『モンハン』20周年:辻本良三CPOが語る次世代戦略—累計1億本突破と持続的進化の哲学
ニュース要約: 発売20周年を迎え、全世界累計1億本を突破した「モンスターハンター」シリーズ。辻本良三CPOは、最新作『ワイルズ』の成功に加え、ファンとのつながりを重視した継続的アップデート戦略を強調する。今後、メディアミックスを強化し、次世代開発者と共にグローバル市場での存在感を高める、その進化の哲学に迫る。
進化し続ける「狩猟体験」20周年を迎えた『モンハン』、辻本良三CPOが描く次世代戦略
【大阪発】
カプコンが世界に誇るアクションゲームの金字塔「モンスターハンター」シリーズは、2025年で発売20周年を迎え、全世界累計販売本数1億本を突破した。この世界的成功を牽引してきたのが、同社取締役専務執行役員で最高製品責任者(CPO)を務める辻本良三氏(52)である。
最新作『モンスターハンターワイルズ』は、発売からわずか3日間で800万本超のセールスを記録し、シリーズの勢いを証明している。辻本氏は、単なるヒット作のプロデューサーという立場を超え、カプコン全体の製品戦略を統括する要職に就き、日本のゲーム産業の未来を担うリーダーとして注目を集めている。
■ ユーザーの声に応える持続的進化
『モンハンワイルズ』は、広大な荒野を舞台にした革新的な狩猟体験と、独自のアートスタイルが評価され、先日開催された2025年のPlayStation Partner Awardsでは最多3部門を受賞するなど、その品質は国内外で高く評価されている。
特筆すべきは、発売後の継続的なアップデート戦略だ。ユーザーのフィードバックを迅速に反映させる姿勢は、シリーズの長寿化に不可欠な要素となっている。12月16日には第4弾の大型無料アップデートが配信される予定であり、その内容はプレイヤーの期待を大きく上回るものだ。
目玉となるのは、シリーズファン待望の大型モンスター「巨戟龍ゴグマジオス」の登場である。さらに、難易度を極限まで高めた歴戦の個体(★9)モンスターとして「★9のリオレウス」が追加されるほか、多頭クエストの拡充、武器バランスの徹底的な調整、ゲーム安定化など、多岐にわたる改善が施される。これらのアップデートは、辻本氏が重視する「ファンとのつながり」を具現化したものであり、常に新しい体験を提供し続けるという開発哲学の表れと言える。
■ 協力プレイの確立とグローバル展開
辻本良三氏のプロデュースキャリアは、2007年の『モンスターハンターポータブル2nd』から本格的に始まった。シリーズの原点である「仲間との狩猟体験」を重視し、プレイヤー同士の連携やコミュニティ形成を意識した開発を推進。特に、ネットワークゲーム運営の経験が豊富だった辻本氏は、家庭用ゲーム機のネットワーク技術の発展期から、協力プレイをシリーズの核として確立させた。
シリーズを世界的なメガタイトルへと押し上げたのは、2018年に発売された『モンスターハンター:ワールド』だ。この作品で、辻本氏は「海外ユーザーのニーズを理解し、操作性やチュートリアルの改善を徹底した」と語っている。これにより、それまで日本国内中心だった人気が世界中に波及し、シリーズは真のグローバルコンテンツへと変貌を遂げた。開発には時期によって300人以上のスタッフが関わるなど、カプコン第二開発統括の組織力を最大限に活用した大規模開発体制が成功の鍵となった。
■ CPOとしての次世代開発へのコミットメント
辻本氏は、カプコン創業者の辻本憲三氏を父に持つゲーム業界の名門出身でありながら、一貫して現場主義を貫いてきた。1996年の入社以来、アーケードゲームやネットワークゲーム運営など幅広い経験を積み、その開発哲学は「ユーザーがひっかかる要素を大切にする」ことにある。
2025年4月1日付で最高製品責任者(CPO)に就任したことは、彼が単一シリーズのプロデューサーという枠を超え、カプコン全体の製品ポートフォリオと技術革新を担う立場になったことを意味する。彼は、シリーズの成功をチーム全体の成果と捉え、「1人では作れませんし、売ることもできません」と述べるなど、チームワークと組織力の重要性を強調している。
さらに、今後の展望として、辻本氏は「モンスターハンター」の世界観をモバイルゲームや映画、アニメなど、ゲーム以外の多様な形で体感してもらえるよう、メディアミックスの強化も視野に入れているという。
シリーズ20周年という節目を迎え、PUMAやダーツライブなど異業種との大規模なコラボレーションも展開されている。辻本良三氏が牽引する「モンスターハンター」シリーズは、「いつまでも進化し続けるゲームでありたい」という哲学のもと、プレイして育った若い世代の開発者も巻き込みながら、今後もグローバル市場での存在感を高めていくことは確実であり、日本のコンテンツ産業の未来を占う上で、その動向は引き続き注目される。
(日本経済新聞社 ゲーム・テクノロジー部門)