仏発「シトロエン・アミ」が問う日本の未来:免許不要EVと法規制の壁
ニュース要約: フランス発の超小型EV「シトロエン・アミ」が、その経済性と免許不要(欧州一部)の特性で欧州の都市移動に変革をもたらしている。若者や高齢者の移動手段として期待されるアミの日本導入は、社会課題解決の鍵となる一方、日本の「超小型モビリティ」法規制や安全基準への適合が大きな障壁となっている。日本のモビリティの未来を問う。
【特集】仏発「シトロエン・アミ」が問う日本のモビリティの未来:免許不要EV、法規制の壁と都市型移動の変革
フランスの自動車メーカー、シトロエンが世に送り出した超小型電動車(EV)「シトロエン・アミ(Citroën Ami)」が、欧州の都市部で新たな移動手段として急速に市民権を得ている。最高速度45km/h、航続距離約70kmというスペックを持つ2人乗りのシティコミューターは、特に若年層やシニア層から熱狂的な支持を集めている。これは、単なる経済的な移動手段に留まらず、免許制度や都市生活のあり方に変革をもたらす可能性を秘めているため、日本市場への導入可能性とその課題について、専門家の間で議論が高まっている。
1. 欧州を席巻する超小型EVの革新性
シトロエン・アミの最大の魅力は、その革新的なデザインと極めて高い経済性にある。
欧州における販売価格は約100万円から160万円前後と手頃であり、都市のセカンドカーとしての需要が高い。さらに、月額リース料金が19.99ユーロ(約2,400円)程度から利用可能という低コスト構造は、特に若年層の利用を促している。維持費についても、自動車税や保険料が低く抑えられ、ランニングコストはガソリン車と比較して圧倒的に低い。
デザイン面では、前後対称、左右対称の部品を多用することで生産コストを大幅に削減している点が特筆される。運転席と助手席でドアのヒンジが逆向きになっている設計は、コスト効率と個性を両立させたシトロエンの哲学を体現している。
また、遊び心溢れる特別仕様車「My Ami Buggy」は、2022年の限定販売でわずか17分28秒で完売するなど、ポップカルチャー的な支持も集め、2025年にはカタログモデルとしてラインナップに追加されるなど、そのデザイン性の高さが市場を牽引している。
2. 若年層とシニア層の移動を支える「免許不要」のインパクト
欧州の一部地域では、シトロエン・アミは14歳から免許不要で運転可能な「ヴォワチュール・サン・ペルミ」に該当する。この特性が、移動の自由度を大幅に高めており、フランスやベルギーでは、TikTok世代と呼ばれる若年層が、街乗りや短距離移動の足として活用し、新しいライフスタイルを確立している。
他方、高齢者にとっても、公共交通機関が不便な地域での通院や買い物をはじめとする日常の近距離移動手段として、そのコンパクトさと低速走行(最高速度45km/h)による安全性が評価されている。
これは、日本の社会が直面する「若者の自動車離れ」や「高齢者の移動手段不足」といった喫緊の課題に対し、一つの解決策を提示するモデルとして注目に値する。特に、シトロエン・アミの導入は、日本の若年層の移動自由度を高め、シニア層の生活の利便性をサポートする可能性を秘めている。
3. 日本市場への導入障壁と「超小型モビリティ」の法規制
では、このシトロエン・アミを日本市場に導入する際、どのような課題があるのだろうか。
アミの設計は、日本の国土交通省が定める「超小型モビリティ」の区分に概ね合致すると見られている。この区分は、軽自動車よりも小型で低速な移動体を想定しており、原付免許相当での運用や、将来的な免許不要化も視野に入れられている。
しかし、導入にはいくつかの法規制の壁が立ちはだかる。日本の軽自動車は安全基準が欧州より緩やかで価格を抑えやすい傾向にあるが、シトロエン・アミは欧州の基準に対応した設計であるため、日本の法制度への適合調整が不可欠だ。
特に課題となるのが、最高速度45km/hという制限だ。これは、日本の一般道路の流れに乗ることや高速道路の利用が難しく、都市内の短距離移動に特化せざるを得ない。販売戦略としても、都市部のセカンドカー需要を狙うのが現実的とされている。
さらに、日本国内では超小型モビリティの実証実験は行われているものの、量産化や普及を阻む法規制の遅れが長らく指摘されてきた。シトロエン・アミのような実績ある超小型EVの導入は、停滞する日本の超小型モビリティ市場を活性化させる起爆剤となり得る。そのためには、車両の安全基準調整に加え、充電インフラの拡充と並行して、法整備の迅速化が不可欠となる。
シトロエン・アミの日本導入は、単なる輸入車の話題に留まらず、日本のモビリティ政策、安全基準、そして社会の高齢化・若年層の移動課題に対する新たな視点を提供するものとして、今後の動向が注視される。