自民党重鎮・石原伸晃氏が政界引退：功罪と父・慎太郎氏の遺産継承、新たな道

元自民党重鎮、石原伸晃氏の「引き際」— 政治の第一線から退き、父・慎太郎氏の遺産を継ぐ道

（2025年11月23日 日本経済新聞、共同通信社 報道特別班）

長年にわたり自由民主党の要職を歴任し、小泉内閣や安倍内閣で規制改革や環境政策などを担ってきた元衆議院議員、石原伸晃氏（68）が、2025年6月をもって政界の第一線から完全に身を引いた。次期衆院選への不出馬は既に表明されていたが、一時は模索していた参院選出馬も断念し、「もう選挙に出ない」と明言。自民党重鎮の引退は、東京の政治地図と、故・石原慎太郎元東京都知事の政治的遺産の行方に大きな影響を与えている。

本稿では、石原伸晃氏の政治キャリアの終焉の背景、閣僚時代に残した功罪、そして彼が今後、父の遺産をいかに継承していくのかを検証する。

第一線からの退場と地盤の現状

石原伸晃氏は、2021年の衆議院選挙において、長年の地盤であった東京8区（杉並区）で野党統一候補に敗れ、比例復活も果たせず落選した。この敗北は、党内における地盤の弱体化を如実に示し、彼の政治キャリアの大きな転機となった。

落選後、一時は2025年夏の参議院選挙への鞍替え出馬が取り沙汰されたものの、最終的には立候補を断念し、同年6月に政界引退を正式に表明した。これは、地盤の立て直しが困難であること、そして世代交代を促す党内の空気に配慮したものと見られている。現在、石原氏が長年築いてきた東京8区の政治基盤は、後進に道を譲る形となり、彼自身の政治的な影響力は縮小している。

今後は「外から意見を述べる立場」として、政治評論や政策提言に携わる方針を示しており、長年培った知見の活用が期待される。

閣僚として残した「功」と「批判」

石原伸晃氏のキャリアは、多岐にわたる閣僚経験に裏打ちされている。特に評価すべきは、小泉内閣時代に規制改革担当大臣として推進した特殊法人改革や無駄遣い削減への貢献だ。彼は与党と政府の関係を「車の両輪」と捉え、協力体制を重視しつつ、抵抗勢力の多い改革を断行した。

また、経済政策においては、アベノミクスを強く支持し、デフレ脱却と成長戦略の着実な実行を強調してきた。彼の発言は、当時の自民党政権の経済路線を体現するものであったと言える。

一方で、批判も少なくない。災害対応については、阪神・淡路大震災の経験から「分権型災害対応」の必要性を提唱し、仕組みづくりに貢献した功績はあるものの、直接的な現場指揮の実績が乏しい点が指摘される。

さらに、森友・加計学園問題など、政治資金の透明性や官僚の独立性を問う問題に対して、当時の安倍内閣の対応を支持した姿勢は、野党や一部国民からの厳しい批判の対象となった。重鎮としての発言が、結果的に政権擁護に傾きすぎたのではないか、との声も根強い。

父・慎太郎氏の遺産継承と新たな道

石原伸晃氏の今後の活動を占う上で、故・石原慎太郎元都知事の存在は欠かせない。慎太郎氏の遺産総額は約10億円と推定されており、東京都大田区の自宅や膨大な著作権、印税などが含まれる。

長男である伸晃氏は、婚外子を含む全相続人との円満な協議を経て、これらの経済的・文化的な資産を継承したと見られている。特に著作権や印税は、政界を退いた石原伸晃氏にとって、今後の活動を支える重要な基盤となるだろう。

伸晃氏は、政治家としてのキャリアを終えた今、父・慎太郎氏が残した政策的・思想的な遺産、特に都市政策や教育政策に関する知見を継承し、文化活動や社会提言の形で発信を続けることが予想される。

政治の第一線から退いた石原伸晃氏だが、その経験と父から受け継いだ影響力は、日本政治に対する「外野からの提言者」として、今後も一定の注目を集め続けるだろう。長年のキャリアの総括と、新たなステージでの活躍が期待されている。（了）