活動の裏側に潜む不正を暴きながらも、一生懸命に努力する生産者や、食を支える人々への敬意を忘れない。正子の「正しく集めて、正しく使う」という信条は、税の世界だけでなく、日本の食料生産が公正に評価され、報われるべき社会の実現を目指すという、より大きなメッセージを内包している。

松嶋菜々子の現在地と再評価の波

松嶋菜々子氏のテレビ朝日系連ドラ主演復帰は、近年の彼女のキャリアにおける再評価の波と連動している。特に、2025年に主演を務めたNHK連続テレビ小説『あんぱん』での、深みのある母親像・登美子役は、視聴者に強い共感を呼び、彼女の演技力の幅と深さを改めて証明した。

今回の米田正子役は、過去の華麗なイメージから一転、ブツブツと独り言を呟く癖を持つなど、内面に複雑さを抱えたプロフェッショナル像であり、松嶋氏の新たな境地への挑戦となる。松嶋氏は制作発表において、「台本を読んでいると、どんどん《コメ》への興味が湧いていきました。いろんな意味で楽しみながら取り組めそう」と意欲を語っている。彼女の持つ知性と、社会の不公平を許さない強い眼差しは、正子が体現する「正義」に説得力を与えるだろう。

本作は、脱税という現代社会の闇に切り込みながら、日本の食料生産と農業の未来にも視線を送るハイブリッドな社会派ドラマとして、高い関心を集めている。テレビ放送に加えて、TVer（ティーバー）やTELASA（テラサ）での配信も予定されており、幅広い層への波及効果が期待される。「おコメの女」が、私たちに何を問いかけるのか、その展開に注目が集まる。