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2025年11月13日

ANAが国際線で大攻勢:2025年、供給量108%増と「SAF・安全」を両立する三位一体戦略

ニュース要約: 全日空(ANA)は2025年の国際線供給量を前年比108%に大幅増加させ、欧州新路線で収益最大化を目指す。同時に、2030年目標に向けSAF調達を強化し、長距離路線の脱炭素化を推進。さらに、リチウムイオンバッテリー発火事案を受け、手荷物携行義務化など安全対策もアップデート。成長、環境、安全を柱に持続的な発展を図る。

全日空(ANA)、国際線で攻勢 2025年末商戦に向けた「成長・安全・環境」の三位一体戦略

国際線供給量を大幅増、2025年ホリデーシーズン収益最大化へ

2025年11月、航空業界はパンデミックからの完全回復期を迎え、特に国際線需要の旺盛さが際立っています。その中で、全日本空輸(ANA)は、2024年度の国際旅客収入が前年比47%増を達成した勢いを背景に、2025年度末のホリデーシーズンに向けてアグレッシブな成長戦略を展開しています。

最新の公開情報によると、ANAグループは2025年の旺盛な航空需要に応えるため、国際線供給量を2024年比で約108%と大幅に増加させる計画です。この成長は、新規欧州路線の本格的な通年運航によって支えられています。具体的には、羽田=ミラノ、ストックホルム、イスタンブールという3つの新路線が収益に貢献し始めており、日本の国際線ネットワークの強化が図られています。

また、ANAはハイエンドな長距離路線を担うANAブランドに加え、短距離レジャー市場に特化したPeachやAirJapanといったマルチブランド戦略を最適化しています。新興ブランドの路線拡大と既存路線のプレミアム化を両立させることで、旅行需要の多様な層を取り込み、全体収益の最大化を目指す構図です。国際航空運送協会(IATA)の予測通り、2025年の世界航空業界全体の収益が過去最高を更新する見通しの中、ANAはこの成長の波を確実に捉えようとしています。

脱炭素化へ動く翼:SAF調達と2050年目標の具体化

収益の拡大と並行し、ANAは「持続可能な航空燃料(SAF)」への投資と導入を、喫緊の経営課題として推進しています。これは、日本航空業界が国際民間航空機関(ICAO)の要求に基づき、2050年までにCO2純排出量ゼロを目指すという目標を達成するために不可欠です。

ANAは2030年度までにジェット燃料の少なくとも10%をSAFに置き換えるという明確な中期目標を掲げています。その実現のため、サプライチェーンの多角化を進めています。海外では、米国のRaven SR社やフィンランドのNeste社と中長期的な調達契約を結び、安定供給体制を構築。国内においても、日本初のSAF生産者であるコスモ石油との調達契約を2025年度に締結するなど、国産SAFの商業化促進にも貢献しています。

さらに、ANAは企業間連携を促す「SAFフライト・イニシアティブ」を立ち上げ、参加企業にCO2削減証明書を発行することで、サプライチェーン全体の脱炭素化を支援しています。この積極的な取り組みは、同社が3年連続でCDP気候変動「Aリスト」に選定されたことからも、その実効性の高さが窺えます。

安全への絶え間ない投資と新ルールへの対応

企業の成長と環境への配慮が進む一方で、航空会社にとって最も重要なのは運行の安全です。ANAは2025年の世界安全航空ランキングでトップクラスの評価を維持しており、高い安全基準を誇ります。

しかし、2025年3月には、那覇発羽田行きの機内で、乗客の荷物内のリチウムイオン充電器(行動電源)が発火する事案が発生しました。幸い、乗務員の迅速な対応により大事には至りませんでしたが、この事案は航空安全における新たな脅威を浮き彫りにしました。この結果を受け、国土交通省は迅速に対応し、2025年7月より、リチウムイオンバッテリーを含む行動電源を頭上の荷物棚に収納することを禁止し、必ず手荷物として携行することを義務付ける新ルールを導入しました。

ANAは、こうした規制強化を迅速に遵守し、旅客への周知徹底を図ることで、安全運航体制のさらなる向上に努めています。個別の事象に迅速に対応し、それを教訓として安全基準をアップデートしていく姿勢は、世界的な信頼を維持する上で不可欠です。

ANAは、新路線の拡大による収益力強化、SAF導入による環境負荷低減、そして新たな安全基準の徹底という三位一体の戦略をもって、2025年後半、そしてその先の持続的な成長を目指しています。新機材の納入遅延やエンジンメンテナンスの増加といった構造的な課題を抱えながらも、日本のフラッグキャリアとしての地位を確固たるものにするための挑戦は続きます。

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