北陸新幹線延伸「京都市内ルート」が最大の壁:経済効果の裏で難航する2050年代開業への道
ニュース要約: 北陸新幹線敦賀―新大阪間の延伸計画は、京都市内での地下水影響懸念からルート選定が難航し、工期が25年以上、開業が2050年代となる見通しだ。一方で、金沢―敦賀間の開業効果は福井・石川両県の観光客数を過去最高に押し上げており、経済効果と建設遅延という二律背反の課題に直面している。
北陸新幹線、延伸計画の正念場:難航する都市部ルート選定と顕在化する地域経済効果
【東京】 北陸新幹線の延伸区間、敦賀―新大阪間の整備計画が正念場を迎えている。2024年春の金沢―敦賀間開業が福井・石川両県にもたらした経済効果は絶大だが、残る区間の着工は遅れが常態化しており、特に京都市内でのルート選定が最大の焦点となっている。国土交通省は2026年度予算の概算要求においても、建設費を金額を示さない「事項要求」とする方針を固めており、具体的な着工時期は依然として不透明な状況だ。
難航する「小浜・京都ルート」 地下水影響の懸念
北陸新幹線敦賀以西の延伸ルートは、2016年に与党プロジェクトチーム(PT)によって「小浜・京都ルート」が最適とされ、敦賀、東小浜、京都、京田辺(松井山手)を経て新大阪へ至る計画が決定している。しかし、計画の実現に向けた最大の壁は、京都市内を南北に地下縦貫する区間の調整にある。
国交省は2024年12月の与党PTヒアリングを経て、当初示された3案から「南北案」と「桂川案」の2案に絞り込みを進めた。しかし、京都市内での地下開発は、地元から地下水への影響や、歴史的遺産への懸念が強く表明されており、議論は停滞している。この地元調整の遅れが、延伸計画全体の大きな課題となっている。
工期の長期化も懸念材料だ。最新の試算では、敦賀―新大阪間の工期は25年以上を要し、調査開始後すぐに事業着手できたとしても、開業は2050年代になる見通しが示されている。こうした状況を受け、一部自治体からは、工期短縮と費用抑制の観点から、敦賀から滋賀県米原で東海道新幹線に接続する「米原ルート」を推す声も再燃している。だが、福井県、滋賀県、JR西日本はいずれも、既に決定している小浜・京都ルートを堅持する姿勢を崩しておらず、2026年度中の認可・着工に向け、沿線自治体やJRの同意を含む五つの条件をクリアできるか、正念場が続く。
一方で、建設発生土の受け入れについては、福井県杉本知事が敦賀港鞠山南地区での受け入れに前向きな姿勢を示すなど、協力体制も一部で進展が見られる。
開業効果は歴然、観光客数が過去最高に
延伸計画が難航する一方、既に開業した区間がもたらす経済効果は顕著だ。北陸新幹線の金沢―敦賀間延伸開業から約1年半が経過し、福井県と石川県では観光客数の大幅な増加と地域経済の活性化が確認されている。
特に福井県では、2024年の観光客数が前年比17.6%増の2069万人と過去最高を記録し、観光消費額も同23.5%増の1513億円に達した。特筆すべきは、関東圏からの観光客が41.8%増加した点であり、新幹線効果が遠方からの集客に決定的な役割を果たしていることが裏付けられた。宿泊客数も増加し、消費単価も過去最高水準を維持している。敦賀駅周辺や嶺南地域への入込み数も伸び、飲食店、ホテル、温泉旅館などの利用が好調だ。
石川県においても、新幹線開業後に観光入り込み客数は県外からの増加が顕著であり、特に首都圏からの訪問者が増えている。地域経済の活性化は、地域産品の注文増加など広範な分野に波及している。
冬季の安定輸送と並行在来線の課題
北陸新幹線は、これから迎える冬季の安定輸送も大きな課題となる。年末年始の帰省ラッシュやイベント需要に対応するため、「かがやき」「はくたか」「あさま」「つるぎ」など多数の臨時列車が設定されるが、日本海側特有の大雪リスクへの対策が不可欠だ。
JR各社は、線路を覆うスノーシェルターや、雪の融解を促す技術、除雪車両の重点配置など、地域特性に応じた多様な積雪対策を導入し、安全・安定輸送の確保を最優先としている。しかし、年末年始は天候急変の恐れが高く、特に北陸周辺の山沿いでは記録的な大雪となる可能性も予測されており、運行遅延や運休への備えが求められている。
また、新幹線延伸の裏側で、経営分離された並行在来線(例:ハピラインふくいなど)の経営基盤の弱体化が深刻化している。利用者減少と運賃収入の落ち込みにより、多くの並行在来線で赤字拡大が懸念されており、地域住民の足として重要な役割を担うこれらの路線をいかに維持していくかが、沿線自治体の喫緊の課題となっている。貨物調整金制度の安定化や、経費合理化、そして地域一体となった利用促進策の強化が、並行在来線の健全化には不可欠である。
北陸新幹線は、地域経済の起爆剤として期待される一方で、延伸ルートの合意形成、長期にわたる工期の確保、そして地域交通網の維持という多岐にわたる課題を抱えながら、未来へのレールを敷き進めている。(了)