JR神戸線、トラブル続発でも「安全と再生」へ:6100億円投資と三宮再開発の全貌
ニュース要約: JR神戸線はトラブルが続発する一方、JR西日本は安全対策として6100億円を投資し、新型車両227系の導入やホーム柵整備を推進している。さらに、神戸の都心機能強化を目指す三宮駅の500億円規模の再開発も進行中。運行の安定化と都市再生という二つの重要戦略が、今、関西の大動脈で着実に進んでいる。
JR神戸線、トラブル続発の裏で進む「安全と再生」:6100億円投資と神戸都心再開発の現在地
【2025年11月20日 兵庫発 共同通信】
2025年11月20日、関西の大動脈であるJR神戸線は、踏切事故と異音確認による線路点検が重なり、終日にわたり大規模な運行混乱に見舞われた。東加古川〜加古川駅間での自動車との接触事故に加え、さくら夙川〜芦屋駅間での異音確認が、琵琶湖線、JR京都線、JR東西線といった広範囲の関連路線に波及し、通勤・通学者を中心に利用者の足に大きな影響を与えた。
今日のトラブルは、鉄道システムの日常的な脆弱性を改めて浮き彫りにしたが、その陰でJR神戸線沿線では、JR西日本による過去最大級の安全投資と、神戸市中心部の都市機能刷新という、未来に向けた重要な戦略が着実に進行している。運行の安定性確保と、都市競争力の強化という二つの使命を背負い、JR神戸線は今、大きな変革期を迎えている。
混乱続く運行と広がる波紋:課題の残る安定性
本日、午後を中心に発生した複数のトラブルは、運行再開後もダイヤの乱れや一部運休が残り、夜にかけても影響が続いた。特に、踏切事故に起因する運行見合わせでは、土山駅や大久保駅で折返し運転が実施され、利用者は最新の運行情報や振替輸送の案内確認を余儀なくされた。
JR西日本管内でも特に利用率が高く、関西圏の経済活動を支える主要路線であるJR神戸線の運行障害は、広域的な波紋を生む。ラッシュ時の混雑率(2020年度で快速線約97%)も高水準で推移しており、利用実態やニーズを踏まえたダイヤ見直しの検討は継続されているものの、具体的な混雑緩和策の発表が待たれる状況だ。
6100億円の安全投資:ホーム柵・新型車両でリスク低減へ
こうした運行上の課題に対し、JR西日本は安全性向上を最重要経営課題と位置づけ、大規模な投資計画を推進している。福知山線列車事故を原点とする安全追求の基本姿勢の下、2023~2027年度の5か年における安全投資額を当初計画から800億円追加し、総額6,100億円に拡大した。
この巨額投資の重要な柱の一つが、駅のホームにおける安全性強化だ。JR神戸線では、2025年度下期に舞子駅(1・2番線)で昇降式ホーム柵の使用が開始される予定であり、大阪駅や尼崎駅など主要駅でも整備が進められている。
さらに、車両の刷新による安全性・快適性向上も図られる。2025年度からは新型車両227系近郊形直流電車の近畿圏導入が本格化し、2026年度以降、既存車両と順次入れ替えられる計画だ。また、225系も2026年度に増備が再開される予定であり、両形式による車両の更新と統一化が進むことで、安定した運行と省エネ性能の向上が期待されている。
神戸の「玄関口」を刷新:三宮再開発がもたらす経済効果
運行の安全性確保と並行して、JR神戸線沿線では、神戸の都心機能強化に向けた大規模な再開発プロジェクトが進行中である。中でも、三宮駅を中心とする事業は、神戸市の都市競争力を左右する一大事業として注目を集めている。
2029年度の完成を目指すこのプロジェクトでは、地上30階、高さ約155mの新駅ビルが「神戸の玄関口」として誕生する。事業費約500億円を投じ、JR西日本、UR都市機構、神戸市が連携し、交通結節機能の強化と新たな商業・公共空間の創出を目指す。
利用者の利便性向上を目的として、神戸交通センタービルと新駅ビルをつなぐ約80mの歩行者デッキの整備工事も2025年11月から開始された。これにより、駅周辺の回遊性が高まり、地元消費の拡大、雇用創出、そして不動産価値の上昇など、地域経済への大きな波及効果が見込まれている。
三宮駅だけでなく、JR神戸線沿線では、JR元町駅のバリアフリー化を含むリニューアル計画や、名谷駅の駅ビル・商業施設リニューアルなど、広範なエリアで利便性と地域活性化に向けた動きが活発化している。
運行トラブルという日常的な課題を抱えながらも、JR神戸線は今、新型車両導入による安全性・快適性の向上と、三宮再開発による都市機能の強化という、二つの重要な進化の途上にある。安全性の徹底と、利便性の向上という目標を両立させることが、関西圏の経済活動を支える中核インフラとしてのJR神戸線の将来を決定づける鍵となるだろう。