ウエルシア・イオン・ツルハ統合で業界再編へ:売上高3兆円目指す戦略
ニュース要約: ドラッグストア大手のウエルシアは、イオン、ツルハとの経営統合により、売上高3兆円を目指す業界最大級のグループを形成。統合後の新体制は、ヘルス&ウエルネスを軸に据え、24時間営業、デジタル化推進、強力なPB戦略を展開。東南アジア進出も視野に入れ、日本のドラッグストア業界再編を主導する。
ウエルシア、イオン・ツルハとの3社統合で業界再編へ―売上高3兆円目指す新体制
ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスが、イオングループとツルハホールディングスとの経営統合により、業界最大級のグループを形成する。2025年12月の統合完了後、売上高2兆円超の巨大企業が誕生し、ドラッグストア業界の勢力図が大きく塗り替わることになる。
3社統合のスキームと狙い
ウエルシアとツルハの経営統合は、株式交換によりツルハがウエルシアを完全子会社化する形で進められる。その後、イオンがツルハの株式公開買付け(TOB)を実施し、連結子会社化することで3社の統合が完了する見通しだ。
統合の最大の狙いは、ドラッグストア2社の経営資源融合に加え、イオンが持つ食品分野の知見、物流拠点ネットワーク、海外展開力を最大限に活用することにある。ウエルシアは現在、イオングループ内で売上高・営業利益ともに第3位の主力企業となっており、金融・モール開発と並ぶヘルスケア事業の中核を担っている。
統合後の新グループは、2032年2月期までに売上高3兆円、営業利益率7%という野心的な目標を掲げており、営業利益は900億円を超える見込みだ。
ヘルス&ウエルネスで新エコシステム構築
ウエルシアは統合を機に、単なるドラッグストアから脱却し、ヘルス&ウエルネスを軸とした新たなエコシステムの構築を目指している。地域密着型の健康ステーションとして、調剤併設率の向上を進めており、ちょっとした風邪から高度な在宅医療まで対応できる体制整備に注力している。
24時間営業店舗の展開も特徴的な戦略だ。業界が営業時間短縮に向かう中、ウエルシアは深夜・早朝の医療需要に着目。夜中の急な発熱や歯痛など、救急車を呼ぶほどではないが薬が必要という潜在ニーズに応えている。24時間営業への切り替えに伴い、食品販売も拡充し、早朝散歩のシニア層の朝食需要や、スーパー閉店後の生活必需品需要も取り込んでいる。
デジタル化とPB戦略で差別化
ウエルシアは利便性向上のため、デジタル化にも積極的だ。LINE処方箋予約サービスは全国2,168店舗で利用可能となり、スマートフォンで処方箋を送信するだけで薬局での待ち時間を大幅に短縮できる。オンライン服薬指導サービスも提供しており、自宅から薬剤師の指導を受けることが可能だ。
一方、プライベートブランド(PB)戦略も成功を収めている。2026年2月期にはPB売上高1100億円、売上構成比10%を目標に掲げ、「からだWelcia」「くらしWelcia」シリーズを約3000店舗で展開している。「バラの香りがハナやかなトイレットペーパー」など、わかりやすいネーミングと心理的価格設定で消費者の支持を獲得。食品から日用雑貨、医薬品まで全カテゴリーを網羅し、「ウエルシアでしか買えない価値」を提供している。
東南アジア進出も視野
統合後はイオンの海外ネットワークを活用し、東南アジアなどへの進出も計画している。イオンのモール展開と連携したドラッグストア出店により、アジア市場での成長を目指す戦略だ。
ドラッグストア業界は、人口減少と市場飽和により再編が避けられない状況にある。ウエルシアを中心とした3社統合は、業界に新たな競争原理をもたらし、他社の戦略にも大きな影響を与えることは確実だ。統合完了まであと1カ月余り。日本最大のドラッグストアグループ誕生が、業界の未来をどう変えるか注目される。