2025年「流行語大賞」候補発表：「ミャクミャク」「ラブブ」が映す、細分化する日本の世相

「流行語大賞」を巡る熱狂と2025年の世相――「ミャクミャク」「ラブブ」が映す時代の断片

12月1日発表迫る、多様化する日本の流行文化

2025年11月28日。年の瀬が近づく中、「新語・流行語大賞」の最終候補30語が発表され、12月1日の大賞決定を前に、日本社会の関心は最高潮に達している。今年のノミネート語は、かつての「国民的流行」が薄れ、インターネットやSNSを基盤とした文化の細分化が色濃く反映された結果となった。有力候補とされる「ミャクミャク」、「ラブブ」、「リカバリーウェア」などは、2025年の社会が持つ多層的な側面を象徴している。

ノミネートされた30語を分析すると、世相は大きく三つの潮流に分けられる。一つは、社会的な関心や政治・経済の動向を反映した「物価高」や「トランプ関税」、「フリーランス保護法」といった言葉。二つ目は、健康志向や趣味の細分化を示す「リカバリーウェア」や「ぬい活」、「おてつたび」。そして三つ目が、SNSやサブカルチャーから爆発的に広まった「ミャクミャク」「ラブブ」「平成女児」「エッホエッホ」といったポップカルチャー的な現象である。

ポップカルチャーが牽引する新たな流行の形

特に注目を集めるのは、SNSや若者文化に根差したキーワード群だ。

大阪・関西万博の公式キャラクターである「ミャクミャク」は、そのユニークなデザインから国民的な認知度を獲得し、ファッションやグッズ展開を通じて文化的な波及力を見せつけた。関係者からは「万博の盛り上がりに貢献できた」との喜びの声も上がっており、大賞受賞の有力候補と目されている。

また、海外発のキャラクターが日本で大流行する現象も顕著だ。香港出身のデザイナーが生んだキャラクター「ラブブ」は、K-POPアイドルが紹介したことをきっかけに世界的にブレイクし、特にZARAとのコラボレーションが若者層の熱狂を呼んだ。「ラブブ」の流行は、国境を越えたインフルエンサーの影響力と、グローバルなファッション産業が結びついた現代の消費行動を象徴している。

さらに、特定の世代の「懐古」と「再構築」を示す「平成女児」も、興味深いノミネート語である。これは、2000年代前半に小中学生だった世代が、当時のファッションやキャラクター文化を再評価し、SNS上で楽しむ動きを指す。この動きは、現代の若者が「癒し」を求め、ドールやぬいぐるみをカスタマイズし、活動を共にする「ぬい活」のブームとも連動しており、デジタル社会における人間味あふれる感情の共存を示唆している。

健康志向とデジタル化の進展

一方で、実生活に根差したキーワードも存在感を放っている。「リカバリーウェア」は、健康意識の高まりと、疲労回復へのニーズがファッション分野にまで浸透した結果であり、現代社会のストレスと向き合う人々の姿を映し出している。

また、今回のノミネートには含まれなかったものの、2025年の世相を語る上で欠かせないのが「AI技術の急速な社会浸透」だ。別の調査では「AI〇〇」といった生成AI関連の言葉がトレンドの中心に位置付けられており、クリエイターや視聴者の前提を変革した。伝統的な流行語大賞の選考に際しても、SNSやネット由来の言葉、例えばYouTubeやTikTokで子どもたちを中心に爆発的に広まったミーム「エッホエッホ」のような、デジタル空間での拡散力が高い言葉が、世相を色濃く反映している。

興味の細分化と「オールドメディア」の皮肉

今年のノミネート傾向で特に議論を呼んだのが、「国民的流行語」の不在と、それに伴う「興味の細分化」である。かつては野球関連の言葉が常連であったが、今年は完全にノミネートから姿を消した。これは、情報源が多様化し、国民全体で共有される共通認識が薄れている現実を物語っている。

ノミネート30語の中に「オールドメディア」という言葉が含まれたことも、時代の変化を象徴する皮肉な現象だ。これは、旧来のマスメディアが、デジタルネイティブ世代からどのように見られているかを示す言葉であり、選考委員の中からも「選出の是非」について疑問の声が上がっているという。

2025年の「新語・流行語大賞」は、単なる言葉のランキングではない。それは、グローバルなポップカルチャー、健康志向、そしてデジタルトランスフォーメーションが同時に進行する日本の多層的な文化構造を映し出す鏡である。12月1日の大賞発表では、「ミャクミャク」や「ラブブ」といったポップな言葉が、社会の厳しい現実を反映した「物価高」などのキーワードを抑え、栄冠を勝ち取るのか。その結果と、選考委員会がどのような理由で大賞を選び、2025年の世相を総括するのかに、大きな注目が集まっている。