旧ジャニーズ「伝説」終焉:法廷ドラマとNetflixが変える俳優の新キャスティング戦略
ニュース要約: 旧ジャニーズ事務所の歴史的終焉後、元所属タレントは演技派俳優として法廷ドラマやグローバル市場で新境地を開いている。増田貴久氏主演ドラマや、Netflixの大型企画『法律英雄2025』への起用検討は、彼らがアイドル人気から脱却し、演技力と企画力を持つ「俳優プロデューサー」へと進化していることを示している。
旧ジャニーズ「伝説」の終焉と俳優たちの新時代:Netflixと法廷ドラマが変えるキャスティング戦略
—『法律英雄2025』に見るグローバル・プロデューサーの登用戦略—
2025年11月20日
創業者の性加害問題を契機に、61年の歴史に幕を下ろした旧ジャニーズ事務所。社名を「SMILE-UP.」に変更し、タレントマネジメント事業から撤退、被害者救済に専念するという、日本の芸能界における歴史的な転換点を迎えた。企業としての「ジャニーズ伝説」は終焉を迎えたが、その遺産を受け継いだ元所属タレントたちは、STARTO ENTERTAINMENTや個人事務所という新体制のもと、俳優として新たな活路を見出している。特に、演技力が問われる法廷ドラマや、グローバル市場を意識した配信プラットフォーム、Netflixにおける彼らの活躍は目覚ましい。
演技派の登竜門、法廷ドラマへの積極起用
旧ジャニーズ出身俳優たちが、現在、テレビドラマの主軸を担っていることは明らかだ。2025年秋クールにおいても、その傾向は顕著に表れている。
例えば、読売テレビ・日本テレビ系の法廷ミステリードラマ『推しの殺人』では、増田貴久氏(STARTO)が弁護士・矢崎恭介役として主演を務め、初回視聴率10.8%、第2話で11.3%と安定した視聴率を記録している。制作側は「ジャニーズ出身者でありながら、俳優としての幅を広げたい」との意図で起用したと報じられており、これは、もはや旧ジャニーズ系タレントがアイドル的人気だけでなく、演技力という観点からもシリアスなジャンルで評価されていることを示唆する。
法廷ドラマは、緻密なセリフ回しや感情の機微を表現するスキルが求められる、まさに俳優の登竜門とも言えるジャンルである。彼らが次々とこの難役に挑戦している事実は、旧体制の崩壊という危機を、俳優としての成長機会に変えようとする強い意志の表れと見ることができる。
グローバル戦略の中核を担うNetflix
こうした国内の動きに加え、グローバル配信最大手Netflixの積極的なキャスティング戦略も、旧ジャニーズ出身俳優たちの活躍の場を大きく広げている。
Netflixは現在、日本発の実写コンテンツ制作を強化しており、韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の世界的成功を背景に、法廷ドラマのリブート企画を日米韓で同時進行させている。この大型企画の一つとして注目されているのが、仮称『法律英雄2025』だ。
Netflixグローバルドラマプロデューサーのアダム・ローゼンバーグ氏は、「法廷ドラマは国境を越えて共感される。2025年はよりリアルな法曹界を描く」と語っており、そのキャスティングにおいては、日本側で「ジャニーズ系俳優の起用も検討中」と報じられている。これは、旧ジャニーズ伝説が培ってきた強固なファンベースと、グローバルな認知度を両取りする戦略の一環と見られる。二宮和也氏や赤西仁氏など、すでに個人事務所で活動するトップ俳優たちも、Netflix作品に多数起用されており、「事務所×プラットフォーム」の新たな連携モデルが確立されつつある。
プロデューサーが求める「企画力を持つ俳優」
Netflixが日本人俳優に求める資質も変化している。従来の「キャスティングされる側」から一歩踏み込み、企画立案や制作に直接関与する「俳優プロデューサー」が台頭しているのだ。佐藤健氏や岡田准一氏らがエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねるケースが増えており、これは俳優のマネジメント能力や企画力が評価対象となっていることを示す。
また、Netflixプロデューサーらは、日本の俳優の待遇改善にも意識を向けている。山田孝之氏らが待遇の低さを直談判した事例もあり、ギャラをグローバル基準に引き上げることで、優秀な人材を確保・囲い込む戦略が取られている。
旧ジャニーズ伝説が失われた今、タレントたちは自らの実力と、新たな時代の要請に応える柔軟性をもって、生き残りをかけている。法廷ドラマという試練の場、そして法律英雄2025のようなグローバルな舞台は、彼らが単なるアイドル出身者ではなく、世界に通用する俳優として、日本のエンターテインメント界の未来を担う存在であることを証明する機会となるだろう。
(了)