マイナカード普及率8割到達も利用率低迷、迫る「2025年問題」と医療DX推進の壁
ニュース要約: マイナンバーカードの普及率は約8割に達したが、マイナ保険証の利用率は28.65%と低迷。誤登録や情報漏洩トラブルが国民の懸念を招いている。2026年3月末の保険証原則廃止を控え、2025年度に集中する有効期限更新(2025年問題)への対策と、医療DX推進に向けた信頼回復が喫緊の課題だ。
マイナンバーカード、普及率8割迫るも「2025年問題」が焦点に:マイナ保険証のトラブルと医療DX推進の行方
【東京】 デジタル社会の基盤として政府が推進するマイナンバーカードは、2025年10月末時点で交付枚数が9,947万枚に達し、人口比で約79.9%が保有するに至った。マイナポイント事業や、来たる2026年3月末の従来の健康保険証の原則廃止方針を背景に普及が加速する一方で、情報漏洩や誤登録といったトラブルが相次いで報告されており、国民の間に依然としてセキュリティへの懸念が根強く残っている。特に、マイナ保険証を巡る運用上の課題と、来年度に集中する有効期限更新(2025年問題)への対応が喫緊の課題として浮上している。
普及加速の陰で利用率に課題、広がる利用範囲
マイナンバーカードの普及は、運転免許証の保有者数(約8,200万人)を上回り、公的な本人確認書類の主流の地位を確立しつつある。2025年3月からの「マイナ免許証」スタートや、10月からの「マイナ救急」全国展開など、その利用範囲は急速に拡大している。
しかし、普及率の高さとは裏腹に、実際の利用率には大きなギャップが見られる。マイナ保険証の利用登録率は85%を超えているものの、実際の利用率は2025年4月時点で全国平均28.65%と低調だ。医療機関別では病院が約45%と高い一方、診療所は約25〜30%にとどまり、地域や施設種別による対応のばらつきが顕著になっている。
医療DXの推進と診療報酬改定の連動
政府は、マイナ保険証への一本化を通じて、レセプト情報や電子カルテ情報を共有し、医療の質と効率を高める「医療DX」の実現を目指している。医療機関側にとっては、オンラインでの資格確認により受付作業の効率化やヒューマンエラーの防止が期待される。
その一方で、医療機関にとって利用率の低さは経営上のリスクとなりつつある。2026年度診療報酬改定では、マイナ保険証の利用率が実績要件として設定されており、基準(2026年3月〜5月実績で27%)を下回ると「医療DX推進体制整備加算」の点数が下がり、収入減につながるためだ。医療現場では、利用率向上のための患者への働きかけが急務となっている。従来の健康保険証は2026年3月末まで利用可能とする経過措置が設けられているが、この猶予期間をどう活用し、スムーズな移行を実現するかが問われている。
誤登録多発と多層的セキュリティ対策
マイナンバーカードの運用を巡っては、2023年度だけで1万2千件を超える個人情報漏洩トラブルが報告されており、特にマイナ保険証においても別人の情報が登録される誤登録事案が約7,300件発生するなど、管理不備による懸念は払拭されていない。
これに対し、政府はセキュリティ強化策を多層的に講じている。具体的には、顔認証や暗証番号による厳格な本人確認の徹底、ICチップの偽造防止機能、不正読み取り時にチップが自動破損する仕組みの導入などが挙げられる。また、ICチップには必要最小限の情報しか格納されておらず、税や年金などの高度なプライバシー情報は分散管理されている。利用者は暗証番号の厳重な管理や、フィッシング詐欺への警戒を怠らないことが重要だ。
2025年問題:迫る有効期限更新の波
マイナンバーカード普及のピークが2020年以降であったため、2025年度にはマイナポイント事業で発行されたカードを中心に、署名用電子証明書の更新が必要となるカードが1,500万枚を超えると見込まれている。これは、自治体窓口の混雑や更新忘れによるマイナ保険証の利用停止リスクを招く「2025年問題」として懸念されている。
マイナンバーカードと電子証明書の有効期限がそれぞれ存在することを認知している国民は半数以下にとどまっており、行政側はデジタル機器の操作に不慣れな高齢者層を含め、丁寧な情報提供と支援体制の強化が不可欠となる。
政府は、マイナンバーカードを基本とするデジタル社会への移行により、保険証発行コストなど年間約100億円の行政コスト削減効果を見込む。国民の利便性向上と行政効率化の両立を目指すには、トラブルの再発防止と、国民の信頼回復に向けた継続的な取り組みが求められている。