aespa紅白出場に異例の反発 「きのこ雲ランプ」騒動で問われる歴史的配慮と公共放送の基準
ニュース要約: K-POPグループaespaの紅白歌合戦初出場決定を受け、過去の「きのこ雲」を想起させるランプ投稿が再炎上。出場取りやめを求める署名が7万筆を超える異例の事態となっている。NHKは「意図なし」を確認し出場を継続する方針だが、歴史的感受性と公共放送の配慮基準が問われている。所属事務所の沈黙も批判を強める一因となっている。
K-POP「aespa」紅白出場に異例の反発 過去投稿「きのこ雲ランプ」巡り、7万筆超の署名 問われる歴史的配慮と公共放送の基準
人気K-POPグループ「aespa(エスパ)」が先ごろ発表された第76回NHK紅白歌合戦へ初出場を果たすことが決定した。しかし、この慶事の裏で、メンバーのニンニン氏が過去に投稿した卓上ランプの写真が、原子爆弾の「きのこ雲」を想起させるとして、日本国内で大規模な批判を浴びている。紅白出場取りやめを求める署名活動は短期間で7万筆を超えるなど、異例の事態に発展しており、グローバルに活動するK-POPアイドルと、日本の歴史的感受性の衝突が鮮明になっている。(2025年11月20日付)
紅白決定で再燃した「きのこ雲」騒動
問題となっているのは、aespaの中国人メンバーであるニンニン氏が2022年5月、ファンクラブ向けアプリに投稿した卓上ランプの写真だ。ニンニン氏はこのランプを「可愛い」として紹介したが、その形状が原爆投下後に発生するきのこ雲に酷似していたため、当時から一部で「原爆被害を軽視しているのではないか」との指摘が上がっていた。
この過去投稿は一度沈静化していたものの、aespaの紅白歌合戦初出場決定(11月14日)を機に、SNS上で再び拡散され、大規模な炎上へと繋がった。特に、日本では広島で約14万人、長崎で約7万人の命が奪われた歴史的背景があり、「きのこ雲」は原爆の悲劇を象徴する極めてセンシティブなモチーフとして受け止められている。
反発は具体的な行動へと発展し、X(旧Twitter)上では、11月17日頃から紅白出場辞退を求める署名活動が展開された。署名数はわずか数日で急増し、19日夕方時点で7万筆を超える署名が集まる異例の事態となっている。これは、公共放送の舞台に立つアーティストに対して、歴史認識と配慮を強く求める日本国内の世論の表れと言える。
NHKは「意図なし」を確認、事務所は沈黙
この騒動に対し、主催者であるNHK広報局は11月17日の問い合わせに対し、「所属事務所には、当該メンバーに原爆被害を軽視、揶揄する意図がなかったことなどを確認している」と回答し、現時点では予定通りaespaの出場を進める方針を示した。
しかし、公共性の高い紅白の舞台で、視聴者層が幅広いことを鑑みると、NHKが「意図」の有無のみで判断を押し切ることへの懸念も指摘されている。特に、2025年が戦後80年という節目の年であることもあり、被爆者や戦後世代への「結果としての影響」や「象徴性」をどう考慮するのかという、公共放送としての配慮基準が問われている。
一方、きのこ雲ランプの投稿を行ったニンニン氏が所属するSM ENTERTAINMENT JAPANは、本件に関する公式見解や謝罪声明を期限までに発表しておらず、沈黙を続けている。事務所の対応の遅れは、国内の批判をさらに強める一因となっており、ファン層からも「SMは一刻も早く説明責任を果たすべきだ」との声が上がっている。
K-POPアイドルの国際的課題:歴史的記憶の差異
今回の問題の根底には、K-POPアイドルが国際的に活動する中で避けられない、歴史的記憶と文化的認識の差異がある。日本ではきのこ雲が原爆の悲劇と直結するのに対し、中国や韓国などでは、原爆の記憶や教育の度合いが異なり、純粋に「デザインの面白さ」や「インテリア性」として捉える傾向もある。
こうした文化的・教育的背景の違いが、アイドルの発言や表現に対する受け取り方に大きな差を生み出している。過去にも、BTSやTWICEなど、グローバル展開するK-POPグループは、歴史的モチーフや表現を巡る問題に直面し、その都度、謝罪や説明が求められてきた経緯がある。
専門家は、aespaや所属事務所は、グローバル展開にあたり、各国の歴史的・文化的にセンシティブなモチーフに対する徹底したリスク管理と、表現意図の明確化が不可欠だと指摘する。
aespaとSMエンタテインメントには、単に出場を強行するだけでなく、日本の歴史的感受性に対する理解を深め、社会やファンに対する明確な説明責任を果たす姿勢が、長期的な信頼回復に繋がる鍵となるだろう。