【深層分析】ビットコイン暴落:年初来上昇分を帳消しにした複合要因と市場転換の可能性
ニュース要約: 2025年11月下旬、ビットコインは米国の強い経済指標による利下げ観測の後退と、大口投資家(クジラ)の大量売却を受け急落。年初来の上昇分を帳消しにした。価格は200日移動平均線を下回り、テクニカル分析上、長期トレンド転換のリスクが意識されている。今後の焦点は米金融政策と主要サポートラインの攻防だ。
【深層分析】ビットコイン急落の衝撃:年初来上昇分を帳消し、市場は転換点か
2025年11月22日 日本経済新聞 記者:[氏名]
暗号資産市場の主役であるビットコイン(BTC)が、2025年11月下旬に入り、急激な下落に見舞われている。10月に記録した史上最高値(12万6,000ドル)から3割以上値を下げ、一時は年初来の上昇分を帳消しにする水準まで暴落した。現在のビットコイン 価格は8万4,500ドルから8万6,700ドル(約1,225万~1,255万円)付近で推移しており、市場には動揺が広がっている。この大規模なビットコイン 下落の背景には、マクロ経済環境の変化と、市場構造の弱まりという複合的な要因が深く関わっている。
米国の「強い統計」が引き起こしたリスクオフ
今回の急落の最大の引き金は、米国で発表された経済指標に対する市場の反応だ。11月21日に発表された米国雇用統計が市場予想を大幅に上回る強い内容であったため、米連邦準備制度理事会(FRB)による12月の利下げ観測が急速に後退した。CMEグループの「フェドウォッチ」ツールでも利下げ可能性は40%程度まで低下している。
金利が高止まりし、ドル高が進行するという見通しは、リスク資産全般に対する投資意欲を冷え込ませる。特に、グローバルな資金で取引されるビットコイン ドル建て価格は、このマクロ経済の動向に極めて敏感に反応した。利下げ期待の後退は、短期市場におけるドル流動性を低下させ、結果としてビットコインなどリスク資産からの資金引き揚げ圧力を強める形となった。
「クジラ」の売却と需給バランスの崩壊
マクロ経済要因に加え、暗号資産特有の市場構造の弱さも下落を加速させた。市場分析によると、長期間休眠していた大口保有者、いわゆる「クジラ」のウォレットから、大量のビットコインが取引所に移動していることが確認されている。これは、大口投資家による利益確定、あるいはリスク回避のための大量売却が進行していることを示唆しており、市場の需給バランスを大きく崩している。
また、暗号資産市場を後押ししてきた政策的な「材料不足」も懸念材料だ。かつて価格を押し上げた現物ETFへの資金流入も鈍化しており、新たな上昇モメンタムを見いだせない状況が続いている。
チャートが示す「トレンド転換」の警戒水域
テクニカル分析の視点からも、市場の警戒水準は高まっている。現在のビットコインチャートを見ると、価格は長期的なトレンドを示す「200日移動平均線」を明確に下回る水準で推移している。SBI証券やSBIVCは、「200日移動平均線を下回ったことで、2023年からの上昇トレンドが転換する可能性が意識される」と分析しており、投資家心理をさらに悪化させている。
目先の焦点となるのは、主要なサポートラインである9万ドル(約1,300万円)の攻防だ。この水準が維持できなければ、次なる下値の目処は8.8万ドル(約1,270万円)近辺になると見られている。また、ビットコイン チャート上では高値更新ができずに下落が続く「ダブルトップ」の形成も懸念されており、短期的なリスク回避ムードが優勢となっている。
長期保有者の視線と今後の見通し
一方で、全ての投資家が悲観的になっているわけではない。ヴァンエック(VanEck)の分析によれば、「ビットコインの下落は中期保有者が主導しているが、長期保有者は引き続き蓄積を継続している」という。これは、短期的な投機筋が利益確定やリスク回避を進める一方で、暗号資産の将来性を信じる戦略的な投資家は、現在の下落局面を「買い場」と捉えている可能性を示している。
今後のビットコイン 価格の行方は、引き続き米国の金融政策に大きく左右される。12月のFRBの決定や、今後発表される経済指標が、リスク資産への資金流入再開の鍵を握るだろう。
短期的には9.0~9.6万ドルのレンジでの推移が基本線となるが、長期的な視点に立てば、市場の成熟や供給制限というファンダメンタルズは変わっていない。投資家は、短期的な市場のボラティリティに惑わされず、自身の投資期間とリスク許容度に基づいた慎重な戦略設定が求められる。規制動向や国際情勢を注視しつつ、市場の底入れサインを探る展開が続くと見られる。