三菱電機、「第二の創業期」で収益構造改革:FA再構築とSiC戦略に3.4兆円投資
ニュース要約: 品質不正からの再生を目指す三菱電機は、「第二の創業期」として収益構造改革を加速。主力のFA事業を「質」重視へ転換し、脱炭素化の鍵となるSiCパワー半導体戦略に集中投資する。GX・DXに3.4兆円を投じ、組織風土改革と両輪で持続的な高収益体質への転換を図る。
三菱電機、「第二の創業期」へ舵:FA再構築とSiC戦略で収益力強化
— 3.4兆円成長投資、GX・DXを両軸にグローバル競争に挑む —
(2025年11月25日 日本経済新聞/共同通信社)
品質不正問題からの再生を目指す三菱電機は、組織風土の抜本的改革を進める一方で、技術面では次世代パワー半導体とGX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)を成長の核に据え、「第二の創業期」とも呼べる大変革期を迎えている。2025年3月期決算では、売上高5兆5217億円、純利益3240億円と増収増益を達成し、2026年3月期も純利益3400億円を見込むなど、全社的には堅調な利益基調を維持している。しかし、主力のFA(ファクトリーオートメーション)システム事業が市場の調整局面と中国勢の台頭により減収減益となる中、同社は構造改革と先端技術投資を加速させ、持続的な高収益体質への転換を図っている。
FA事業は「量」から「質」へ転換、収益性改善を急ぐ
三菱電機の最新の財務状況を見ると、インフラやライフ分野が好調を維持したものの、FA事業は売上高7256億円と前年同期比で約400億円の減少、営業利益も大幅な減益となった。背景には、世界的な設備投資の抑制や、特に汎用製品における市場のコモディティ化(一般化)がある。
これに対し、同社はFA事業を持続的な重点成長事業と位置づけ、戦略を「量」の追求から「質」の向上へと大きくシフトさせている。2026年3月期見通しでは、売上高は微減ながらも、営業利益率8%以上(将来的には9%超)を目標に掲げ、構造改革による収益性改善を強力に推進する方針だ。柔軟でサステナブルなものづくり支援を掲げ、高付加価値なソリューション提供や新技術の投入を通じて、競争激化に対応する構えである。
次世代半導体へ集中投資、カーボンニュートラルに貢献
三菱電機が将来の成長市場として最も注力しているのが、脱炭素化の鍵を握るパワー半導体分野である。同社は、省エネ化や高耐圧化に寄与する**SiC(炭化ケイ素)および酸化ガリウム(Ga2O3)**を用いた次世代デバイスの研究開発と製品化を積極的に進めている。
特に生産能力増強への投資は大規模だ。2024年9月には福山工場で12インチSiウェハを用いたパワー半導体チップの生産を開始し、熊本県泗水地区の新工場では米Coherent社と共同で8インチSiC基板の開発・安定供給体制を強化している。これにより、自動車や再生可能エネルギー、高電圧直流送電(HVDC)といった成長市場向けの高信頼性モジュール供給体制を確立し、グローバル競争力を高める狙いだ。中国勢の台頭により厳しい競争環境にある中、技術優位性と安定供給体制の確立は、同社の喫緊の課題となっている。
3.4兆円規模の成長投資、GXとDXを併走
中期経営計画において、三菱電機は成長投資として3.1兆円から3.4兆円規模の資金配分を決定し、GXとDXを経営戦略の双璧としている。これは、既存事業の強化だけでなく、企業体質そのものを「循環型デジタル・エンジニアリング企業」へと変革するための基盤投資である。
DX推進のため、同社は通常のIT投資に加え、業務DXに1000億円超を投じる計画だ。組織面でも「デジタルイノベーション事業本部」を新設し、子会社を統合した「三菱電機デジタル」が中核となって、事業横断的な業務最適化とデータの一元化を進めている。
また、グローバルな最新技術の獲得を加速するため、VCファンド投資枠を150億円に拡大し、ハイパースケーラーとの協業も推進。製造業として培ったDXノウハウを事業として展開し、新たな収益源の創出を目指す。エネルギーマネジメントシステムやスマートグリッド関連技術の強化は、脱炭素化という巨大なメガトレンドに乗るための合理的な戦略といえる。
品質不正からの再生、組織風土改革の継続
三菱電機にとって、技術と財務の変革と並行して最も重要なのが、過去の品質不正問題からの信頼回復である。同社は「品質風土改革」「組織風土改革」「ガバナンス改革」の三つの柱を掲げ、再発防止策を推進している。
特に組織風土改革においては、経営層と現場の双方向コミュニケーションの確立、社内有志による変革チーム「チーム創生」の活動などを通じて、「風通しの良い職場」の醸成に注力している。ガバナンス面では、社外取締役が過半数を占める取締役会へと改革し、内部統制システムの検証・強化を進めた。
品質不正の根本原因とされた、コンプライアンス意識の欠如や組織風土の問題を解決するには、単なる形式的な対策ではなく、「あり方」の変革を伴う深い組織改革が求められる。不正発覚から3年半が経過した現在も、同社は継続的な変革の必要性を認識し、グループ全体で実効的な再発防止体制の確立に力を注いでいる。
三菱電機が真のグローバル競争力を回復し、100年企業として持続的な成長を遂げるためには、先端技術への集中投資と、組織の根幹を変える風土改革の「両輪」を弛みなく回し続けることが不可欠である。