JX金属 株価が揺れる:AI需要で好決算・上方修正も、格下げで短期調整の背景
ニュース要約: 非鉄金属大手のJX金属は、AIサーバー向け材料の需要拡大で好決算を達成し、通期予想を上方修正した。しかし、「割安感解消」を理由とする大手証券の投資判断格下げを受け、株価は急反落し短期調整局面にある。市場は、AI成長性を見据えつつ、現在の株価水準の妥当性を慎重に見極めている。
JX金属 株価、好決算と格下げの狭間で揺れる AI需要が牽引も「割安感解消」で警戒感
非鉄金属大手のJX金属(5016)の株価が、2025年11月後半にかけて激しい値動きを見せている。AIサーバー関連の需要拡大を背景に中間決算は大幅な増収増益を達成し、通期業績予想も上方修正されたが、直後に大手証券会社が投資判断を引き下げたことで、株価は一時的に大きく反落した。好材料と売り圧力が拮抗する中、市場は同社の成長性と現在の株価水準のバランスを慎重に見極める局面に立たされている。(2025年12月1日 日本経済新聞 企業財務チーム)
好業績を打ち消した市場の警戒心
JX金属の株価は、2025年11月28日に前日比で約5.36%下落するなど、直近で大幅な調整を経験した。この背景には、同社の堅調な業績発表と、その直後に出された野村證券の投資判断の格下げが深く関わっている。
野村證券は最新のレポートで、同社の目標株価を従来の1,320円から1,800円に大幅に引き上げた。これは、AI関連の需要増加が収益に与えるポジティブな影響を評価したものだ。しかし同時に、投資判断を「バイ(買い)」から「ニュートラル(中立)」へと格下げした。
この判断の根拠は、過去3ヶ月間でJX金属の株価が約32%も急騰し、市場における「割安感」が解消された点にある。業績の将来性は評価するものの、短期的な株価の過熱感を警戒し、一時的な調整を促す形となった。市場は、この証券会社の判断を重く受け止め、投資家による短期的な利益確定売りが集中し、出来高を伴う下落につながったとみられる。
AIサーバー向け材料が業績の柱に
市場の短期的な警戒感とは裏腹に、同社のファンダメンタルズは極めて強固だ。2026年3月期の中間決算(2025年4月~9月)では、売上高が前年同期比17.6%増の3,964億円、営業利益が2.8%増の700億円を計上した。
この好調の最大の要因は、世界的なAIブームに対応する半導体・情報通信材料の需要拡大にある。特に、AIサーバー関連製品向けの高性能な非鉄金属材料が業績を力強く牽引している。この勢いを受け、同社は通期業績予想を上方修正しており、アナリストコンセンサス(平均予想)では、純利益が会社予想(約790億円)を上回る約886億円に達するとの見方も出ている。
証券アナリストは、AIサーバー関連製品の需要が今後も持続的に伸びることに加え、製品の価格改定による収益性の改善が、さらなる業績上振れの鍵になると指摘している。この収益性向上が実現すれば、現在の株価水準に対する再評価が進み、再び上昇基調に戻る可能性が高い。
目標株価のコンセンサスは1,850円台へ
直近の株価反落にもかかわらず、市場全体のJX金属 株価に対する評価は依然として前向きだ。2025年11月末時点のアナリスト平均目標株価は約1,852円となっており、直近1週間で目標水準が引き上げられている傾向にある。これは、好決算発表を受け、多くの証券会社が業績見通しを上方修正したためだ。
最高予測では2,500円を掲げる声もあり、市場はAI関連需要の伸びを織り込みつつある。理論株価の試算では2,000円超えの可能性も示唆されており、現在の1,700円台から見て、約10%程度の上昇余地があると評価されている。
同社の収益は、銅やレアメタルといった国際商品市況の変動にも大きく左右される。AI関連製品の需要増加に伴い、これらの基礎材料の価格が堅調に推移すれば、非鉄金属部門の収益はさらに押し上げられる。
今後の課題:長期成長とESGへの対応
JX金属 株価が次のステージに進むためには、短期的なAI需要の波に乗るだけでなく、非鉄金属リサイクル事業や脱炭素化社会への貢献といった中長期的な成長戦略の具体化が求められる。
現在は短期的な利益確定売りによる調整局面にあるが、投資家は、上方修正された業績予想の進捗、特に高付加価値製品の価格転嫁能力と、世界的な銅・レアメタル市場の動向を注視する必要がある。AI技術の進化が続く限り、同社の高機能材料への需要は底堅く、短期調整を経て再び成長軌道に乗ることが期待されている。(了)