「台湾有事」で集団的自衛権示唆:高市首相発言が日中関係と東アジア安保にもたらす深刻な波紋
ニュース要約: 高市首相が「台湾有事」の際に集団的自衛権を行使する可能性を示唆し、国内外に深刻な波紋を広げている。この「存立危機事態」解釈は、戦後日本の戦略的曖昧さを破り、中国の猛反発(経済・外交圧力)を招いた。日中関係の政治的基盤が揺らぎ、東アジアの安全保障環境に新たな不確実性をもたらす重大な岐路となっている。
高市首相「台湾有事」発言の波紋:集団的自衛権行使示唆、中日関係の基盤揺るがす
【東京発 2025年11月27日 共同】
高市早苗首相が今月7日の衆議院予算委員会で、台湾を巡る紛争、いわゆる「台湾有事」が発生した場合、それは日本国の「存立危機事態」に該当し、集団的自衛権を行使する可能性を示唆した発言が、国内外に深刻な波紋を広げている。この発言は、戦後日本の歴代政権が台湾問題に関して維持してきた「戦略的曖昧さ」を打破するものとして、中国との外交摩擦を決定的に激化させ、東アジア地域の安全保障環境に新たな不確実性をもたらしている。
「存立危機事態」の解釈と国内の議論
高市首相は、中国が台湾に対し武力を行使し、それが日本の存立を脅かすことが明白な場合に限り、自衛隊が行動する可能性に言及した。これは、2015年に成立した安全保障関連法に基づき、日本が直接攻撃を受けていない状況でも限定的に集団的自衛権を行使できるという解釈を踏まえたものだ。
しかし、この「存立危機事態」の判断基準については、首相自身が「総合的に判断する」と述べるに留まり、明確な認定条件は示されていない。軍事評論家の小西誠氏は、この発言が「中国への事実上の戦争信号」に等しいと警告し、曖昧な判断基準が自衛隊の武力介入を容易にする危険性を指摘する。
国内では、高市首相の強硬な姿勢は、故安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」という路線を継承するものとして、保守層からの強力な支持を得ている。現に、高市内閣の支持率は高水準を維持しており、地政学的な緊張の高まりの中で、安全保障強化を望む有権者の意向を反映しているとみられる。
一方で、野党や一部の識者からは、この発言の軽率さが厳しく批判されている。社民党などは、現行の安保法制の解釈を逸脱し、日本が望まない戦争に巻き込まれるリスクを高めると指摘。また、「存立危機事態」という専門的な言葉の難解さから、多くの国民が自衛隊の武力介入の可能性という問題の深刻さを十分認識していないとの懸念も示されている。
中国の猛反発と外交の停滞
高市首相の言明に対し、中国政府は「内政への粗暴な干渉」として強い憤慨と断固たる反対を表明した。中国共産党機関紙『人民日報』は、署名入り評論記事で、高市氏の発言が「一つの中国」原則に対する背信行為であり、第二次世界大戦後の国際秩序への公然たる挑戦であると糾弾した。
中国は直ちに外交ルートを通じて抗議し、発言の撤回を要求した他、対抗措置として、日本からの水産物輸入再開交渉の停止、一部の民間交流や文化製品の輸入取り消し・延期、さらには国民への訪日旅行・留学警示の発令など、経済的・人的な圧力を強めている。
高市政権は、親台派議員が内閣や自民党の要職を占めるなど、親台色が濃厚な陣容となっており、従来の対中関係維持のためのコミュニケーションチャンネルが弱体化している。シンガポールの『聯合早報』が指摘するように、高市氏の発言は、中日関係の政治的基盤である1972年の「日中共同声明」や2008年の「互いに協力のパートナーとなり、互いに脅威とならない」という合意を深刻に毀損しており、地域の平和と安定に不確実性を増す結果となっている。
経済安全保障と「準軍事同盟」構想
高市首相が台湾に対して友好的な姿勢を示す背景には、単なるイデオロギーだけでなく、日本の経済安全保障上の切実な理由がある。高市氏は、自民党総裁就任以前から「台湾有事は日本有事」の立場を堅持し、頻繁な訪台や台湾のCPTPP参加支持を通じて、日台間の高層交流と安全保障協力を推進してきた。
特に、台湾の半導体産業やハイテク分野における協力強化は、日本のサプライチェーンの強靭化に不可欠と見なされている。高市氏は、自由民主主義国家間で「準軍事同盟」を形成し、相互に安全を保障する構想を掲げており、これは日台間の安全保障協力の深化を強く意識したものだ。
しかし、台湾社会においても、高市氏の強硬な安全保障発言に対し、与党・民進党当局が迎合する姿勢が、過去の植民地支配の歴史的経緯から「軍国主義の復活」を警戒する声や、台湾が日本の安全保障政策の犠牲になることへの懸念を生んでいる。
今後の展望:対中関係修復の道筋
高市首相の「存立危機事態」発言は、日本が東アジアの安全保障において、従来の受動的な立場から、より能動的かつ介入的な立場へ移行しつつあることを明確に示した。
今後、中日関係が危機的な状況を回避できるかどうかは、高市政権が、国内の保守層の支持と、対外的な緊張緩和という二律背反的な課題をいかにバランスさせるかにかかっている。日本は、国際的な公約である「一つの中国」原則に立ち返り、中国との間の対話チャンネルを再構築しなければ、地域の安定と日本の国益を大きく損なうリスクに直面することになるだろう。高市政権の今後の行動は、日本の国運だけでなく、東アジアの平和の行方を左右する重要な岐路となる。