池江璃花子、完全寛解から「不屈の第2章」へ――2026年、ロス五輪へ向けて研ぎ澄まされる心技体
ニュース要約: 白血病の完全寛解を経て、競泳・池江璃花子選手が2028年ロス五輪への挑戦を本格化させています。2026年の初戦「KOSUKE KITAJIMA CUP」では大会新記録で優勝。拠点を日本に戻し、新たなトレーニング哲学で自己ベスト更新に挑む彼女の、スポーツの枠を超えた社会的象徴としての歩みと今後の展望を詳報します。
【独自】池江璃花子、完全寛解から「不屈の第2章」へ――2026年、ロス五輪へ向けて研ぎ澄まされる心技体
2026年2月18日、日本の競泳界において、その一挙手一投足がこれほどまでに注目され、人々に勇気を与え続けるアスリートは他にいないだろう。池江璃花子(横浜ゴム/スポーツクラブルネサンス)。2019年の白血病発症から、昨年の「完全寛解」報告、そして3度目の五輪となったパリ大会を経て、彼女はいま、2028年ロサンゼルス五輪という次なる頂(いただき)を見据え、かつてない充実の時を迎えている。
■「大会新」で示した2026年の幕開け
2026年1月23日から東京アクアティクスセンターで開催された「KOSUKE KITAJIMA CUP 2026」。池江は年明け最初の重要な実践の場で、その好調ぶりを鮮烈に印象づけた。
女子50メートルバタフライにおいて、予選から26秒11の大会新記録を叩き出すと、決勝に相当するスキンレース(3回勝ち抜き戦)では、3レースすべてで1位を独占。最終レースも26秒30の好タイムで優勝を飾り、短距離バタフライにおける国内での圧倒的な優位性を改めて証明した。また、50メートル自由形でも予選5位から順位を上げる粘りを見せ、短距離2種目での高いパフォーマンスを維持している。
特筆すべきは、記録の安定性だ。2024年パリ五輪の100メートルバタフライ準決勝(57秒79)から、昨年2025年の日本選手権での50メートルバタフライ優勝(25秒41)へと着実にギアを上げている。自己ベストである25秒11(2018年)に向けて、今の池江には「かつての自分を追い越す」準備が整いつつあるように見える。
■「完全寛解」という節目と、変化したトレーニング哲学
池江の歩みを語る上で、健康状態の推移は切り離せない。2024年に医学的な「完全寛解」を公に報告したことは、彼女の競技人生において極めて大きな区切りとなった。治療後、一般的に5年間の安定が必要とされる基準を乗り越え、現在は月1回の定期的な通院を行いながら、週4日のプール練習を中心とした高度な競技生活を送っている。
しかし、その復活劇は単純な「復旧」ではない。元競泳選手の伊藤華英氏が「毎回ベストパフォーマンス」と評するように、池江は病前のアプローチにしがみつくのではなく、「ゼロからのスタート」として現在の肉体に適した新しい泳ぎを構築している。
具体的には、体幹トレーナーの指導のもと、「ボディコントロール・トレーニング」を導入。筋力の完全回復を待つだけでなく、無駄のない効率的な動作、いわば「水の抵抗を最小限に抑えるメカニズム」を追求することで、パワー不足を技術で補い、さらなるスピードへと昇華させている。現在、個人・リレー合わせて計16種目の日本記録を保持している事実は、そのアプローチの正しさを裏付けている。
■拠点を日本へ。自覚と発信力の高まり
競技環境にも大きな変化があった。2025年9月、パリ五輪後に名将マイケル・ボール氏が中国チームの指導に回り、チームが解散したことを受け、池江は練習拠点をオーストラリアから日本国内へと戻した。SNSでは「大好きな仲間たちに出会い、アスリートとしても強くなれた時間だった」と感謝を綴り、今後は日本を拠点に、国内競技の普及や若手育成にも注力する姿勢を見せている。
2026年の年明けには、自身のInstagramで帝国ホテルでの艶やかな振袖姿を披露。「お着物姿が美しすぎます」「モデル以上」と多くの絶賛コメントを集めたが、これは単なる私生活の発信にとどまらない。過酷な闘病を経験し、それを乗り越えてなお競技の第一線で輝き続ける彼女の姿は、いまやスポーツの枠を超えた社会的象徴(アイコン)としての重みを増している。
■ロス五輪へ繋がる「シンガポール世界水泳」
当面の目標は、2025年に開催される「世界水泳シンガポール」でのメダル争い、そしてその先にある2028年ロサンゼルス五輪だ。横浜ゴムによる安定したサポート体制のもと、池江は一走一走、自分自身の限界を塗り替える作業に没頭している。
「努力は必ず報われる」。かつて涙ながらに語ったその言葉は、2026年、より深みを持った確信へと変わりつつある。かつての「天才少女」は、一度すべてを失い、自らの手で再び「女王」の称号を掴み取ろうとしている。不屈のスイマー、池江璃花子の第2章は、今まさに最高潮へと向かっている。