椎名林檎、13年ぶり全国ホールツアー「党大会 令和八年列島巡回」2026年春開催

椎名林檎、13年ぶり全国ホールツアー決定 2026年春「党大会」 音響美学を追求する孤高の表現者

13年ぶりホールツアー「党大会 令和八年列島巡回」発表

日本の音楽シーンにおいて、常に独創的な表現を追求し続けるアーティスト、椎名林檎が、2026年春に約13年ぶりとなる全国ホールツアー「党大会 令和八年列島巡回」を開催することが決定した。2026年3月17日から5月28日にかけて、全国8会場で計18公演を行う予定であり、2025年の充実した活動を経て、さらなる深化を志向する彼女の最新の表現に早くも注目が集まっている。

今回のツアーは、東京・すみだトリフォニーホールや大阪・ザ・シンフォニーホール、群馬・高崎芸術劇場など、音響に定評のあるホールが厳選されている点が特筆される。直近のアリーナツアー「(生)林檎博'24―景気の回復―」が、大規模な演出と迫力を主眼に置いていたのに対し、「党大会」はより繊細で、音響的な体験を重視した内容となる見込みだ。これは、椎名林檎 ライブの核にある「音楽そのものの響き」を追求する姿勢の表れであり、観客は彼女の楽曲が持つ緻密な構成と演奏技術を、最高の音響環境で味わうことができるだろう。

究極のトータルアートとしてのライブ表現

椎名林檎のライブパフォーマンスは、単なる演奏会ではなく、演劇性とビジュアル美学が完全に統合された「トータルアート作品」として機能している。彼女のステージは、音楽、映像、衣装、舞台装置が緻密に構成され、観客を日常から切り離された独自の時空へと引き込む力を持つ。

その表現の本質は「ミニマルな美学による最大の表現力」にある。例えば、小道具を扇子や番傘に限定しつつも、照明や衣装、バンドの演奏が一体となってスリリングなグルーヴを生み出す手法は、極限まで削ぎ落とすことで、観客の想像力を最大限に刺激する。

また、彼女のライブには演劇性とパロディが不可欠な要素として組み込まれる。観客はステージの内容を受け身で鑑賞するのではなく、「今日はこういう設定で参加すればいいのか」という能動的な姿勢で臨む構造が成立している。2024年の「林檎博」で見られた大胆な演出や、2025年のツアーにおけるミュージカル的な表現は、曲の内容と歌詞の世界を物理的に舞台上に具現化する試みであり、ジャンルを超えた多様な楽曲群を、それぞれ異なる舞台演出で完璧に表現しきっている。

約2時間で28曲前後をMCなしで駆け抜ける構成は、その全てが計算された美学的構成の一部であり、観客との関係性構築においても、手旗を振る文化など、ステージと客席が一体となって作品を完成させる独自の世界観が確立されている。

2025年活動の総括と「党大会」への期待

2025年は、椎名林檎にとって新曲リリースとライブ活動が非常に充実した一年であった。

まず、2025年6月にはNHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』の主題歌「芒に月」をリリース。さらに8月には両A面シングル「実験中／白日のもと」（映画『近畿地方のある場所について』主題歌）を発表するなど、タイアップを通じ幅広い層に楽曲が浸透した。

ライブ活動においても、2025年2月から5月にかけての全国ツアー『椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常』で11都市22公演を成功させたほか、夏のフェスシーンでも存在感を示した。8月の「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO」や9月の「ONE PARK FESTIVAL 2025」への出演は、彼女の楽曲とパフォーマンスがロックフェスの大舞台においても圧倒的な求心力を持つことを証明した。

そして、11月24日のさいたまスーパーアリーナ公演では、その革新的な演出とパフォーマンスが高く評価され、2025年の活動を締めくくるにふさわしい成果を上げた。

これらの活動を経て発表された2026年春の「党大会」ツアーは、直近の「景気の回復」ツアーでのアリーナ規模の代表曲を踏まえつつ、より洗練された音響体験を観客に提供するだろう。セットリストは、最新曲「鶏と蛇と豚」などを含め、キャリアを網羅する多様な代表曲で構成されると予想される。

椎名林檎 ライブは、常に進化し続ける芸術の場であり、今回のホールツアーは、彼女の音楽家としての原点回帰と、さらなる表現の深みを追求する決意を示すものと言える。2026年の「党大会」は、日本の音楽美学の最前線を提示し続ける、孤高の表現者の新たな到達点となるに違いない。