【2026年最新】拡大する裁量労働制の光と影:高市政権下の労基法改正と「定額働かせ放題」の懸念
ニュース要約: 2026年、高市政権下で進む労働基準法改正の焦点「裁量労働制」の拡大を徹底解説。2024年の制度改正から、現在議論されている対象業務の拡大案、企業が直面する未払い残業代リスクや健康管理義務までを網羅。柔軟な働き方による生産性向上か、それとも長時間労働の温床か。労働者の「本人同意」や健康確保措置の実効性が問われる、日本型雇用の転換点を紐解きます。
【解説】拡大する「裁量労働制」の光と影――2026年、高市政権下で進む労働基準法改正のゆくえ
働き方の多様化が加速する中、日本の労働制度が大きな転換期を迎えている。キーワードは「裁量労働制」だ。2024年4月に対象業務が拡大されたことに続き、2026年現在、高市政権下ではさらなる制度拡充に向けた議論が本格化している。経済界からは柔軟な働き方を後押しする声が上がる一方、労働現場からは「定額働かせ放題」への懸念も根強い。今、日本の職場で何が起きようとしているのか。
■2024年の改正と、2026年に向けた「拡大」の胎動
裁量労働制には、研究開発やデザイナーなど特定の専門職を対象とした「専門業務型」と、経営の中枢を担う企画立案業務を対象とした「企画業務型」の2種類がある。2024年4月の省令改正では、M&Aのアドバイザリー業務が新たに対象に加わった。
そして2026年、政府と経団連の間でさらなる対象拡大が画策されている。1月の報道によれば、政府案は「過半数労働組合がある企業」に限定した上で、対象業務の範囲を広げる検討に入った。これは、労働者側の反対に配慮しつつ、実質的な導入ハードルを下げる折衷案といえる。労働政策審議会では、使用者側から「労使で適用範囲を自由に決められるようにすべき」との意見が相次いでおり、2027年以降の施行を目指す労働基準法改正の目玉となる見通しだ。
■「みなし労働」の落とし穴と厳格化される健康管理
裁量労働制の最大の特徴は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす「みなし労働時間制」にある。しかし、これが曲解され、実労働時間の把握が軽視されるケースが後を絶たない。
現行法では、裁量労働制であっても、企業にはICカードやパソコンのログ等による「客観的な労働時間の把握」が義務付けられている。特に月100時間を超える時間外労働が発生した場合、医師による面接指導は「義務」であり、これに違反すれば罰則の対象となる。
企業にとっての最大のリスクは、制度の運用実態が伴わない場合に「制度そのものが無効」とされることだ。過去の判例では、裁量権がない業務に無理やり適用していたとして、未払い残業代や付加金、遅延損害金を合わせ、1億円を超える支払いを命じられた事例もある。2020年以降、未払い賃金の請求権時効が3年に延長されたことも、企業にとっては無視できない経営リスクとなっている。
■ワークライフバランスの向上か、過労死の温床か
制度の是非については、今もなお評価が分かれている。厚生労働省の調査によれば、適用労働者の約7〜8割が「仕事の裁量でメリハリがつく」と肯定的な回答を寄せている。自分のペースで働けることでストレスが軽減され、ワークライフバランス(WLB)が向上したとする成功事例も多い。
しかし、その裏で「深夜・休日労働の常態化」というリスクが常に隣り合わせであることも事実だ。みなし時間を大幅に超える労働が続くことは、過労死ラインへの接近を意味する。専門家は「裁量労働制は、自己管理能力が高い労働者と、それを支える高度なマネジメント体制があって初めて成立する制度だ」と指摘する。
■労働者保護の「砦」となる本人同意
2024年の改正で最も重要な変更点は、「本人の個別同意」が義務化されたことだ。これまで専門業務型では本人の同意は必須ではなかったが、現在は「同意の取得」と、それ以上に「同意を撤回する権利」の手続きを労使協定に明記しなければならない。
また、同意しなかったことを理由とする解雇や降格などの不利益取扱いは厳格に禁止されている。これは、労働者が自らの意思で「裁量を持って働くかどうか」を選択できる仕組みを担保するためのものだ。
■結びに:新時代の「働き方」への課題
2026年現在、裁量労働制の拡大議論は、日本型雇用慣行の抜本的な見直しと地続きにある。成果で評価する仕組みは、生産性向上に寄与する一方で、労働者の健康をどう守るかという重い課題を突きつけている。
法改正に向けた議論の焦点は、単に対象を広げることではなく、いかにして「実効性のある健康確保措置」を機能させるかに移っている。企業には、形だけの制度導入ではなく、ログ管理の透明化や書面による合意形成など、誠実な運用が求められている。裁量労働制が真に「自由で創造的な働き方」を実現するツールとなるか、それとも「過重労働の隠れ蓑」となるか。その分水嶺は、今まさに議論されている制度設計の細部に宿っている。
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