J3終盤戦:首位八戸、讃岐に苦戦 堅守の先に露呈した昇格への課題
ニュース要約: J3リーグ終盤戦、首位ヴァンラーレ八戸はホームでカマタマーレ讃岐と対戦。リーグ最少失点の堅守を誇る八戸だが、先制を許し追いつけず、ボール支配率の低さや攻撃の打開策に課題を残した。讃岐は粘り強さを見せ、昇格争いはさらに混戦模様となった。八戸は残りの試合で昇格圏を維持できるか注目される。
J3リーグ終盤戦、昇格争いの行方:ヴァンラーレ八戸、堅守の先に見た課題 カマタマーレ讃岐は意地を見せる
【八戸発】 2025年シーズンの明治安田J3リーグは、昇格をかけた熾烈な終盤戦を迎えている。首位を走るヴァンラーレ八戸は11月23日、ホームのプライフーズスタジアムにて、中位に位置するカマタマーレ讃岐と第37節の直接対決に臨んだ。八戸にとっては、2位との勝ち点差を広げ、悲願のJ2昇格を手繰り寄せるための「天王山」であり、讃岐にとっては、意地を見せ上位チームの進路を阻む重要な一戦となった。
この日の試合は、過去の対戦成績が讃岐の5勝、八戸の4勝、引き分け4回と、常に拮抗した展開を見せてきた両者の因縁を反映するかのように、緊張感あふれる立ち上がりとなった。直近の5月対戦でも讃岐が2-1で勝利しており、八戸にとってはホームで雪辱を期す戦いでもあった。DAZNやNHK青森でも中継された一戦は、0-1で讃岐が先制する展開となり、八戸はその後、再三にわたりゴールを脅かす猛攻を仕掛けたものの、得点を奪うことができず、結果的に讃岐が勝ち点をもぎ取る可能性が高い状況となった。
ヴァンラーレ八戸:堅守とセットプレーで掴んだ首位の座
現在、勝ち点63でJ3リーグの首位を走るヴァンラーレ八戸は、今シーズン、石﨑信弘監督の下で明確なスタイルを確立した。その最大の武器は、リーグ最少の失点21を誇る「堅守」である。データが示す通り、タックル数やクリア数でリーグ上位を占めており、守備の安定性がシーズンを通してチームを支えてきた。
また、攻撃面では、ボール支配率がリーグ19位の43.7%と低いながらも、効率的な攻撃を徹底。セットプレーからの得点率が24.4%と高く、高さと精度を活かした戦術が奏功した。FW澤上竜二選手が12得点、中野誠也選手が5得点を記録するなど、主戦力の活躍も目覚ましい。
しかし、終盤戦に入り、ボール支配率の低さや、最終ラインを崩すスルーパスの精度の低さ(4.4%)といった課題も浮き彫りになっている。この日のカマタマーレ讃岐戦で先制を許し、追いつけない展開に陥ったことは、ボールを保持できない時間帯にいかに打開策を見出すかという、今後の昇格を見据えたチーム作りの上で重要な教訓となるだろう。
カマタマーレ讃岐:中堅としての安定と得点力不足の壁
一方、カマタマーレ讃岐は勝ち点43で現在7位と、昇格争いには絡めなかったものの、安定したシーズンを送った。失点35はリーグ中位であり、八戸同様、守備陣の堅実なプレーが光る。特にセットプレーからの得点率は33.3%と高く、攻撃の重要なオプションとして機能した。
讃岐の課題は、構造的な得点力不足にある。総得点38はリーグ12位に留まり、主戦力の爆発力に欠けた。また、ボール支配率は50.0%と平均的であるものの、相手の最終ラインを崩すスルーパスの成功率がシーズンを通して0.0%というデータは、攻撃のバリエーションが限られていることを示唆している。
しかし、首位の八戸を相手にアウェイで勝ち点を獲得(あるいは勝利)したことは、讃岐が中堅チームとして持つ粘り強さと、セットプレーを武器とする勝負強さを改めて証明した形だ。
監督体制の継続と今後の動向
来季を見据えた体制面では、ヴァンラーレ八戸は石﨑信弘監督との契約更新を発表しており、2026シーズンも継続体制で挑むことが決定している。9月には監督が一時的にチームを離れる事態もあったが、体制の安定は昇格を目指す上で大きな強みとなる。
一方、カマタマーレ讃岐に関しては、現時点では監督交代や主要選手の契約に関する明確な情報は確認されていない。シーズン終了後、得点力不足の解消に向けて、どのような補強とテコ入れを行うかが注目される。
J3リーグの昇格争いは、このヴァンラーレ八戸対カマタマーレ讃岐の一戦の結果を受け、さらに混迷を深める。八戸がこの敗戦(または引き分け)を糧とし、残りの試合で昇格圏を維持できるか。そして、讃岐はこの終盤戦で得た自信を、来季のさらなる飛躍に繋げられるか。両チームの動向から目が離せない。(了)