ナチュラル
2025年11月13日

警視庁警部補、トクリュウへ情報漏洩で逮捕:公権力の裏切り

ニュース要約: 警視庁の現職警部補が、国内最大級の違法スカウトグループ「ナチュラル」(トクリュウ)に対し、捜査情報を漏洩した疑いで逮捕された。暴力団対策課に所属していた容疑者は、監視カメラ映像を含む機密情報を暗号化アプリで組織側に提供し、数百万円の現金を受け取っていたとされる。この事件は、匿名型犯罪グループが警察組織内部にまで浸透し得る現代社会の構造的な闇を浮き彫りにし、警察の信頼回復と組織改革の必要性を強く示している。

警察内部に潜んだ「トクリュウ」の影:警視庁警部補、情報漏洩で逮捕の衝撃

2025年11月12日、日本の治安維持の要である警視庁を激震させる事件が発覚した。違法スカウトグループ「ナチュラル」(通称:トクリュウ)に対する捜査の最前線にいた現職の警部補、神保大輔容疑者(43)が、捜査情報を組織側に漏洩した疑いで逮捕されたのである。

暴力団対策課という「エリート部署」に所属し、長年にわたり組織犯罪の摘発に尽力してきたはずの警察官による、公権力の悪用と組織への「裏切り」。この事態は、単なる一警察官の不祥事として片付けられるものではなく、匿名・流動型犯罪グループが警察組織にまで浸透し得る、現代社会の構造的な闇を浮き彫りにしている。

捜査の核心を突く「内部犯行」

神保容疑者が関与したとされる「ナチュラル」は、新宿・歌舞伎町を拠点とし、SNSや匿名チャットを駆使して女性を違法にスカウトし、風俗店などに斡旋する国内最大級の違法組織である。2022年には年間約44億円もの収益を上げ、報酬に暗号資産を用いるなど、従来の犯罪グループとは一線を画す「匿名労働市場」の支配者として、警視庁が最も壊滅に力を入れていた標的であった。

その組織に対する切り込み隊であったはずの神保容疑者は、約2年間にわたりナチュラル関連の捜査に携わっていたとされる。逮捕容疑によると、彼は監視カメラの映像を含む機密性の高い捜査情報をスマートフォンで撮影し、ナチュラル側が独自に開発した暗号化アプリを通じて送信していた。その見返りに、神保容疑者の自宅からは数百万円単位の現金が押収されており、金銭的な誘惑に屈した公務員の姿が浮かび上がる。

捜査が難航する中、「警視庁の捜査員から情報をもらった」というナチュラルのメンバーの供述が、疑惑を一気に神保容疑者に集中させたという。これは、警察が長期間積み重ねてきた捜査を根底から崩壊させかねない、極めて悪質な職務悪用行為である。

疲弊したエリートを襲う「トクリュウ」の誘惑

なぜ、過酷な現場で正義を掲げてきたはずの警部補が、自ら捜査対象の犯罪組織に手を貸したのか。

神保容疑者は、暴力団対策課という極度の緊張と過労を強いられる部署で長年勤務してきた。昼夜を問わない激務の中で、正義感の「燃え尽き」や心理的疲弊が生じていた可能性が指摘されている。その心理的な空白と経済的な不満を、違法スカウトグループという「トクリュウ」が巧妙に突いた構図が透けて見える。

匿名性が高く、巨額の資金力を背景に持つ現代型犯罪グループは、もはや暴力団のようにわかりやすい形で警察に敵対するだけでなく、組織内部に潜入し、権力構造そのものを腐敗させようと試みている。今回の事件は、警察組織の内部管理体制、特に情報アクセスの厳格化と、職員のメンタルヘルスケアの脆弱さが、現代の犯罪の手口に追いついていないことを示唆している。

信頼回復への険しい道のり

警視庁は今回の事件に対し、「都民・国民の信頼を著しく裏切った」として、強い危機感を表明している。長年の努力で築き上げてきた違法スカウト摘発の成果が、身内からの情報漏洩によって無に帰す可能性すらあるからだ。

この事件は、警察官のモラルハザードという個人の問題に留まらない。捜査情報へのアクセス管理、捜査員が捜査対象から外れた後の行動監視、そして何よりも公権力の行使者に対する綱紀粛正機能が、決定的に不十分であったことを示している。

「トクリュウ」のような匿名性の高い犯罪グループとの戦いは、技術的な進化だけでなく、組織の倫理観と自浄能力が試される戦いである。警視庁は今後、神保容疑者以外の関与の有無も含めて徹底的な捜査を進めるとともに、組織全体として信頼回復に向けた構造的な改革を迫られることになる。

公権力という名の盾が、犯罪組織の矛によって内部から突き崩された事態は、日本の治安に対する国民の信頼を大きく揺るがす深刻な一大事であり、今後の捜査の進展と、警察組織の抜本的な再生が強く求められている。

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